中国企業の海外展開をリードするファーウェイはなぜ成功したのか

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中国のファーウェイは日本でもスマートフォンの端末などが発売されていて、徐々に存在感を強めている。彼らのビジネスの領域は、ソフトバンクのような電話会社や携帯キャリア向けの通信設備、スマートフォン、タブレットなどのモバイル端末、企業向けのクラウドサービスソリューションの3領域にわたっている。中国企業がSP500などのグローバル企業ランキングに登場することはすでに珍しくないが、中国国内での売上がほとんどを占めるローカル企業が多い中で、ファーウェイは売上の過半を国外で稼ぐというグローバル化した企業という中国の海外展開をリードする企業。特に、通信設備ではエリクソンやシーメンスを抜いて世界最大だ。

このファーウェイ、ヨーロッパ、南米や日本では、通信設備のビジネスが大きいのだが、世界最大の市場であるアメリカ市場からは締め出されている。アメリカとしては、通信の安全をまもるために、仮想敵国の一つであり、盗聴の危険度が大きいファーウェイにインフラを任せるのは避けたいのは理解できる。検索エンジンで有名な百度が情報を抜くアプリを世界中にバラ撒きで批判を浴びたて、IBMからThinkPadの資産を買い取ったレノボが情報を抜いていたという他の中国企業が起こす事例が多い中で、根幹たるインフラ斎場に参入されるのは恐怖かと。

そんなファーウェイが、2018年にAT&Tとの間で販売契約をほぼ決め、スマートフォンでアメリカ市場に参入というニュースがあった。インフラに参入するのは、ハードルが高いとは思うが、優れたアンドロイド端末を作っているメーカーとして参入が決まるのは、出荷台数ベースでは第1位のスマートフォンメーカーになって数年立つものの、ブランドを築くのに時間がかかっているファーウェイとしては大きなマイルストーンを超えたということですね。

 

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ファーウェイが成功する理由

ファーウェイは、元人民解放軍というキャリアを持つ、レン・ジェンフェイに率いられている。彼のバックグラウンドが西側諸国の警戒心を呼ぶこと間違いないないが、彼がファーウェイで実施している経営哲学や施策はユニークで興味深いものが多い。

カスタマーフォーカス

レン・ジェンフェイは、この頃幾つかのイベントでキーノートを勤めているが、メディアや業界イベント、投資家の前に現れることがほとんどない謎の人物という評価を長く得ていた。実際のところは、顧客であればサイズの大小にかかわらず、レン・ジェンフェイと議論する機会があるという。実際に、著名な投資家がファーウェイの巨大なキャンパスを訪れた時でも、レン・ジェンフェイは顧客以外に合う必要がないという理由で面談を断っている。

トップが率先するカスタマーフォーカスの結果、顧客からの相談に食らいついて開放を探していくというエピソードには枚挙の暇がない。

 

オーナーシップ

中国企業は上海・深セン・香港などで上場している企業が多いものの、実態としては、SOE(State Owned Enterprise)と呼ばれる半国有企業が銀行など多くのセクターでリードしています。一方で、ファーウェイは、2%程度を創業者のレン・ジェンフェイが保有する以外の98%は従業員持株会で保有されています。ファーウェイが成長すれば自分の持分の価格があがるという、インセンティブ制度により、全従業員が成功に向けて、猛烈に働くという環境を作っています。実際、ここまでの巨大企業ですが、IPOについては否定的です。

 

長期的な指向と民主的な判断

中国企業は創業者の独裁的な会社が多く、ファーウェイも同じくレン・ジェンフェイが力をもっていることは変わらないと思います。実際、多くの従業員にとって、レン・ジェンフェイはヒーローなので。そんなファーウェイですが、多くのクロスファンクションのチームやタスクフォースを、専任の役員を設置した上で実施するなど、合議で物事を推進することを指向する活動もしていました。

そして現在導入されている仕組みは、驚天動地のローテーティングCEOモデルです 。どういうことかというと、主たる3事業を担当する役員3名が6ヶ月毎にCEOを交代しながら事業を運営するというものです。自分の事業のことだけに集中しがちなリーダーを、ファーウェイ全体に意識をさせるという意図のようです。

実際、コーポレート・ブランディングなど長期のプロジェクトにおいては、通信設備のリーダーがCEOをやっている間はB2B主体になる傾向があり、通信端末のリーダーに変わるとB2Cへのウェイトが増えるというように、バランスが取れているようです。6ヶ月毎の方針変更に振り回される広告会社やPR会社はたまったものじゃないでしょうけど。

レン・ジェンフェイは、ジェームス・A・ベラスコの書いた「ファイトオブバッファロー」という従業員がオーナーシップを持つ企業について書かかれた本において、長期的な成功のためには、ひとりのCEOの判断にかけるべきではないという主張を読んで思いついたらしいです。

 

SWOT

Strength 強み

  • 通信設備でエリクソンを超えて世界最大のシェア(2014年より)
  • 世界第3位のスマートフォンメーカー(OEMを含めると最大)
  • イノベーションへの継続的投資
    通信設備でも多くの特許を取得しているが、スマートフォンのインフライトモードなど消費者向けでも確実にイノベーションを継続的起こしている
  • コスト・リーダーシップ
  • 中国資本による国家による借款や民間によるファンド

Weakness 弱み

  • 米国市場の拡大余地は限定的
  • メイド・イン・チャイナのパーセプション
  • いまだに低いブランド価値
    日本企業的な改善アプローチのイノベーションを起こしている会社ということもあり、ソートリーダーシップについてはIBM・シスコなどの二番煎じということで、今のところビジョンがあるブランドではない

Opportunity 機会

  • (中国人を嫌う)インドマーケットの拡大余地
  • 5Gへの設備更新
  • ニンジャブランドのポートフォリオ拡大
  • ロボット掃除機の拡大

Thread 脅威

  • 中国とEUとの関係悪化(海外売上の多くはイギリス・スペインなどEU圏)
  • リーダーシップのバランス悪化によっては分社化の可能性

 

まとめ

 

定期的にCEOが変わるというのは衝撃的な仕組みです!ここまでの巨大企業のCEOが短期間で変わっていくのは異常事態といえますが、それを機能させる人事的な仕組みを丁寧に作られているというのがファーウェイ成功の理由だと思います。オールチャイナレビューに、ファーウェイの人事制度にフォーカスして、7つのプリンシプルにまとめた記事があります。

アメリカ参入とともにさらに拡大するファーウェイが、経営哲学や手法をどのように発展させていくのか注視が必要だとおもいます。