(まとめ)シェアリング・エコノミーの最新状況と問題点

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TeroVesalainen / Pixabay

この10年ほどで話題となったビジネスとして、シェアリング・エコノミー、フィンテック、ヘルステック、フェアトレードなどがあります。これらの新しい考え方はすでに一般的なものとして生活に根付いていますが、再度ビジネスモデルを整理して価値を理解するととともにダウンサイドにも目を向けてみようと思い立ちました。

実際はお盆休みの際に、積読するばかりだった本を読むのに、順番に読んでいくだけのもどうだろうとテーマを持ってみただけだったり・・・とはいえ、ネット上の情報は最新の技術やトピックを知るには適していますが、ピース・バイ・ピースの情報が多く、俯瞰する視点で物事を考えるのに書籍というのは適しているので、積読解消にはよい方法です。

(まとめ)シェアリング・エコノミーの最新状況と問題点

(まとめ)フェアトレードの最新状況と問題点

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シェアリング・エコノミー:所有から共有へ

シェアリング・エコノミーはオンデマンド・エコノミーとも呼ばれる市場経済の仕組みで、総務省のホームページの定義によると、

典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。

デジタルによって情報共有のコストが減ったことによるビジネスモデルなので、まさしくデジタル時代のビジネスモデルですね。市場規模としては、
グローバル:2025年に3,350億ドル(PWC推計)
日本:2020年に600億円(矢野経済研究所)
と想定されていて、日本の2015年の成長率は22.4%と拡大を続けています。

使われていない資産を・リソースを価値化するという説明で新しい経済活動を起こすと説明される場合も多いですが、所有しないライフタイルが進むことで資産を購買する人が少なくなる可能性もあります。同時に遊休資産化のリスクを減らすことで購買の後押しにもなるので、相殺という程度でしょうか。

市場としてみると、個人が遊休資産を活用しようとすること、地方都市でのホテルなど経済が小さいことで成り立ちにくい環境でも、遊休資産を活用しているため採算ラインの低い個人が参入することで、供給者が増えるため選択肢が増えることが大きな変化をもたらします。

選択肢が増えることによるコストの低減や、遊休資産をお金に変えるという経済的な側面とともに、そもそも大量生産大量消費というライフスタイルから、持続可能なエコという視点からサービスを活用することで市場が拡大していると考えられています。

代表的なサービスは、自家用車に他人を乗せるウーバー、使っていない部屋を開放するエアビーアンドビーなどになりますが、シェアリング・エコノミーの対象は、金融・ヘルスケア・食品など多くの領域に渡っています。

総務省の説明にあるとおり、貸し借りのための信頼関係を担保するための仕組みとして、利用者と貸主がそれぞれ評価する仕組みや、企業が選定したサービス提供者の評価を利用者がすることで、効率の劣るサービス提供者や悪意のある利用者を排除していくことは、ヤフオクなどのオークションサービスと同じ仕組みです。

ビジネス発展の背景

・スマートフォンの浸透
・ソーシャルメディアによる相互信頼システム
・大量生産・消費からエコへの意識変化
・都市への人口集中

シェアリング・エコノミーの特徴

・価値交換というマーケットプレイスの機能
・資産、スキル、時間、金銭などの遊休資産を最大活用する
・個人間のネットワーク経済
・専門家も素人もマーケットプレイス内で評価される
・自営業、雇用と違う収入確保の道

提供者のベネフィット

・利用されていない資産を有効活用できる
・利用者を探すコストが少なく、資産活用かかる手間が少ない

利用者のベネフィット

・新規購入や企業が提供するサービスに比べて安価
・所有しないエコなライフスタイルができる

市場のベネフィット

・供給力、供給量が増える
・スケールが小さく企業が参入しづらい潜在需要を作り出す

シェアリング・エコノミーの対象

シェアリング・エコノミーはエアビーアンドビーからスタートしたと言う本が多いですが、古くはクレイグリストなどのように、個人と個人をつなぐというのはインターネット初期からあるビジネスモデルです。したがって、多くの領域で急速にシェアリング・エコノミーの適用が拡大していますが、多くは以下の3つに分類することができます。

個人の能力のシェア

デザイン、事務処理などスキルを共有するマーケット

所有するモノのシェア

衣料品、金融資産、高級時計などモノを共有、交換するマーケット

スペースのシェア

家、部屋、自動車などを所有者が利用していない時間帯を共有するマーケット

同時に、シェアリング・エコノミーが拡大するにあわせて、その周辺のビジネスについても拡大しています。代表的なものとしては、民泊や自動車の鍵の受け渡しをなくすスマートフォンによる鍵、個人間での共有においてのリスクに対応した保険、プラットフォームに依存する信頼性評価をプラットフォーム横断的に信頼度のレーティングを提供する会社など、多くのプロダクトが開発されています。

シェアリング・エコノミーの課題

シェアリング・エコノミーの発展にあわせて、さまざまな課題も明確になってきた。雨後の筍のように現れたサービスの優勝劣敗が進む中、シェアリング・エコノミーが適用可能なセクターが明確になってきたこと。利用者保護などの法制度の問題と既存サービサーとの衝突、およびP2PプラットフォームのB2C化という問題がある。

手間に見合う領域でしか機能しない

ウーバーとエアビーアンドビーの成功後、ドリルなどDIYグッズの共有、洗濯機の共有、犬のあずかりまで数多くのサービスが開始された。実際に、未だに生き残っている会社は少なく、不動産や自動車など高価格なものや、古着やデザインなど最適なサービスを選定するための情報に格差が大きい領域でなければ、供給者・需要者ともに手間に見合わないということがわかってきている。一方で、さらなるデジタル技術の拡大にあわせて、コストが低減される可能性もあり、過去失敗したサービスが必ずしも今後も機会がないわけではないと言われている。

利用者保護などの法制度

日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国などの多くの国で過半数が、シェアリング・エコノミーのサービスを利用しないと回答しており、利用しない理由としては事故など安全性・取引の信頼性を理由をあげています。

タクシー、宿泊施設などのように、消費者保護の観点・品質保持のために、政府として法律・規制などを設定していたジャンルにおいて、個人間での取引になるため、安全対策、騒音、性的被害などトラブルへの対処がされていません。エアビーアンドビーなどのプラットフォームは、情報共有を促進する仲介をしているだけという立ち位置のために、多くのトラブルが報告されています。

同時にトラブルを救済するための保険・保障制度も未整備のために、提供者・需要者が既存の火災保険や自動車保険では救済されないという場合が発生します。結果的に、消費者は安物買いの銭失いになること、一方で既存事業者はコスト構造の違う競争による収益悪化によりサービスレベル低下、結果的に消費者の生活レベルとしては低下していく可能性があります。

一方で、利用者保護を名目にした旧来の事業者の既得権擁護論の根拠になりやすい部分もあり、バランスの取れた仕組の構築が期待されます。

B2C化した事業者

シェアリング・エコノミーのプラットフォームが拡大するに従い、P2PからB2Cが主流となっていくという問題です。これは2つの類型があり、提供者のB化と、プラットフォーマーの提供者側への移行という問題です。

ビーアンドビーやウーバーで議論となっているのは、もともと空きスペースを共有する建前だったのが、現在では過半数以上の供給者が専門家になっているということにある。複数の部屋を所有して、エアビーアンドビーで個人としてサービスを提供する人が増える事自体は、サービスの平均化としては望ましいです。一方で、もはや個人ではなく事業者という状態の中で、宿泊者の安全のために事業者が支払うべき、建築基準・安全基準の充足によるコストを支払っていない、専門性を証明するためのライセンス取得費用、個人のため徹底されていない課税など、既存事業者に対して不平等な競争環境となってしまっています。

メルカリなどP2Pのプラットフォーマーが、事業者主体の通販チャネルなどを収益の複線化を進めていくことに対して、情報共有を促進するプラットフォーマーという位置づけではなくなっていくことに対する疑問です。そもそも、反社会的な勢力の参入や非合法の取引が掲載されるなどの問題が発生しても、プラットフォームは最大限の努力をするが限界があるという立ち位置でした。情報共有のプラットフォームではなく、事業者として機能するのであれば、それなりの責任を取ることを求められるということになります。

俯瞰的な視点と議論点を理解するための書籍

シェアリング・エコノミーは、総論としてはポジティブにとらえる人が多いものの、それぞれの領域別の各論に入ると、ポジティブな影響とネガティブに影響というのが明確になっていきます。それぞれの立場からシェアリング・エコノミーについて論じている本を紹介します。違う意見の本を読むことで、自分のポジションや自分なりの理解をすることができますね。

シェアリング・エコノミー アルン・スンドララジャン

The sharing economy: the end of employment and the rise of crowd based capital by Arun Sundararajan

本書は、ウーバー、エアビーアンドビーなど多くの事例やブロックチェーンなどフィンテックにおいてのシェアリング・エコノミーの発展を紹介しています。

しかし、本書の主眼はシェアリング・エコノミーの専門家であるアルン・スンドララジャンが、シェアリング・エコノミーの定義とそれが及ぼす影響を、企業民主主義から大衆民主主義に変化することで、政府、規制、経済活動などの変化を示すことで、俯瞰的な視点と今後について考える機会を与えてくれる本です。

シェアリング・エコノミーをポジティブなものとして捉えて、よりシェアリング・エコノミーを拡大するためには、ピア規制、自主規制機関、データに基づく規制委任など、既存の政府などの規制機関から、シェアリング・エコノミーのプラットフォーム上に存在する信頼感の仕組みを、公共団体レベルまでスケールアップすることを提案している。

B2B、B2C、B2B2Cは証券取引所、品質認証など長い時間をかけて仕組が発達してきた。これまでごく小規模に行われてきたP2Pがメインストリートになる中で、それを管理・支援する仕組みはBをベースにするのではなく、Pをベースにするべきで、テクノロジーがそれを可能にするというのは刺激的です。

What’s Yours Is Mine: Against the Sharing Economy by Tom Slee

シェアリング・エコノミーに対して批判的な書籍です。トム・スリーは、聞きざわりのよいシェアリング・エコノミーという理想と、エアビーアンドビーから分析した現実を示しています。

エアビーアンドビーの収益の75%以上が、遊休資産の共有ではなくセミプロ化した人による家貸しになっている。ルームシェアリングというエアビーアンドビーが体験としてうたう形態は、エアビーアンドビーに掲載されている物件の1%だけしか占めていない。そして、このようなセミプロたちが買い占める部屋がパリ、バルセロナなどの家賃高騰を後押し、現地の一般消費者の生活を破壊している。

一方で、シェアリング・エコノミーを支える相互評価による信頼性システムについても、エモーショナルの奴隷を支援するシステムであり機能していないとしている。シェアリング・エコノミーという幻想のために、本来消費者が得るべきサービスを得られなかったとしても、シェアリング・エコノミーの仕組みなのでしょうがないということで、プラットフォームが満足の基準を下げる支援をしていると言っている。

さらに、使っていない部屋ですこしの稼ぎ、開いている時間でドライバーをしてすこしの稼ぎというコンセプトがマーケティングで押し出されているが、実際には資産を持つものはさらに稼ぐ道を拡大する結果となり、経済格差をより広げてしまう。

一方で、そもそもシェアリング・エコノミーという考え方に、トム・スリーは賛成しているようです。ただし、そこに利用者を騙そうとする欺瞞が多くはびこっているという現実を理解して、イノベーションという言葉に振り回されずに、冷静に制度設計をするべきだと低減しています。

まとめ

すべての事業者がうまくいくビジネスはありませんし、悪意を持った事業者もある一定レベルで発生します。多くの課題や解決方法が低減されているということは、イノベーションという言葉で盛り上がっていた時期から、現実的なサービスとして定着が進んでいるということだと思います。

一方でシェアードクーポンなどのように一過性で終わったビジネスモデルと違い、シェアリング・エコノミーは、議論を巻き起こし、問題を解決しながらも、今後も拡大していくと考えられます。

間違いなくしてはいけないのは、既得権益をただ守るためだけに規制をすることは避けるべきだと思います。

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