(最新メガトレンド)次のデジタルビジネスーその2

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アメリカのテクノロジー関連の調査会社のガイトナーが毎年発表しているメガトレンドの2017年版を発表しました。このレポートでは、ハイパーサイクルと呼ぶテクノロジーがイノベーションの萌芽から話題になり生活の中に組み込まれていくまでの流れの中で、次の10年間に来るテクノロジーのトレンドを紹介するものです。

http://www.gartner.com/newsroom/id/3784363

 

 

前回は、Artificial Intelligence Everywhere (全てにAI)を調べました。今回はTransparently Immersive Experience(透過的没入体験)という聞いたこともない言葉がなにものなのか理解するとともに、その要素技術について確認してみようと思います。

 

 

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Transparently Immersive Experience (透過的没入体験)

 

テクノロジーは日々人々が使いやすいように進歩しています。最終的には、人、ビジネス、モノから機械が存在しないように見える自然な状態に向かっています。

 

オフィスの中に巨大なエアコンが置かれていた時代から、天井の中に仕込まれてエアコンを普段仕事している時に気にすることはほとんどありません。一昔前はお店の中に置いてあった大きな箱型のテレビは、壁の中に埋め込まれて、人は意識せずに情報を取得しています。家の中に巨大なタワー型のパソコンが置いてあった時代は少し前ですが、今ではアマゾンエコーは、音声認識技術を利用したコンピューターが、小さなスピーカーに搭載されています。

このようなに、テクノロジーや機械の存在が気にならない、自然な体験をTransparently Immersive Experience (透過的没入体験)と定義されています。

 

実現するための要素技術が紹介されています。Computer Brain Interface にHuman Augmentationと、少し前までSFの世界だった用語が、これから10年の鍵となる要素技術として紹介されているのは、興奮します。

 

  • 4D Printing 4次元プリンティング
  • Augmented Reality (AR) 拡張現実
  • Computer Brain Interface 脳波インタフェース(電脳)
  • Connected Home スマートホーム
  • Human Augmentation 強化人間
  • Nanotube Electronicsナノチューブ・エレクトロニクス
  • Virtual Reality バーチャルリアリティ
  • Volumetric Displays 立体ディスプレイ

 

 

4次元プリンティング

 

紙に印刷する装置を2次元プリンター、立体的に物質を形成できる装置を3次元プリンターです。3次元プリンターはすっかり一般的になってきました。4次元プリンティングは、3次元プリンティングに「時間」の概念を加えたものになります。

 

TED2013でMITのスカイラー・ティビッツ教授が紹介をしています。3次元プリンターで形成した構造物は、最終的には人間の力で組み立てをしなければなりません。複雑なモノ、大きなモノに対して、3次元プリンターを適用していく課題として、せっかく現地で3次元プリンターを使って形成したとしても、組み立てに大量の人や工具が必要になってしまうのであれば、工場で組み立てやすい形にしてもよいということになります。

 

4次元プリンティングでは、3次元プリンターで形成された物質にDNAのようなマップを組み込んで、なんらかの刺激をあたえることで、自律的に、自動的に形状を変化させる、もしくは組み立てられることができるという概念。スカイラー・ティビッツが率いるMIT Self-Assembly Lab(マサチューセッツ工科大学 自立組立研究所)では、自動的に組み上がる椅子や机などの家具を実現することを目標に研究をしている。

The emergence of "4D printing" | Skylar Tibbits

組み立てという視点でいうと、イケアで買った家具をダンボールから取り出すと、自動的に組み上がっていくという機能。形状を変化させるという視点では、自動車の空力パーツのようにスピードによってもっとも効率が良い状態に形状を変化させる(直線では車体と一体化して空気抵抗を減らし、カーブやブレーキ時は空気抵抗を発生させるように立ち上がる)機能を実現させようとしている。

 

具体的には、木の板や紙が湿度によって収縮する原理などを組み合わせることで、カーボンファイバー、木の板、生地や紙など一般的な素材が、プログラムされている形に変化していく。現時点でも電気的な仕組みやモーターを利用して実現できるが、一般的な素材を組み合わせるだけで実現することで、安価に機能を搭載できる。

 

宇宙ステーションのような宇宙開発、ソーラーパネルでの活用が期待される。同時に、生活に近いところでも、工場からの発送時にはコンパクトな状態で発送し、目的地で展開することで流通の効率化が期待される。

 

画期的な技術と思うものの、実現にはまだまだブレークスルーが必要とのことです。

 

 

 

脳波インタフェース(電脳)

プレイン・マシン・インタフェースとも呼ばれる概念で、キーボードを使わずに脳で考えるだけでタイピングしたり、電話をかけたりという、脳によるコンピューターの操作技術です。

 

テスラやスペースXのCEOイーロン・マスクはNeurolink、同じくPaypalの創業者のひとりブライアン・ジョンソンがKernel、フェースブックはBuilding8という研究所と、コンピューターの巨人達が続々と投資を始めている分野。

 

目指しているのは、攻殻機動隊の「電脳」の世界ですね。大脳新皮質に電極を埋め込むような手法も検討されているようですが、倫理的にも現実味はあまりないと言われています。そのかわりに、MRIのような技術で、脳の状態を外部から測定する方法が研究されているようです。

 

しかし、社員証を生体チップ化して体に埋め込むというような実験も始まった今、未来の倫理も大きく変わって、電脳化が当たり前になってくるかもしれません。

 

 

ナノチューブ・エレクトロニクス

カーボン・ナノチューブは、炭素によって作られる単層もしくは複層の管状になった物質のことです。この説明だと、突き放された気がしますが、超微細で細く丈夫で安定した物質という程度に理解しています。カーボン・ナノチューブは、軽量、高強度、柔軟、高い導電性、高い熱伝導、耐熱性、科学的な安定性など多くの特徴があります。

 

ナノチューブ・エレクトロニクスは、アルミニウムの約半分の軽さ、鋼鉄の100倍強度、ダイアモンドの2倍の硬さといった非常に優れたカーボン・ナノチューブの特性を利用して、 電子デバイスを作ることを称しています。

 

現在シリコンでできている半導体を置き換えてナノチューブを使う、構造上表面積が広いことを利用してナノチューブを燃料電池に使う、ナノチューブを電極の素材とすることディスプレイの素子として使うなど、多くの電子デバイスへの応用が研究されているそうです。

 

現在はまだ大量生産にいたっていないため高価な素材ですが、今後安価な生産手法が開発されていき、価格が下がることで、広い範囲での応用が期待されているようです。少し検索しただけでも、建材から電気回路の配線までさまざまな研究成果が発表されています。

 

4次元プリンティングや脳波インタフェースに比べると、実現性が高い技術ですね。

 

 

 

まとめ(透過的没入体験)

 

そもそも領域として聞いたこともなかったというのは、アンテナが低いのかもしれません。すっかりおなじみになったAR, VR, 3次元立体ディスプレイなどはともかくとして、要素技術として紹介されたものは、調べれば調べるほど、スタートレックや攻殻機動隊のようなSFの世界でした。

 

そして、研究の道筋がついてきている、もしくは近年大きなブレークスルーが起きたという領域とのことです。10年後、20年後が楽しみになってきました!

 

前回のArtificial Intelligence Everywhere (全てにAI)と今回のTransparently Immersive Experience (透過的没入体験)に続いて、Digital Platform(デジタルプラットフォーム)も別途調べたいと思います。