(まとめ)フェアトレードの最新状況と問題点

シェアする

コーヒー農園

vandelinodias / Pixabay

この10年ほどで話題となったビジネスとして、シェアリング・エコノミー、フィンテック、ヘルステック、フェアトレードなどがあります。これらの新しい考え方はすでに一般的なものとして生活に根付いていますが、再度ビジネスモデルを整理して価値を理解するととともにダウンサイドにも目を向けてみようと思い立ちました。

実際はお盆休みの際に、積読するばかりだった本を読むのに、順番に読んでいくだけのもどうだろうとテーマを持ってみただけだったり・・・とはいえ、ネット上の情報は最新の技術やトピックを知るには適していますが、ピース・バイ・ピースの情報が多く、俯瞰する視点で物事を考えるのに書籍というのは適しているので、積読解消にはよい方法です。

(まとめ)シェアリング・エコノミーの最新状況と問題点

スポンサーリンク

フェアトレード:搾取をなくし持続的な発展を目指す

フェアトレードは、オランダから始まった活動で、国際フェアトレードラベル機構が認証作業を行っている。フェアトレード認証を日本で行っているのは、1993年に設立されたフェアトレード・ラベル・ジャパンという団体。その団体によると、フェアトレードは以下のように定義されています。

フェアトレードとは直訳すると「公平な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。

フェアトレードが主に対象としている商品としてコーヒーやチョコレートの原料のカカオが有名ですが、その他にも砂糖、バナナ、綿花、お茶などが対象となっているようです。具体的には、ネスレ・モンデリーズ・マーズなど巨大化する食品会社のバイイングパワーに零細な生産者が対抗できるように、最低保障価格を定めて不当な搾取をなくし生産者に利益が残るようにすることと、生産組合(フェアトレードに参加する生産者の集まり)へ提供される援助金のフェアトレード・プレミアムからなり、利益と援助を利用して、文化的な生活や子供への教育などが提供されることとなります。

フェアトレードとして認証されている市場の規模は、グローバル:1兆円、日本:113億円と、世界第3位の経済圏を誇る日本としては、グローバルに占める割合が2%とフェアトレード認証の導入は遅れているようです。

ヨーロッパでは、多くの流通でファアトレードの商品が扱われており、非認証の商品との価格差も大きくありません。一方、日本ではフェアトレード認証の商品を売っているのは小規模店舗に限られており、年商1000万円を超える流通での取扱は20店舗程度(2010年)と限られた状態では、消費者の認知が2014年で20%程度と広がらないのもしかたがないかもしれません。現状はあくまでも小規模事業者向けのコーズ・リレーテッド・マーケティング(特定の商品を購入することが環境保護などの社会貢献に結びつくと訴える販促キャンペーンの仕組み)の手段となっています。

価格につては、大規模事業者にとっては一部の商品をフェアトレードとすると、すべて対応していないのはなぜか?などという無駄な議論を醸す可能性があること、フェアトレード導入よりデフレ経済下で価格が下がっていく中で、価格を上げる要素を導入するのは時代が悪かったのかもしれません。いすれにしても、小規模事業者が提供している商品において、一般商品とフェアトレード認証商品の価格差は3−4倍になっており、フェアトレード認証により寄付する金額が原材料の2.4%ということを考えると、異常に高い価格で売られていると言えるでしょう。

内外価格差があり、マーケティングのひとつとして使われているとなると、現状は利益率を高めるための仕組みという意識、悪くすると善意の人からメーカーが利益を搾取する仕組みになってしまっていると言えます。とはいえ、日本が遅れているかというとフェアトレードという国際的な仕組みで遅れているものの、日本独自の取り組みは多く、僻地の教育を支援するベルマーク、カカオ生産国の教育にあてられるプラン・ジャパンが支援した森永製菓の1チョコfor1スマイル、キリンダノンが行う1L for 10Lという途上国の井戸掘りを支援するプログラムなどが多く実施されています。

フェアトレードの種類

・国際団体によってフェアトレード認証

・個別の企業や団体が行っているファアトレード認証

フェアトレードの現状

・年々関心が高まり広がっているが、認知・規模ともに限定的

・ヨーロッパでは、多くの流通で取り扱われ、通常商品との価格差も限定的

・通常商品と3−4倍と大きな価格差がある商品が多い

フェアトレードへの批判

中間コストの存在

フェアトレードに限らず途上国支援の仕組みで指摘される問題点は、オペレーションコストや中間搾取により、実際に貧困に向き合う作業者への支援が限定的なものになってしまうという点になります。フェアトレードで言うと、協同組合に対して買取りや援助を行っていくため、協同組合の運営にコストがかかること、協同組合に参加している人の多くが農園主であり、農園主は買取り価格があがるよい仕組みだが、その農園主が雇っている作業者が保証されるわけではない。

これについては、フェアトレード認証団体がすべてダイレクトに運営する場合、よりコストがかかる結果になると思いますので、組織として運営・管理上必要なコストだと考えます。ただし、認証団体の責務は、社会問題を提起して問題を解消していくことなので、フェアトレード認証していなくとも良い活動をしている企業については、取り上げて、広めていくなど懐の広い活用が求められます。オーガニックな商品を作っている企業など、フェアトレードに敵対的な発言をしている企業も多いことから、 認証団体の懐の狭さのようなものも感じます。

最低保証価格が市場経済を歪める

フェアトレードが利用する最低保証価格という仕組みが、需要と供給によって調整されるという市場経済の機能を阻害しているという意見があります。需要が減ると価格が下がるが供給側が生産量を調整するため価格が逓減する、需要が多くなると価格が上がるが供給側が生産量を拡大するため価格が逓減するというのが市場経済の機能です。2008年の経済危機などでコーヒー・カカオなどの需要が減っている際に、最低保障価格が存在するために結果的に生産調整が行われるスピードが遅くなり、低価格により被害を被る生産者が結果的に増えるということになります。

やらない善よりやる偽善という言葉もありますが、社会貢献を基軸とするのみでは、供給過剰の価格下落の影響を受けやすい仕組みとなってしまい、目標とする持続的な発展を阻害する可能性があるというのは皮肉です。

フェアトレードを俯瞰的に理解する書籍

フェアトレードを学ぶ人のために 佐藤寛

フェアトレードがフェアトレードと言われていなかった頃からの生産者支援の仕組みから始まり、現代のフェアトレードまで網羅的に仕組みを整理した本になります。認証・支援団体が作っている本屋冊子が、貧困への共感を狙った内容になっているのは、正しいと思うものの、経済的な仕組みとして理解しとうとすると客観性が足りないところ、明確に1950年代にはじまる不均衡是正のとりくみを理解できる本です。

フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た コナー・ウッドマン

Unfair Trade: The Shocking Truth Behind ‘Ethical’ Business

日本語の題名がフェアトレードに限定しているように聞こえますが、内容は現代のとおりエシカル(倫理的)を売り物にするビジネスが、結果的に引き起こす不均衡を題材にしています。

フェアトレードの問題点を、活動として一定の効果を認めつつ、腐敗した生産組合から袂をわたった農家が独自に大手企業と取引をしてより良い取引条件を引き出している事例などで、運営コストなどの問題点を提起している。一方で、認証などのエシカル・ビジネスとかかわらずに、現地支援を行っている企業を紹介しています。

まとめ

日本において、ゆっくりとした拡大が進むフェアトレードですが、生産者保護という課題認識としては正しいものの、運営としては課題も大きそうです。NPOのスタッフがビジネスクラスで移動しているなど高コスト体質を批判された国際団体が、自分たちは認知拡大と資金集めに集中し、小回りの聞く中小支援団体にファンドするという仕組みが有効という声があるそうです。フェアトレードがダイレクトな仕組みを取る以上は、結果的に市場経済の歪みに手を貸している部分も多いです。

一方で日本限定では、これだけ一般商品と価格差が発生するという状態を放置するのは、フェアトレードのブランディング上も問題と思います。認証に価格差を制限する仕組みをいれるなどしなければ、拡大したとしても限界があると思われます。

スポンサーリンク

シェアする