GartnerのCool Vendors 2018から技術トレンドを知る

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大手IT調査会社のガートナーが公表しているCool Vendorsというランキングがあります。人工知能(AI)、クラウドコンピューティングなどテーマごとに優れた技術を持った会社を紹介しています。

巨大に成長するベンチャー企業を指してユニコーンという言葉があります。日本では最近上場したメルカリなどがユニコーンと呼ばれていましたが、存在しない想像上の動物に比喩するのがあまり好きではなく。よりダイレクトなCool Vendorsという言葉が好きです。Service Channel Enablement、DevOps, Insurance、Cloud Security、CRM sales, AI Core, Consumer Mobile Application、AI across supply chain、AI computer visionなど多くの部門があります。

スペシャルレポートは公開されているも、非公開のものがありますが、Cool Vendorsはガートナーの顧客向けに提供されています。ただ、ランクインした会社は「ランクインしました!」とプレスリリースを打っていますし、選ばれた企業名の一部はレポート販売ページの紹介されているので、ピックアップしながらどんな会社なのか紹介してみます。

 

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AI部門が面白い理由

AIそのものはデータを分析・解釈する仕組みでしかなく、AIが自動車の運行、医療診断からマーケティングまで広い用途にアプリケーションとして組み込まれてマーケットに提供されています。AIを起点にすることで、広くテクノロジーが起こすイノベーションを俯瞰できます。

さらに、自動運転のように新しい市場・価値をつくるだけではなく、マーケティングの自動化を推進するなど既存のサービスに組み込まれることで、効率的・効果的になるなど大きな変化を起こすため、現在のシステム・プロセス・サービスなどが変わっていく可能性があります。

ガートナーはAI関連だけでも複数の部門に分けて評価していることもあり、AIの幅広い応用領域をカバーしています。それぞれの分野でどの程度AIが活用されるのか予測・評価も記載されており、カテゴリーの状況とCoolな企業が理解できる情報源です。

例えば、2020年には企業が集積する静止画・動画の99%は人間ではなくAIにより分析・解析され、そのうち30%はディープラーニングによりより深いインサイトを分析する。個人レベルでは、50%を超える個人の持つ動画関連ガジェットはAIによる分析・解析機能を持ち、ボイスコントロールでAIと会話できるデバイスを保持する生活者が現在の160万人から500万人以上に拡大するなどと領域別にどの程度のインパクトが起きるのか定量化されています。

 

Cool Vendors 2018に選ばれた企業

ClearMetal

clearmetalサンフランシスコベースのAIを利用して物流・サプライチェーンを最適化するソフトウェアを開発・提供しているスタートアップです。2017年にはGoogle創業者のエリック・シュミットのファンドから10億円のシリーズA調達を成功させ、クライアントにはジョージ・アパシフィック(アメリカ最大級の製紙業、トイレットペーパーで有名)など著名企業が利用しています。

多くの企業が未だに物流システムをエクセルやレガシーのシステムを利用しているのに対して、ClearMetalはSaaS(クラウド上で提供されるソフトウェア)+AIを利用して、複数のフォーマットに渡る台帳、納品書や発送指示書をひとつのデータに整理して、見える化をすすめる仕組みです。さらにAIは発送状況から在庫を予想して在庫切れを防止するように監視するとともに、もし緊急の在庫対応が必要だとしても、海外のベンダーから空路・海路など複数のロジスティクスの中からどのルートでどの程度の量を発送するのが効率的なのか提案してくれる仕組みも持っています。

物流というB2B屈指の大きなマーケットを対象としているため、スケールを拡大することが期待できる会社です。

 

Malong Technologies

malong中国深センを本拠とするMalong Technologiesは、AIに必要な学習を異常値などノイズが多いデータでも実行可能にするという技術を提供しています。AIの学習方法に教師あり学習という方法があり、データとその解釈を正解として教師が提示、AIはそのデータをもとに他のデータの場合の判断や正しい解釈を学んでいく方法です。

教師となるデータは、高いクオリティの画像や動画で、判断基準が提示されているなど、人間が労力をかけて用意しなければ行けない部分です。すでに写真アプリ、ファッション提案アプリなどの画像解析エンジンとしてMalongが組み込まれているそうです。

教師となるデータの重要性は、世界中で起きている自動運転の開発競争はクオリティの高い教師データを用意することが大きな割合を占めているとのことです。毎日変わる天気、道路の広さ・狭さ、歩行者や走行量の違い、時間帯によって違う太陽光などの教師データなしには、様々な場面で正しい判断を下せるようにAIを教育することができません。

Malongの低クオリティのデータでも教師として機能するエンジンは、データを用意する工数を減らすだけでなく、期間の短縮、適用できるデータ範囲の拡大など広い可能性を持っています。

 

Zugata

Zugata2014年に米国パロアルトで起業したZugataは、AIを利用した従業員のパフォーマンス評価システムです。日本でも新卒の評価にAIを利用するとニュースになりましたが、Zugataが対象とするのは昇給・昇進評価です。

現在、多くの企業では人事部が職種・職位別に期待される能力を設定し、レポートライン上の上司がそのレベルに達しているのか評価をするという仕組みです。期待される能力といっても定量的に評価できるものばかりではないので、結果的に人間関係の要素が強く入ってしまい、その職位にあっていないマネージャーを量産する原因にもなっています。その中で、Zugataは設定された能力があるのか上司や同僚の評価、仕事の成果物、メール、コラボレーションツールなどから自動的に収集して客観的な評価を出すという仕組みを提供しています。

人事関連の領域はPeople Softを代表として、Glint、Impriseなど多くの企業がサービスを提供していますが、多くの場合360度の評価の仕組みを上司に提供するのみで、より深いデータ収集までは行っていません。最終的には上司が判断するとしても、データをもとに昇進できるだけの能力に達しているのか、強み・弱みを客観的にデータとして提示してくれるという仕組みは注目を集めています。

優れた機能を提供しているので、PeopleやOracleなど大手ソフトウェアに買収されそうな企業ですね。

 

 

 

まとめ

紹介した会社はごく一部で100近い会社がそれぞれの部門で選定されて、各企業のより詳細な情報、強み弱み、ビジネスの機会などがガートナーのCool Vendorsには整理されています。

ガートナーでは、今後のスペシャルレポートの発表予定を公開しています。今後、今年のHype Cycle2018が8月10日、Deep Learning and Use caseが10月5日と興味深いレポートが予定されています。テクノロジーが進化するタイミングやアダプテーションが進む時のレポートは興味深いです。

https://www.gartner.com/imagesrv/pdf/special-report-calendar-2018.pdf