TAMを使って市場を見る、そしてTAMの限界

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TAMという概念を知っていますか?TAMとはTotal Addressable Marketの略称で、ある製品やサービスが獲得することができる最大の利益機会を算出したものです。ベンチャーキャピタルなどと会話すると頻出します。そして、TAMという指標のメリットと限界はあるのでしょうか?

Measurement

Skitterphoto / Pixabay

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Total Addressable Marketとは?

TAMは、Total Addressable Marketの略で、ある製品やサービスが100%対象となる市場を獲得した時に、そこから得られる年間収入を示した数字です。また、現在すでに先行サービスが存在していると想定して、これから獲得できる市場のサイズを示す時もあります。 投資機会の指標として、1980年代から使われている古式ゆかしい数字です。計算の方法は、いかのようになります。

TAM=エンドユーザーの人数Xサービス・製品に年間払う金額

TAM=(エンドユーザーの人数—競合利用者)Xサービス・製品に年間払う金額

マーケット全体のTAMをSAM (Serviceable Available Market) 、競合の利用者を想定したTAM をSOM (Serviceable Obtainable Market)と区別する場合もあります。

適用する数値は 、トップダウンやボトムアップといった方式がとられます。市場の利用者を想定してその人口と可処分所得のうちカテゴリーへ利用する費用を想定するのがトップダウン、市場調査や顧客リストから設定したユーザー数にこれまで支払った金額の平均を利用するのがボトムアップとなります。

TAMを利用することで、新規に創出されたビジネスや創業に向かうビジネスプランが、どの程度のポテンシャルを持っているのか市場のサイズを理解することができます。市場が小さければ、金額が大きいもしくは利益率の高いサービスでなければ企業を拡大することは難しいですし、市場が大きければ、競合優位性によって獲得できる市場のサイズが変わってきます。

つまり、新規ビジネスに乗り出す人もしくは投資する人は、TAMによって、ビジネスのスケールの可能性を想定することができます。

アナリストレポートなどでも言及されている場合があり、例えば、フォワードマネージメントという金融機関のアナリスが中国のEC会社アリババについての投資判断において「アリババは過小評価されている可能性がある、グローバルへ拡大可能なモデルのため、TAMを40%まで拡大して評価することができる」などと言及されていました。その他の具体的な例は、英語版のWIKIPEDIAにも事例がのっています。Forbesなどの経済誌の記事でもTAMが記載されている記事は多いので検索してみてください。

Total Addressable Marketの問題点

TAMは投資基準としてわかりやすい基準です。ただし、ベンチャーのポテンシャルを測る方法としては、妥当ではないという批判も多くされてきました。たとえば、シェアリングエコノミーの代表例の自動車シェアサービスのUBERを例に取ってみます。

UBER起業時は、シェアリングエコノミーを標榜してスタートをとっていたものの、当初はリムジンサービスなどプレミアムなサービスの代替と想定されていまいた。当時のリムジンサービスの市場規模は、2000億円市場と中規模の市場、当時の資料には20%のシェアを取れた場合として400億円というTAMが想定されています。

ご存知の通り、UBER-Xという一般の車に適用された自動車シェアリングのサービスが導入されると、プレミアムではなく一般タクシー市場、しかも資本投下を最低限にグローバルに適用できるモデルとなっています。グローバルで20兆円市場を同じく20%の市場を獲得できるとすると、2000億円のTAMとなります。実際に、シェアリングエコノミーは、タクシーサービスの充実していない地方での新たな需要を満たす役割を持つこと、比較的安価なためタクシーよりも高い利用率を示すこととなました。UBERが上場を噂された時に試算されたのは1700億円程度にのぼりました。

つまり、ベンチャーの可能性を測る指標のハズにも関わらず、市場の可能性はサービスによって拡大するため、低く見積もられる可能性があるということです。

Total Addressable Marketの代替指標

TAMが不正確、もしくはTAMでベンチャーのポテンシャルを評価することが不適切だとすると、ベンチャーの創業者たちは不利益や本来市場拡大に必要な資金を調達できないという事になってしまいます。この問題に対応するために、いくつか他の方法が検討されています。

TAM Expansion 拡張可能な市場可能性

優れたベンチャーは、利便性の向上、新しい利用方法の提案、コスト低減による利用者の拡大など、なんらか市場を変えて拡大していきます。拡大可能性のある市場を検討することで、精度の高いTAMを算出しようという考え方です。Airbnbは、家や部屋のレンタルという極小の市場を想定していましたが、投資家はホテルのサービスのうち1−3日程度のショートステイについては代替可能であると結論づけて、積極的な投資を行いました。

Credible Adjacencies 順次拡大可能な市場

ベンチャーのビジネスモデルは広い市場に適用することができたとしても、規模の問題のためひとつのセクターに集中してビジネスを拡大するということを選択することが一般的です。そのため、ビジネスモデルが適用出来きる範囲を市場として想定するという方法です。有名な例としては、初期は書籍販売に集中したアマゾンが、すべてをオンラインで販売するというビジネスモデルを当初からもっていました。

Nascent market potential 新規市場のポテンシャル

多くのスタートアップは、市場の一部を変化させることになりますが、まったく新しい市場を切り開く場合には、先行者利益を取りやすいということで、プレミアムを検討するという考え方です。メッセージアプリのWhat’s Up, LINE, WeChatや、暗号通貨のビットコインなどは、それ自体が機能として優れていることもありますが、先行者利益による市場拡大を享受している例になります。

Frequency of use 利用頻度

テクノロジーのスタートアップの適用されることが多い考え方ですが、創出される市場規模は、その製品・サービスの利用頻度に比例するという考え方です。頻度が高くなり、生活の中に組み込まれていくほど、市場規模としては大きいと想定されます。シェアリングエコノミーで利用される場合が多く、例えば中国で広がる自転車シェアリングサービスは、最初は1日の利用は1回程度で、1回あたりは数円の利益を有無だけになります。ただし、自転車主体の生活が定着し、サービス拠点が増え利便性が上がることで、1日に3−4回利用するなど利用頻度が上がっていき、収益も拡大していくという考え方です。

まとめ

いずれの場合にしても、ベンチャーの創業にあたっては、市場の推定というプロセスは必要になり、正解はありません。既存の市場環境だけから算出したTAMが、ビジネスの拡大に不十分な場合には、他の手法を活用しつつ、どのように自社のサービスや製品が社会を変える可能性があるのか検討しましょう。結果的に、他のaddressableなmarketを発見することもあります。

同時に、投資をする立場としては、TAMという指標には多くの類型があるということを理解して、各企業や金融機関がどのようにTAMを計算したのか確認することが重要です。粉飾的なお化粧がTAMの中に混じっている場合もあります。指標を鵜呑みにせずに検討してみることが重要ですね。

その他の指標

TAMはテンプレート化が難しいですが、LTVについては確立した方法があるのでエクセルテンプレート化したエントリーが下記にあります。

本当のLTV(顧客生涯価値)の計算方法とエクセルテンプレート
LTV(顧客生涯価値)はマーケティングを行う上でCRMが一般的になるとともに一般的な概念となっています。同一顧客の継続的な購買やクロスセル・アップセルを行うことでマーケティングによる顧客獲得と利益の最大化を行うためにLTVを算出し、それを最大化する方法を検討することになります。

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