新興国株式インデックスファンドの投資判断

投資・資産形成

新興国株式は他のクラスに比べて高リスク高リターンとなり、日本や先進国のファンドよりも高い信託報酬ということもあり大きな投資をすることは躊躇われます。

ただし、10年、20年という長期投資をすることを前提にすれば値段の変動が激しくても成長を期待できる新興国ファンドに投資することもありということで、5−10%を投資しています。一方で世界経済全体の中で中国の急激な成長もあり新興国はGDPシェアで4割を超えて投資対象として無視できない状態です。

 

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取り組みやすくなった新興国株式

新興国株式のインデックスファンドは、確定拠出年金向けのファンドでも0.6%台、一般向けは0.8−1%の信託報酬と他のアセットクラスに比べて長期投資として取り組みにくい状況でした。僕の場合は新興国の成長を享受するためある程度購入しては1−2年で売る、を繰り返して、ここ数年は先進国の経済が順調だったため新興国クラスは保有していませんでした。

この状況が2017年から大きく変わり、現在モーニングスターで新興国株式として該当する131ファンドの中で、信託報酬0.3%を切るファンドが6つも設定されており、現時点で最も安価な楽天・新興国株式の信託報酬は0.13%と常識を覆す安さとなっています。ノーロード、無配当、低信託報酬の3つが揃ったのであれば、パッシブ投資ができる状態です。

 

新興国株式クラスへの投資検討

直近のパフォーマンスとアウトルック

2018年は全体的にインデックスが下落したように感じますが、先進国と新興国の株式の基準価格を代表的なeMAXIS Slimシリーズで比較してみると、新興国は上半期大きく下落して回復せず10%程度下落しています。

graph

新興国株式はFTSEかMSCIのエマージング・ マーケット・インデックス大型・中型株式に連動しているものがほとんどで、対象国は中国、韓国、香港、台湾、インド、ブラジルなど。世界全体の株式指数はほぼフラットだったのに対して、MSCI新興国株式指数は年初来8%の下落、新興国株式に大きな影響を与える米国金利は順調に上昇しておりアルゼンチンやベネズエラが通貨安、金利上昇と不安定に。そして、ファンドのポートフォリオの10%程度を占める中国は、アメリカとの通称紛争激化、中国元安という為替戦争。新興国は、株式・債権・通過のトリプル安と先行きが不透明な状態が今後も続きます。

今後のアウトルックについては、識者のポジティブによって違います。原油価格が上がっている中でドル高が一巡すれば新興国が回復するという方もいれば、通称紛争が一段落しなければ新興国からの資金引き上げが続くと予想している方も多いです。共通しているのは、市場の整備、マーケットの大きさ、法整備が進んだことで、過去の金融危機のような自体にはならないだろうと予測されています。未来はわかりませんが、いずれにしても、2018年中は楽観視できない状態がつづくという意見が多いようです。

現時点でアセット比率がゼロなので、ここで長期投資を開始するのであればここでもう少し下がってくれれば悪くないタイミングで投資を開始できます(僕はドルコスト平均法も知っていますが、市場を予測したりするのも楽しいので積立もしつつ、大きな資金投入は機動的におこなっています)。

 

新興国株式ファンドの比較

モーニングスターで新興国株式クラスのファンドを手数料の安い順でリストします。信託報酬0.3%以下が6本、少し前まで最安値だった「たわらノーロード新興国株式」は0.37%となっています。ETFは野村と日興の2本がリストに入りました。

ファンド名信託報酬
(実質)
純資産
(百万)
主要投資特徴
楽天新興国株式0.13%
(n/a)
733ETF信託報酬最安ですが、主要投資先は米国上場の新興国ETF
EXE-i つみたて新興国株式0.19%
(n/a)
613ETF楽天新興国株式のSBIバージョン、仕組みは同じ
ニッセイ 新興国株式0.20%
(n/a)
432株式MSCIをベンチマークとする実質信託報酬最安値第1位のファンド
eMAXIS Slim新興国株式0.21%
(0.38%)
7286株式MSCIをベンチマークとする実質信託報酬第2位
野村新興国株式ETF0.21%124株式東証に上場しているETF
日興上場MSCIエマージング0.27%6842株式F登場に上場しているETF
たわらノーロード 新興国株式0.37%
(0.59%)
4563株式元最安値で長期運用してきた実績のある新興国株式ファンド

たわらノーロード新興国株式は、ノーロード新興国株式の投信としてはMSCIエマージングマーケットの配当込みをベンチマークとするファンド。2016年に設定された時の信託報酬が0.76%、2017年に0.52%、2018年に0.37%と順調に保有コスト効率を上げてきた中で、ニッセイ、eMAXISが0.2%台まで下げるなど保有コストの安いファンドが乱立している状況が新興国株式投信の変化を感じます。

各ファンドの目論見書を並べると、楽天新興国株式とEXE-iつみたて新興国株式は投資先が米国投資信託証券とあり、米国ETFを買い付けるファンドです。設定直後のため実質コストはまだわかりませんが、楽天証券・SBI証券が持つファンドということで販売手数料などのコストも安く抑えられるとは思いますが、海外ETFの米国課税の扱いが不透明な状況です。

ETFに投資するファンドを買うのであればドル資産のある僕の場合はドル建てで自分で買った方が手間はかかっても為替差益の処理などで自由度が増すので検討対象外となります。また、個人的には安いだけよりもしっかりポートフォリオを組んで正確にトラッキングを目指しているファンドを応援したいと思う部分もあります。

野村・日興はETFです。信託報酬が安いかわりに、再投資が自動ではないなど管理に手間のかかるというETFのメリットは投信の信託報酬が安くなったことでほとんどなくなってしまいました。

実質コストが判明しているもので比較するとeMAXIS Slim新興国株式がもっとも安くなって0.38%、実質コストは1%台になってしまっていた新興国投信がぐっと現実的な選択肢となりました。

 

購入を検討しているファンド

ニッセイ新興国株式とeMAXIS Slim新興国株式の2点が現時点では良い選択肢と言えそうです。この2つのファンドは同じインデックスをベンチマークとしていますが、ポートフォリオでの違いなどがあるのでしょうか・ニッセイの目論見書とeMAXISの運用報告書から比較してみます。

どちらも所謂ノーロードの低コスト設計になっています。eMAXISは1年経過して配当せず再投資ということで、配当を出して税金がかかるより再投資が望ましいので、インデックス投資に適した設計・運営をしています。大きな違いとしてはニッセイの運用資産が4億円程度と小さい部分です。

fund comp

投資先の国別ポートフォリオを見ると、インデックスファンドということでポートフォリオは大きくは変わりません。eMAXISの一番大きなケイマン諸島の保有株式はテンセント、アリババ、バイドゥなど中国の株式なので、ニッセイはすべて中国A株を直接買っていて30.2%、eMAXISは組み合わせで27.9%となっています。韓国はサムソン、台湾は鴻海、中国は上記の他に中国銀行、平安保険など各国を代表する企業です。新興国株式と言うとエキセントリックに感じますが、購入している企業名をみるとよく知ったニュースにも登場する企業ばかりです。

アクティブファンドと比較すると、JPモルガンのJPMアジア株アクティブ・オープンは50%が中国でポートフォリオも中国マーチャントバンク、平安保険などインデックスと大きく変わらない状態です。もう少し冒険して新興国らしい成長を求める場合には、成長株と称したファンドを購入することになります。

country portfolio

ニッセイ、eMAXISのどちらもこれまでにない低コストの新興国投資のファンドです。運用実績がまだなくトラッキング・エラーの発生率、実質コストが正確に見えないニッセイのリスクを取りたくないのであればeMAXISを購入。インデックス投資家のために最安値を基本6クラスで目指してくれているニッセイを応援したいのであればニッセイというところでしょうか。

僕は先進国でeMAXISを買っているのでシリーズで揃えて、ここから半年で基準価格が下がるようであれば参入かと思っています。また、このまま大きく新興国が値崩れする場合には、B2B系の成長株アクティブファンドを少し買ってみようかと思います。それはそれで調べるので、機会があればエントリーに追加します。