有給休暇を取ってほしい、残業を減らしてほしい

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働き方改革が話題になっていますね。過去に残業100時間とか200時間とか経験しているおっさん世代です。

今の立場では、できることならば全員定時とは言えないけど、早く帰ってほしいし、帰れるような体制を引くのが仕事。なぜなら、残業問題で書類送検されたくないし、そうなってしまったら発生する各所とのミーティングに時間を取られなくないので。

 

残業を無くせるかというと、繁忙期、長期休暇に異動前後の調整があるので難しい。とはいえ、ゴールは無くすからずらしたくない。とはいえ、若い頃は集中して厳しくやらせるべきだという帝国兵みたいな気合論の人や、クライアントへのサービスのためには全員深夜残業してでも仕事をやろうという青年将校みたいな子がいて、青年将校が業務上は有望株の場合も多くて、悩みは尽きない。

 

 

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残業時間200時間超えが続いた結果

rookie

skeeze / Pixabay

 

新卒では日系IT企業にSEとして入社しました。クライアントの業界理解、業務定義、要件定義もすべて新鮮でなにをやっても楽しかったです。時間を有効に使えていたかは疑問符だけど、時間を気にせず仕事してまいた。

 

2年目後半あたりから、小・中規模のプロジェクトリーダーとなる案件がいくつ担当するようになりました。コスト管理やスケジュール管理をやりだすと、見積やスケジューリングが甘いので、プロジェクトが進むに連れて誰にもふれない仕事が増えてきて、自分でやって解消しようという最悪の判断を下し続けていました。

 

そんな状態の残業時間は、平日はすべて終電か朝方にタクシー帰り、土日も平日と同じ8時45分から終電という生活なので、毎日6−7時間残業、週末も12時間稼働で、220時間。

 

エンジニアもクライアント対応を心がけるという号令のもとスーツを毎日来ること、サンダルはだめといったルールが導入されたあたりで、毎日スーツ、ネクタイ、革靴。洗濯する時間などないので、毎週オンラインで安いYシャツを1週間分買っては捨てるという生活。毎月ボーナス!?というぐらいの残業代が出るので、できてしまったのです、そういう無茶。

 

 

このあたりで精神的不調、体調不良が発生した話

 

100時間の残業で心身衰弱して人生を見つめ直したという話を共感しながら読んでいました。

 

僕の場合は、ずっとオフィスで仕事をして、コンビニ飯やピザとか食っているので、急激に体重が増えて、ぎっくり腰になる。少し休んだ程度で、ナチュラルハイパワーで復帰。

それでも無理矢理プロジェクトを進めると、自分の生産性が落ちていくので、スケジュール遅延との恐怖と戦う日々、しかも自分がボトルネック。めでたく円形脱毛症になる。ある日髪を洗っていたら突然後頭部右側が「つるっ」としていて、自覚。あの感覚は20年以上経った今も覚えている。

それでもなんとか乗り切ってフィールドテストまで漕ぎ着ける。テストの様子を泊まり込みで確認を続ける。このあたりからあまり記憶に残っていない。ある日、体中があざだらけなのに気づいて、どうも夜中ふらふら歩いている間に、机や扉にガンガンぶつかっていたらしいけど、本人自覚なし。

 

ただ、恐ろしいのは今でもあの時のプロジェクトは楽しかったと記憶しているのです。いろいろチャレンジもあったし。怒られたし、無理もしたけど、褒められることもあったし、楽しかったなと。

 

その後、ありがちなことに、3年目の正月休み中にシステム導入を終えて、やっと落ち着いた日を過ごしていたあたりで真っ白に燃え尽きて、2ヶ月後に退職。遺留されましたけど、燃え尽きた後は同じ熱量で仕事できなかった。結果として、ぽっかり空いた時間で転職活動をしたらそれほど苦労せずポジションが見つかったので、代休と有給を使って1ヶ月ほどを海外で過ごして、すべて忘れて転職しました。

 

残業80時間というのが過労死や精神不調のリスクが高まる時間というガイドライン。今思うと、マネージメントなにしていたんだ?というぐらい放置されていた気がする。新卒の同期には、同じようなルートを通ったものの、退職せずにしばらく休憩プロジェクトをやって不死鳥のように蘇った人が多いので、無理無茶させても退職リスクがそれほどないと思われていた牧歌的時代のお話。

 

 

 

実はその後も長時間労働を選択した話

 

バーアンアウトで退職したにもかかわらず、次の会社でも結果的に長期労働を選択しました。ただし、前回の反省をもとに働き方のスタイルは変えました。

 

働き方改革では、欧米などの例が引き合いにだされることが多いです。アメリカは、2015年の調査でついにイギリス、フランス、ドイツどころか、日本を超える先進国でもっとも長時間労働の国になってしまいました。ただしABCテレビの調査では、25%だけが自分は働きすぎだと思っているという調査があります。同時に、フリーランスが増えていることも、長時間労働を誘引しているという報告もあります。

 

oecd work hour

OECD: Employment Hours worked

 

少し前までのアメリカは、中間層は長時間労働をしていませんでした。弁護士、投資銀行、コンサルティング、広告会社など収入も多いけど、長時間働くという職種がありました。この人たちは本当によく働きます。何時でも電話会議に出てきますし、たとえ休みを取っていてもコンタクト可能です。

 

このアップオアアウトなどと呼ばれるワーカホリック・カテゴリーに僕は入ります。同僚と話をしている中で働き方を調整しました。

 

長時間働きつつもある時間で必ず自宅に帰る、家族や友達と過ごしてからオンラインに戻るというライフスタイル。オフィスで長時間労働をして周囲に働かなければいけない雰囲気を出すのではなく、6時を過ぎたら家に帰って、ゆっくり料理をしながら仕事をする。徹底的に自分のスコープ外の仕事はやらない。自分が集中するべきこと、バリューがだせることに徹底的に集中する。休みはとる、ただし休み中もコンタクト可能とする・・・などなど。

 

一部の人には、そんな生活したくないという内容かもしれませんが、そもそも仕事をするのが好きなので、仕事してないとストレスを感じるという人種。ただし、プロフェッショナルファームにても、バックオフィス機能などワーカホリックな人ばかりではないので、その人達に迷惑がかからないようにするという考え方です。

 

バックオフィスやクラークの人たちを軽んじている人は多いのも事実なのですが、同時に彼らのサポートがないと立ち行かない前線の人間として、彼らが仕事しやすい人でいることは、サポートを受けやすくなるので重要です。

 

ということで、夕方には帰るし、休日出勤もよほどのことがなければしない。というスタイルに変えました。

 

アメリカで働いたわけではないのですが。残業していると無能とみなされるという幻想がありますが、上目指すアメリカ人はジョブディスクリプションをはみ出してハードワークします。ただ同時にプライベートも重視します。周囲を気にするし、周囲がサポートもします。そういうフレキシブルな仕組みがありました。

 

とはいえ、アメリカは世界でもっとも働いている時間が長い国になってしまいました。日本よりも多いのです。でも、過労死や自殺の比率は日本が圧倒的に高いです。長時間労働に注目が集まっていますが、長時間労働以外の側面にも注目した方が良いかもしれません。

 

 

抵抗勢力ミドルのお話

Executive Decision

Wokandapix / Pixabay

 

ここまで書いて、ひどい社畜生活しているな・・と振り返りました。現在は、社員にはできるだけ早く帰ってほしいです、休日に仕事してほしくないです。

 

深夜残業が続くと、効率は悪くなりますし、朝来る時間が遅くなり、帰るのが更に遅くなる。いつのまにかオフィスで夕飯を食べるのが普通になってしまいます。夕食から帰ってきて、集中して仕事すればあっという間に、23時、24時で、だったら後1時間やってタクシーで帰らせてもらおうという麻痺したライフスタイル。

 

冒頭にも書きましたが、抵抗されることも多いです。昔はみんなで夕飯を食べに行く機会が多かったから、チームワークも醸成できた、周囲の人がなにをやっているのか理解できたと言われることもあります。社員が空き時間ができた結果、会社の人ではなく社外の人が多くなり、同業に引き抜かれた、会社を辞める人が増えたと言う人もいます。

 

というあたりで、大きな違いなのですが、日本は本当に中間層が優秀です。意思決定がそもそもあいまいだったり、意図が読めなくても質問しない結果、上司がなに言っているかよくわからないから自分なりにやってみようと進めて、なんとかこなしてしまいます。その分シニアの意思決定に従わないということが横行しやすい環境です。

 

生産性を上げて時間を短縮することを目的とした際に、クライアントに同じサービスができないとしてもそれを調整するのはシニアの仕事。中間層の帝国軍人や優秀な若手将校が、クライアントに迷惑をかけられないと勝手に仕事を始めてしまう、一部の業務を他のチームに振るように言っても自分でやり続けるとなると、進めようがないです。

 

クライアントに怒られるのはシニアの役目なので、気にせず意思決定を尊重して、進めるために必要なリソースや課題を共有してもらった方が手を打てます。想定よりも工数がかかる場合は、アラートを出してもらえば解決に動きます。そのために給料をもらっていますし。

 

 

まとめ

日本に帰国してから、「別の部署に任せればいい」、「会社全体のことはシニアが考えることでタイトルも給料ももらってない君が気にすることではない」、という会話をすると、そういう会話は良くないといわれることもしばしばです。

 

すべての仕事を全員でやる必要はない、責任を感じる必要もない、全員が自社の経営者の目線を持つ必要もありません。チームで、みんなでというのも重要ですが、給料分働くという意思を持って、やばいと思ったらさっさと逃げてきて欲しい。抱え込めば抱え込むほど、逃げられなくなっていく。

 

とはいえ、それができないから国としてルールで時間を縛るのでしょうね。

 

長時間労働規制の導入は企業文化の変化を伴います。変化をどうリードしていくのか、会社内のマネージメントではない、変化をリードする手法を知っておくことが役に立ちます。

ハーバード大学組織行動の教授ジョン・P・コッターの企業変革力は、8つのステップで変化を推進する方法をステップバイステップで示してくれます。企業変革力という邦題がトップマネージメント向けのように感じてしまいますが、原題がLead Changeとあるように、組織の中のどのレベルでも適用できるフレームワークです。

タイム誌で、25冊のもっとも影響を与えたビジネス書の一冊に選ばれただけあり、危機感を醸成する、変化をリードするチームを作り個人に任せないなど、具体的な方法が提示されています。同時に、変化において陥りがちなリスクとその回避方法も明示しています。

 

さらに、リーダーシップ論でも著名なジョン・P・コッターの本ということもあり、本書のテーマではないですが、リーダーがどのようにふるまうべきなのかリーダーシップを学ぶためにも役に立ちます。