日本人の両親のもとに生まれて、中学、高校、大学と日本で過ごし、会社に入るまで英語は苦手だし嫌いだし、日本でずっと暮らそうという英語力ゼロ。
そんな私が社会人になってから外資系コンサルティングファームに入社、仕事をしながら英語学習を開始。それから10年、英語でプレゼンもしますし、聞き取りにくい電話会議も問題なくこなせるようになり、海外で仕事をして、アメリカでExecutive MBAまで取得しました。
といっても、簡単にできるようになったわけではなく、恥ずかしい思いも、情けない思いも、悔しい思いもすることがたくさんあり、その度にモチベーションをなんとか持ち直して、いろいろな方法を試しました。その中で間違いなくマイルストーンになった思う本を紹介します。
ドメが英語をできるようになるまで
英語学習のサイトを読むと、言語習得の自然な流れは、
(聞く)>(話す)>(読む)>(書く)
という順番とよくあります。
とは言われても、聞く機会はあっても話す機会はそれほどないです。ドメな日本人の私は喋れる自信がないのに話かけるような度胸もありません。英語書く必要なんてほとんど当時はなかったです。
英語学校も考えましたが、それなりの値段はするし、自分のペースで仕事ができない若手の時代にはなかなか定期的な時間をとることも難しかったので、一人できる学習をしてきました。
悪戦苦闘しながらでしたので、必ずしも私の方法が正しいとは思いません。少しでも参考になればということで紹介します。
英語の文章をあまり考えずに読む
英語の書籍を読んで英文や英語のリズムに慣れるという作業を続けました。同じ題材で本を読み、音を聞いて、口に出してという繰り返し。
法律事務所 ジョン・グリシャム
The Firm by John Grisham
トム・クルーズの映画は少し古いですがジーン・ハックマン、エド・ハリスと渋い俳優もたくさん出演している名作です。
映画は見ていたのでうろ覚えですがストーリーの大枠は理解しているというのと、英語が平易でわかりやすいよという友人の勧めで英語のペーパーバックを購入して読みだしました。
法律用語やアメリカの弁護士制度を知らない状態で読んでいたので、わからない部分も多かったのですが、大枠のストーリーを理解しているので意外とスイスイと読めました。
そもそも、とっても面白い小説ですし。こんなに厚い小説が読めるのだから意外と英語学習楽勝 ではないか!と思ったのでした。
実際は、ペーパーバックなのでとても厚いですが、そもそもペーパーバックの紙は厚いので、それほど長い小説ではないのです。
多読という英語学習法があり、本来であれば発音やヒアリングの後にすることが推奨されています。とはいえ、中学・高校で英語を読むこと・書くことを主にやってきているドメな日本人なので、読むのが入り口としては気楽でした。
ポイントとしては、わからないストーリーを英語の文字面からイメージするのは高度なので、映画化されている作品で先に映画を鑑賞することで、少々細かなところがわからなくても斜め読みでシーンをイメージして読み切ってしまうというところでしょうか。
また、この本を読むにあたって辞書を引かないということを決めて読んでいました。法律用語などわからない言葉が頻出しますが、前後の文脈と映画のストーリーを思い浮かべて類推するという読み方をしていました。
これは良い訓練になったと思っています。今でも仕事でインド人など特有のアクセントの方と電話会議をすると細かなところが聞き取れないことは正直あります。ビジネスの話をしている場合には、誤解がないように確認をしますが、プライベートな会話をしている際には前後の文脈から類推して会話しています。
僕は耳が良い方ではないので、日本語でも聞き間違いが多いので、第2外国語の英語で聞き間違えがある程度発生するのはあたりまえと途中で開き直りましたが、実際に日本語の会話でもすべての単語を聞き取れているとは思いません、類推力は重要だと思います。
同時に、この類推しながら覚えていくという非効率な方法を取った結果、英単語を日本語の訳で憶えずに、なんとなくのイメージで記憶していきました。
たとえば、hotという単語を「暑い」、「熱い」、「辛い」、「魅力的」、「流行っている」などと訳語を逐次に憶えるのではなく、「炎が燃え盛っている」イメージとして理解しておくと文脈上のイメージにあわせて、別の使われ方をしても理解できるようになっていました。
前置詞も同じようにイメージとしてシーンごと、主人公の行動として記憶することでイメージとして使えるようになりました。
とはいえ、この時にまったく間違った類推で記憶してしまった単語もあって、その後ひどい恥をかいたこともありますので、一長一短です。とはいえ、単語の記憶間違い なんて日本語でもたまにあるので、気にしないのが重要です。
前置詞もイギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語で位置づけが違うらしく、イギリス人はよくオーストラリア人の前置詞を「未開人め」とか言いながら直していたりします。正しい言葉を使うことは信用という意味でもビジネス上は重要ですが、神経質になる必要もないと思います。
英語を声に出して読む
法律事務所オーディオブック ジョン・グリシャム
The Firm Audio Book by John Grisham
次のステップなのですが、まったく同じ本です。内容は理解しているし、読めたのだから、聞けるはずだ!けど、映画のようなくだけた口語は理解できる気がしないので、きれいな発音をしているオーディオブックならハードルが低いはずだということで購入してiPodに入れて聞き出しました。
まったく聞き取れませんでした、めちゃくちゃ早くて聞き取れなかったです。
とはいえそれなりのお値段で買ってしまったので、有効利用しようということで調べたところ、音声を聞いた後に即座に復唱するシャドーイングが効果的というブログを読んで、試してみようと思いました。
結果、家でぶつぶつCDの前で声をだすのは気恥ずかしいですし、すぐ飽きました。ということで、生活のルーチンに組み込むこととしました。
当時、少し太ってきていた私は3日1回ほど深夜に皇居の周りを2周ゆっくりと走っていました。10キロなのでちょうど90分ぐらいかけて走っていました。この時に、オーディオブックを聞いて、同時にそれに復唱するということをしばらく続けました。
走って体重を維持するのが主たる目的なので、呼吸がつらくなってきたらやめていましたし適当なやり方でしたが、深夜なので周りも気にせずそれなりに声をだしてオーディオブックを何度も何度も復唱していました。そのうちほぼ一冊の内容を覚えてきて、セリフでは抑揚を込めるようになって、胡散臭いネイティブっぽい発音で復唱していまいた。
このリズムというのが重要だったのかなと思っています。英語は特有のリズムがあります。主語・動詞・目的語・修飾語などを意識しているわけではないですが、その場合にあわせてどこかを強調しています。それがシグナルとなって少々聞き取りにくい英語でも理解しやすくなります。こんな感覚派の勉強をしてきたせいか、実は未だに日本人の話す平板でフラットな英語を聞き取るのは未だに苦手です。
TOEICのテストのようにあまりに遅く喋られると、かったるくなって途中で理解できなくなったりします。外国人の友人たちも日本人の英語でつらいのは、すべての単語が等量に発音されていて理解しにくいということを言う方もいるので、リズムのある英語をしゃべるというのは重要だと思っています。
1冊の本とオーディオブックだけを教材に半年近く惰性で同じことをしていたと記憶しています。その後、流石に飽きてきて別の映画化原作のペーパーバックを買ってきて読んだり、オーディオブックは高いのでビジネス・ウィークやフォーブスといったビジネス誌のポッドキャストでシャドーイング繰り返していました。
よくニュースになっているテーマや単語が使われるので、ぼんやりとした理解ができてシャドーイングにはちょうどよかったかと思っています。ただし、個人名や社名など知らない単語で混乱することも多く、同じ素材でシャドーイングを3−4回すると突然単語や文章が聞こえてきて理解できるようになるということを繰り返していました。
明るい方たちは、どんどん外国人と話をして英語が上達していきますが、内気な私には難しいと思っていました。実際には、会話が重要ではなくて、「口に出す」という練習を繰り返すことが重要であって、きれいな発音のお手本をもとに口にだすことで自分の言葉になっていくというのは、効果的な学習方法でした。
基礎的な文法を”英語”で学ぶ
English Grammar in Use by Raymond Murphy
ここまでで実質1冊の本だけを頼りに学習してきました。実は基礎的なコミュニケーションはこの段階で取れるようになってきました。
ただ、実際に自分でしゃべろうとすると定型文は口に出てきますが、自分でなにか話をしたり、書いたりすると、語順や接続詞が正しくないのか、意味わかんないという顔をされたりメールが返ってきたりということもたびたびありました。
ということで、嫌いだった文法に再度チャレンジすることにしました。
中学、高校と英語の勉強はしましたが、不定詞、関係代名詞、仮定法、過去完了などがどうしても理解できず混乱した記憶しかありませんでした。
ここまで日本語に触れずに勉強をしてきたので、その流れのまま英語で英語の文法を勉強してみようということで、英語文法の基礎として名高いEnglish Grammar in Useを購入してみました。これが直感的に理解しやすかったです。
たとえば、不定詞。日本語では、名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法というのが3用法という説明で始まります。違いがよくわからないのと、英語を学問として学ぶわけではないのに学術用語のような3用法を覚えなければいけない理由がわからずスタックしていました。英語の教科書ではもっとシンプルでプラクティカルにかいてあります。
THE TO-INFINITIVE TO INDICATE THE PURPOSE OR INTENTION OF AN ACTION
THE TO-INFINITIVE AS THE SUBJECT OF THE SENTENCE
THE TO-INFINITIVE TO INDICATE WHAT SOMETHING CAN OR WILL BE USED FOR
とても、利用する場面にそっていますし、理解しやすいです、イメージできます。英語の教科書にも小さな字で3番目の場合はnounかpronounということも書いてありましが、まずはプラクティカルな利用方法に即した説明をされると非常に理解しやすいです。
English Grammar In Useは、中学レベルの英語文法について解説した本なので、それほど難しい内容は出てきましせんが、ビジネス英会話で必要な文法は十分この1冊で学べると思います。
まとめ
私が右往左往しながら英語を学んでいった際に、マイルストーンとなった3つの本を紹介しました。
言語の習得は最終的にはどの程度触れていくのかという部分があることは否定できません。ただし、環境になくてもできることはたくさんあります。私の場合は、結果的に以下のようなステップを通じて英語を学んでいきました。
・文脈から類推して意味を理解する
・英単語を日本語訳ではなくイメージとして記憶する
・英語を口に出して読む
・英語のリズムを手に入れる
・英文法は学問用語が多い日本語ではなくプラクティカルな英語で学ぶ
ということで、社会人になってから英語力ゼロからでも、TOEICで980点を取って、アメリカのトップ30の大学で経営学修士号を取り、外資系の会社で英語を毎日使って働いています。
とはいえ、終わりのない学びなので、聞いたこともない単語に出くわすことは未だにありますし、インドでは公式文書に使われる古語のような英語に混乱することもあります。でも、日本でも同じことはあると思って、慌てずに新しい知識を楽しんで記憶していくのが楽しい英語ライフかと思います。