カオスマップとはある業界やサービスについてプレイヤーをその中のサブカテゴリー別にまとめたものです。デジタル広告が媒体から消費者に届けられるまでに関わるプレイヤーがデータベンダーやオークション管理など非常に複雑なバリューチェーンをたどっていることを1ページで一覧性のあるマップとして表示したものが、他のさまざまな領域に展開されていったもののようです。
自分のビジネス領域はもちろんのこと、自分のクライアントの属するインダストリーのカオスマップは、最低限競合関係・共生関係が理解できるので、非常に助かります。
過去3年分などの更新されたマップがあると、優勝劣敗、栄枯盛衰や業界の変化も確認可能です。表示されている各プレイヤーのシェア・影響力は確認できないので、大きなバリューチェーンを理解して、気になるポイントは個別に調べる必要があります。
カオスマップは和製英語でChaos Mapと行った場合はカオス理論で利用する複雑系のグラフのことを指します。英語の場合は一般的にはIndustry Cloudと言います、よりダイレクトにIndustry Landscape Mapと言えば誰でも理解してもらえるかと。
マーケティング
マーケティング・テクノロジーのカオスマップ
カオスマップの本家Lumascapeのマーケティング関連領域いうことで、もっともクレイジーなカオスマップが各種存在しています。その中でも出色なのがChief Marketing Technologistが作成するMarketing Tech 5000というカオスマップは人間が認識できる限界に近い内容を定期的に更新しています。ここまでいくと、たくさんプレイヤーがいるのですね・・以上のことは把握できないですね。
このマップは2011年にスタートしていますが、8年分をならべると150社からスタートして年々拡大するプレイヤーとカテゴリーが視覚的に理解できます。
インバウンドのカオスマップ
爆買の影響は少なくなったものの政府の観光立国に向けた取り組みの成果もあり訪日旅行者は継続して増加しています。訪日顧客をビジネスに組み込もうとすると多言語対応可能な人材の採用、トレーニングから事前・直前の商品プロモーションと多くの領域が関係するということで、訪日ラボが2018年上下半期のカオスマップを紹介しています。
ECサイト・カオスマップ
トラディショナルな店舗からオンライン・セールスへの移行は、年々拡大していて、ファッションなど既存点のビジネスよりオンラインでしか売れないという傾向がでてきている領域もあります。ECサイトを制作・運営しようとすると物流から顧客サポートまでサービスを提供する会社が多く存在します。日本ネット経済新聞が各領域別にマップを制作しています。
音声サービスカオスマップ
いったん下火になったかと思いきやAmazon・Googleのディスプレイ付き端末の安価な提供によって再度盛り上がりを見せるスマートスピーカーと音声サービスのカオスマップです。今後、音声広告がどのように拡大するのか、アメリカのようにポッドキャストがラジオ化してSpotifyやAppleが大量投資という流れが日本にも来るのかが興味深いところです。
ビッグデータのカオスマップ
2010年台前半はビッグデータが大きなバズワードとなっていましたが、ビッグデータを利用してサービスを提供するために自動運転、画像解析など領域が分解されていきビッグデータが話題にのぼることは減りました。大規模データ処理のケーパビリティやデータサイエンティストは取り合いをしている状況に変わりはありません。基盤となるビッグデータ関連サービスについて2018年版が更新されています。
グラフィック・デザイン
デザインの会社はインターブランド、HUGEのようなブランディングのコンサルティング会社と制作会社が主たるプレイヤーでしたが、インターネットにより大きく変化した業界です。デザイン・クリエーティブ領域でのクラウドソーシングの活用拡大、Logo Makerなどロゴメーカー・デザインメーカーサイトの拡大によりランドスケープが大きく変わっています。
インダストリー別
ドローンのカオスマップ
ドローン(無人航空機)を使った映像はテレビやソーシャルメディアで見ない日がないほど一般的になりました。一方でドローン全般のビジネスとしては、画像をとるだけでなく、武器・農薬・建設・検査など多くの領域で利用されています。利用が広がると同時に、事故の保証のための保険、フライトプランの管理など周辺サービスも広がり多くのプレイヤーが参入している領域です。
オートテックのカオスマップ
オートテック、Mobility As A Serviceなどと言われる自動車関連のデジタル・テクノロジー領域はシェアリングエコノミーの大きな潮流の中でUBERを生み出すなど新しいプレイヤーが生まれている領域です。フードトラック事業などを行うMellow株式会社がマップとしてまとめています。
MaaSから自動車テクノロジーと自動車関連の金融サービスまで広げたマップをFTPartnersが制作しており、より多くの新旧プレイヤーが関連していることが見て取れます。自動車は裾野の広い業界と言われることが多いですが、ディーラー関連のテクノロジー、修理、契約、中古車オークションと領域の広さと規模の大きさが理解できます。
AIのカオスマップ
人工知能をサービスに組み込む企業はトラディショナルなプレイヤーからスタートアップまで日々増えており、AIを利用しないサービスはなくなるのでないかと思いますが、テクノロジー基盤を提供する企業をまとめたカオスマップをAINOWがまとめています。
AR・VRのカオスマップ
VR(仮想現実)、AR(代替現実)は、デジタル上に作られた世界に没入するVRゲームやツール、現実世界にオーバーラップされる形でデジタルの情報が表示されるARのツールのことで、体験型ゲームが話題になっていますがB2Bでマニュアルがわりに利用される、車のナビゲーションなど利用範囲が拡大している分野です。VR/AR専門の投資ファンドのVenture Reality Fundがカオスマップをまとめています。
写真のカオスマップ
写真は一眼レフのようなハイエンドのものからスマートフォンまで幅広い機器があり、共有サイト、ストックフォト、エディティングと広いサービス領域があります。2013年と少し古いですが、多くは2018年でも生き残っています。身近なサービスの割に知らないサービスや企業が多くて楽しめます。
マリファナビジネスのカオスマップ
少し珍しいところで、マリファナ関連ビジネスのカオスマップです。アメリカの一部の州やヨーロッパでマリファナの医療利用や一般利用が解禁される中で、合法的な企業がマリファナビジネスに乗り出しています。テクノロジーやスタートアップ関連の調査会社のCB Insightがまとめたマップをみるとすでに生産から配送までエコシステムが拡大している様子が見て取れます。
エイジングのカオスマップ
高齢化は先進国共通の課題となっていますが、寿命・延命に関する研究が大きく進んでいること、高齢者向けのサービスや鎮痛などの一般消費者向けのビジネスが拡大する中で、エイジングに関するカオスマップが発表されています。
RPAのカオスマップ
人工知能(AI)を利用して業務の効率化・自動化の取組みを行うRPA(Robotic Process Automation)は、電通・三井住友銀行など多くの企業が導入を推進することを発表して導入事例が増え、働き方改革の切り札のひとつとして話題をあつめています。RPAはソフトウェアだけでなく、導入支援を行うコンサルティングやトレーニングなど多くの企業が参入しています。
IoTのカオスマップ
IoT(モノのインターネット)は、近年B2B領域で大きく拡大しておりIndustry3.0の基盤になるとともに、工場、農業、物流など領域を問わずネットワーク化されたセンサーと、そのデータによるアクションという仕組みはコンサルティング業界、IT業界の大きな収益源となっています。一方で、セキュリティへの懸念もあり、個人利用・ホームという意味では限定的な拡大となってきましたが、スマートスピーカーがアメリカで40%以上の世帯普及率になるなど、大きな転換点を2018年に迎えています。
ヘルステックのカオスマップ
ヘルスケア領域にテクノロジーを適用するビジネスはヘルステック、ウェルネステックとして拡大をしています。フィットネス、睡眠などモニターするビジネスから企業単位の健康管理まで広く利用が広がっています。21世紀最大の宗教と言われる健康に関わる領域ということで、消費者の関心も高く多くの企業が参入していることが伺えますね。
カオスマップが多すぎる
ソーシャルメディア、IoT、Fintech、HRTechなど領域別に紹介しきれないほどのカオスマップが作られています。また、民泊のカオスマップ、飲食店向けのアプリケーションのカオスマップ、不動産業界のカオスマップ、ロボットのカオスマップと大量にあります。
自分の仕事に関して、投資しようとしている会社について日本語と英語で検索して数年分眺めるだけで多くの発見があると思います。ユニークなカオスマップを発見したら追加していきたいと思います。