アップル・グーグル・フェースブックが参入するコンテンツ市場

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ネットフリックスやアマゾンに続いて、アップル、グーグル、フェースブックが映画やドラマへの投資を発表しました。これまでプラットフォームであることを貫いてきたデジタルの巨人たちの動きが激しくなった理由を分析します。

 

 

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コンテンツ業界の変化

アメリカのコンテンツ業界(Media & Entertainment market)は、7000億円を超える世界最大の市場とともに、世界のコンンテンツ業界の三分の一を占めます。

 

アップルは独自の番組制作に100億円を投資すると発表し、、フェースブックはドラマシリーズの制作に乗り出し、グーグルは1話あたり3億円を使ってのドラマシリーズ制作を発表しました。これまでトラディショナルなテレビ局やハリウッドの映画スタジオが主役だった市場に、(Over The Topと呼ばれる)動画ストリームサービスの企業ネットフリックスが参入し、「House Of Cards」での大きな成功を収めるのを追うように、アマゾンが参入する中、さらに厳しい競合と消費者の時間の争いが始まっています。

 

実際、アメリカで制作されるテレビ番組の数は、2016年には500以上のタイトルとなり2010年に比して2倍となっています。500番組というのはライブやコメディ番組を抜いた数なので、日本と単純比較はできませんが、日本の年間制作されるドラマが200本もいかないことを考えると、いくら世界1位の市場としてもオーバーマーケットという状態になりそうです。

 

一方で、「Game Of Thrones」を持つHBOなど、これまで番組制作を行ってきたのはケーブルテレビ局でした。この中で、A&Eなど一部の局は、アップルなどの参入を受けて、制作から撤退をすると発表しています。一方で、コンテンツの雄ディズニーは逆に自社のストリーミングサービスを開始するために買収を行っており、

 

各社の参入計画

フェースブックは今後「WATCH」タブを追加する計画です。このタブでフェースブックの自社制作の番組や他社の番組を見れるようになります。グーグルは傘下のYouTube上でコメディやドラマを流す予定です。特に、グーグルはこれまでユーチューバーといったネット上の有名人を対象とした番組に投資はしてきましたが、王道のコンテンツに投資をするという大きな方針変更となります。

 

一方で、アップルは制作のために大手プロダクションから制作者を雇っていますが、どのようなサービスとして展開するのは未発表です。通常番組制作に1年程度かかることを考えると、2018年半ばにはアップルのコンテンツとプラットフォームの計画が発表されることになると思われます。

 

テクノロジー企業がコンテンツに参入してきた歴史は古く、おなじみのソニーや破綻したAOLなど多くの企業がコンテンツに投資をしてきました。一方で、ネットフリックスやアマゾンは成功を収めていますが、同時期に参入したマイクロソフトや米国ヤフーは大きな損失を出して撤退しています。では、なぜアップルなどプラットフォーム各社はこのタイミングでの参入を決めたのでしょうか。

 

資金力ではなく、データが鍵

世界最大のスマホ、ソーシャルネットワーク、検索サービスというプラットフォームを持つ各社を今回参入に向かわせているのは、ネットフリックの影響が大きいと考えられています。ネットフリックが利用者の見たコンテンツやサーチしたキーワード、タレントなどの数値を利用することで、これまでのテレビ局に比べて正確に消費者のニーズを把握して番組を制作することで、大きな成功を収めています。結果的に、今年のネットフリックスの制作費は600億円を超えていますが、十分な成功を収めています。

 

今年、ネットフリックスは1億人契約を超えて、アメリカの世帯数に対して約半分にリーチしています。これらの人が日々検索し視聴する番組をもとに、番組のテーマ、脚本家、監督、主演俳優までビッグデータから番組制作をしています。

 

そして、アップル、グーグル、フェースブックの3社はそれぞれのプラットフォームを通じて、世界中の需要を予測できるだけの巨大なデータを保持しています。そして、このデータをもとに確実性の高いコンテンツ制作に向かおうとしています。

 

今後の予測

2015年までに、コンテンツ企業は買収により、ウォルトディズニー、コムキャスト、タイムワーナー、ニューズコーポレーション、バイアコムの大きく5社に統合された状態にありました。

 

AOLを社名から降ろして以降10年以上を経て、今年、AT&Tがタイムワーナーを買収しAT&Tタイムワーナーが誕生します。この提携でもネットワークを握るモバイル・プラットフォームとコンテンツの融合です。さらに、米国携帯第1位のベライゾンは、ディズニー、コムキャスト、CBSとの合併を協議していると公表しています。

 

データを鍵にプラットフォームのコンンテンツ参入、コンテンツのプラットフォーム統合というニュースがしばらく続きそうです。

 

同時に、コンテンツ制作者がこれまでになく消費者のデータに触れ理解する機会を与えてくれます。これまでの視聴率というごく少数のサンプルによった数字で番組を制作するのではなく、より近い関係となったことで、どのような番組が制作されるのか楽しみですね。

 

一方で、サンプルが少なくターゲットの興味もわからない視聴率によった制作を未だに続け、テレビ局も固定化されてしまった日本市場。テレビ局数だけは少ないために、視聴率が下がってもテレビ広告の収益は維持されており、ディスラプション(大きな変化)が起きているアメリカ市場とは違い古き良き環境が温存されています。

 

サイバーエージェントが大きな赤字を生みながらも投資を続けると明言しているアメバTVは、データとコンテンツの融合で日本版の「House Of Cards」を生み出せし、広くマーケットを確保するのか?もしくは過去のCS・BSのようにプロレス・アニメのような特定の趣味の人のためのプラットフォームになるのか?こちらも興味深いです。