すべての会社はAI戦略を立てるべき

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各産業でインターネットの登場に次ぐディスラプション(破壊的な競争環境の変化)が起きています。AI(人工知能)とAIにより進化する技術の登場による変化から無縁であるセクターはありません。ディスラプションの機会を最大化する今後の成長戦略として、AI戦略をすべての企業は作るべきです。

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ジャニパーネットワークという通信機器をメーカーのグロース・ストラテジー&インベストメント・マネージャーのRita C Whiteが、CBInsightにすべての企業はAI戦略を成長戦略として立てるべきだという寄稿をしています。記事の内容を確認しながら、AI戦略立案のフレームワークを検討してみたいと思います。

AIによる根本的なビジネス環境の変化から自由であるセクターはなく、製造業、ヘルスケア、IT、自動車、交通など、ほぼすべての産業が影響を受けることになります。それだけでなく、AIの進歩により、ビジネスプロセスを自動化する会社が現れ、自動運転の登場など顧客のブランド体験を変え、競争優位性の源泉のあり方などが一変していきます。

グーグル、アマゾンやアップルなど高度なITを活用する会社だけでなく、カーナビの最適なルート検索を高度化、カスタマーサービスの最適な受け答えを提案するなど、すでにAIは多くの変化を起こしています。ただし、多くの人イメージするロボットとしてのAIではなく、人やサービスの裏側で使われるため、消費者が気づかないうちにAIは生活の中に入り込んでいっているのです。

とはいえ、上記のような一部の商品への導入を除くと、AIの大企業のビジネスプロセスへの導入については、いまだ初期的な段階にあると言えます。しかし、AIがビジネスに与える影響を考えると、CxOといった役員レベルのシニアスタッフを巻き込んだ議論と戦略の策定が必要だとRitaは提案しています。

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AIの現状

AIと一言で言っても機械が知的な行動・態度をすることを目的とした、多くの技術の集合体で、その中でも近年大きな発展を示したのはML(マシンラーニング)の発展によるものです。MLのアルゴリズムは、事前に設定したルールではなく、事例と経験から学ぶことが特徴です。そして、MLの中にも、ディープラーニング、ニューラルネットワークなど複数の技術や手法が存在しています。

MLの爆発的な発展は、安価な計算能力やデータベースがインターネット上のサービスのクラウドコンピューティングとして提供される様になったことに支えられています。結果的に、AI領域の研究者が増え、資金が集まり、現在ビジネスや生活を大きく変える存在にまで到達しました。

マシンラーニングの用途と活用例

世界の先進的なテクノロジー企業ではAIの活用が研究室ではなく実際のビジネスの仕組みとしてすでにはじまっています。AIはマツコロイドのようなロボットとしてではなく、すでに各社が持っているプロダクトを進化させる仕組みとして使われています。

アマゾンアマゾンの有名なパーソナライズドされた商品紹介・推奨エンジンにAIが利用されています。株主向けのミーティングでCEOのジェフ・ベゾズは、AIを流通の仕組みに導入して配達スピードを速める、既存のプロダクトの機能向上、新しいツールの開発などAIを導入することに強く言及しています
グーグルディープマインドというAIを使って、サーバーを集積したデータセンターの電力消費を最適化し、温度を40%下げるなど実務での活用がされています。グーグルは近年提唱していたモバイルファーストから、新たにAIファーストという方向性を掲げて、AIを検索エンジン、自動運転などに適用しようとしています。具体的にはGメールにAIを適用して、メールの内容にあわせて、自動的に返答文案を作成して提案するなど、ビジネスプロセスの効率化を目指したツールもリリースしています。
フェースブックニューラルネットワークに関する知見では世界をリードしており、ユーザーの書いた文章を理解する自然言語処理などにAIが活用されています。AIにより理解された精度の高いユーザーの興味関心から最適なエントリー、ニュースや広告を届けることを意図しています。
マイクロソフト5000人の技術者からなるAI専門のチームをつくり、オフィス・マイクロソフトダイナミクスなど既存商品への導入を薦めています。
インテル機械学習ではコンピューターの非常に大きな掲載能力が必要になります。買収したディープラーニング専門のNervadaという会社をリーダーとして、より効率的なネットワークルーティングの仕組みなどにAIを適用しています。
百度仮想現実(AR)での体験の効率的な運営、写真の判定技術、自動運転などにAIを適用するために、積極的な投資をしています。

このように各社で先進的な取り組みを行っているAI領域の技術者。現在、80−90%のAI関連技術者が大テック企業で働いていますが、それでも数がまったく足らず、大企業のAI関連M&Aを加速させています。2017年だけでも、すでに55社が買収されています。このように技術だけでなく、開発をしたり、モデルを作ったり、運用するといった人材がまったく足りていないというのが現状です。

マシンラーニングはなぜすごいの?

MLは大きく2つの手法に分かれています。

教師あり学習

事前に用意されたラベルをモノやコトに付与されたデータセットをもとに認識・判断をすることで学ぶ方法

教師なし学習

ラベル化されていないデータのインプットやアウトプットをもとに認識・判断をすることを学ぶ方法

自動車メーカーやIT各社が自動運転に取り組んでいますが、自動車の自動運転は教師あり学習が使われています。教師ありで学習したAIを実世界上のテストで教師なしを活用することはあります が、自動運転のAI開発においては、まずは人を人、信号を信号、犬を犬といったようにラベルを付与された走行データをもとに学習することが必要です。先行している企業は、すでに多くのデータを蓄積していますし、新たに取り組みだした会社はラベル付きのデータを購入することで時間を埋めようとしています。

そして、この学習のフェーズがプロセッサーのパワーをもっとも消費する作業となります。AIのプログラムはグーグルやソニー、リクルートなども公開しています。このようなライブラリーを使って写真に写ったものがなんなのか判定するということは個人のパソコンでも簡単にできるようになっています。実際にやってみると、学習にはシンプルなものでも1−2時間という時間がかかりますし、その間パソコンはものすごい勢いで計算を続けています。わからないこと、初めてのことは試してみるのが一番いいので、僕はここらへんこのサイト参考にmacbook airで試してみましたが、とてつもなく熱くなったのでファンレスマシンでやるのはおすすめしません。

AI戦略の立案

人工知能というと将棋や人間型ロボットなど、新しい機械というイメージが先行してしまうが、実際の活用方法(ユースケース)は、既存の商品、プロダクトや業務上のプロセスを改善するということに使われています。したがって、自社の商品ポートフォリオや業務フローにおいて、AIを活用することで実現される可能性について、戦略を持つべきです 。では、どのような戦略を立てるべきか、闇雲に投資をしても効果は期待できません。そこで、Ritaは戦略のフレームワークとしてデータ、インフラ、人材の3点について明確にすることを提唱しています。このフレームワークなのですが、すべての企業はAIを活用するべきだと言っている割に、テクノロジー主体の企業には良いとしても、製造業や流通などのビジネスでは、戦略として機能しないと思います。ということで、少し調整をして普遍的に使えそうなシンプルなフレームワークを説明してみます。

カテゴリー
(社内プロセス、商品、サービス)
社内プロセス社内プロセス
商品・サービス・プロセス名コンテンツの制作Eメールの処理
データアクセスデータ
既存顧客のフィードバック、アンケート、クレーム、修理対応顧客のプロファイル
Eメールのデータ
商品データベースコールセンターのコンテキストデータ顧客プロファイル購買履歴
AI適用効果効果的なコンテンツの提案メール返信文案の自動作成
タレントマーケティングオートメーションのSI、パッケージベンダーへ業務委託社内IT部門から育成
インフラ・ミドルウェアクラウドサービス

グーグルのAPI.AI

オフィス360

TensorFlow

想定効果CVR向上残業時間減少
メール応答速度の向上
顧客満足度向上

カテゴリー

AIを活用とする対象を、社内プロセス、商品やサービスで分類します。社内のプロセスへのAI活用の可能性を検討していくことで、効率的なビジネスの推進が可能となります。 企業活動の多くの領域でAIが機能する可能性があります。過去ビジネスプロセス・リエンジニアリングをしたことがあれば、その資料をもとに、AI導入を前提に見直すことで、効率化・顧客サービスの向上などが期待できます。

商品・サービス・社内プロセス

AIを適用するモノやコトを具体的に整理してきます。自社の商品ポートフォリオ、会計処理などAIの適用を検討した商品・サービスもしくは社内のプロセスを明確にします。社内のプロセスとしては、顧客サービス、需要予測、人事評価やリテンションの仕組み、営業管理、法務チェック、請求書のチェック、プレスリリースの文章チェックなど、多くのオペレーションが対象として考えられます。当然、プレスリリースの文字校正のAI化など投資効率は悪いことが予測できるなど投資コストに見合うかどうかは検討が必要です。とはいえ、可能性については検討の上で、既存のパッケージソフトウェアやサービス(プレスリリースであればリリースを伝えるネットワーク会社)にAI活用についての状況を確認し、将来に備えることができます。

データ

対象となる商品・サービス・社内プロセスに関して、社内外に存在するデータを整理します。教師ありの学習をするためには、整備されたデータベースが必要になります。同時に、そのデータで機械学習をすることで、どのようなアドバンテージを生み出せるのか検討するための要素ともなります。

AI適用効果

AIを活用することでえられるベネフィットを整理します。

タレント

AIの人材は激しい争奪戦が起きている状態ですので、社内で育成するもしくはサードパーティに頼ることとなります。社内でやるべきこと、外部委託するものを切り分けて、競争上のコアになる機能にリソースをあてましょう。

インフラ・ミドルウェア

ハードウェア、ソフトウェアに加えて、どの機械学習のロジックを設定します。こちらはモデルやAPIの適合性は、ある程度知識が必要になると思います。できれば知識のある方、そうでなかったとしても想定されるデータ容量などを含めて見積もることで、最終的な投資判断を明確な基準で進めることができます。

想定効果

ROIを測るためのKGIやKPIを試算していきます。

以上のようなフレームワークで、AIを活用するにあたって必要な要素を洗い出した上で、シニアリーダーがどのようなプライオリティで進めるのか議論し合意することで、企業のAI戦略は設定できます。

まとめ

働き方改革が叫ばれる中、AIが研究所やテクノロジー企業など一部の人達向けのものではないと理解し、 効率的なビジネスの仕組みをつくることや既存商品の改善に活用していく方針を立て、定期的にレビューしていく。この戦略をもつことが、ディスラプションに対応するためには必須です。

また、実験的なテクノロジーが研究室内に出て実際にビジネスの間に使われるサイクルは、オープンイノベーションなどの推進に合わせて、日々短くなっています。最終的にはコモディティ化が避けられない中で、競争優位を活率するための戦略が今後の成長の源泉になります。

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