P&Gの伝説的なCEO、A・G・ラフリーの書いた1冊

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Innovation

jarmoluk / Pixabay

マーケティングの世界では元P&Gのマーケターが日系・外資系を問わず席巻しています。USJ、マクドナルド、資生堂と多くの企業のマーケティングをP&G卒業生が担っています。その中で2000年代にP&Gを2回に渡って率いたA・G・ラフリーは、彼の言説や方針がとても日本企業の価値観に近いはずなのに、日本ではそれほど著名ではないのは残念ということで紹介します。

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日本の経営者風のラフリー

A.G._Lafley_Company_Photo

A.G.Lafley

A・G・ラフリーは、 2000年から2010年まで株価が暴落していたP&Gの再生をリードし、在任中に売上を倍増させ、利益を4倍にするとともに、ファブリーズなど新商品をグローバルブランドとして確立させた近年最も成功した経営者のひとりです。彼の行動原理は、「Consumer is Boss」という言葉でよく知られています。お客様至上主義の日本式経営にとても近い考え方を持った人です。実際、彼は自らの行動で範を示すという日本人経営者が行いそうなこと、株主価値を副次的な要素とみなすという日本式経営に近い行動をとっています。

著名な経営者としてエピソードに事欠かないのですが、ラフリーは世界中の拠点を回る際にはその国の生活者を訪問することを続けていました。報酬についても、在籍時の株式価値に連動するのではなく引退後10年間かけてその時点での時価にあわせて受け取るように自身の報酬形態を変えました。この結果、周囲のエグゼクティブも生活者を実際に観察するようになり、短期的な業績や株価向上ではなく長期的な成長を志向するように変化をしていきました。

欧米企業の経営者の最大のフォーカスと言われる株主価値についても、ラフリーはP&Gの業績に派生するものとして語り、生活者から信頼を勝ち取り、強力なブランドを構築し、新商品のローンチを確実に成功させるということを目標としていました。実際、CEOへ就任後、世界中のオフィスに設置してあったP&Gの株価を表示するスクリーンを撤去しています。短期業績や株主至上に対比して語られることが多い欧米の会社が、グローバルで最大のパッケージグッズの会社が日本式経営のような考え方を指向しているということが、安直に行われる欧米批判がステレオタイプなものだと語っています。

また、彼の本を読むと、ピーター・ドラッガーへの謝辞や言及が散見されます。ドラッガーも日本人が偏愛する経営学者です。今時、欧米のビジネススクールでドラッガーを歴史以上のものとして言及することはありません。日本では、抄録版から漫画までドラッガーを紹介する本は常にビジネス書籍のオススメの本やランキング入っています。

顧客主義、長期企業価値、模範を示すなど日本人にとってとても受け入れられやすそうな名経営者にもかかわらず、日本で著名でないのは不思議です。一方で、A・G・ラフリーが世界のビジネスパーソンにもっとも注目されたのは、彼が導入したイノベーションのプログラムになります。A・G・ラフリーが著した本、インタビューや彼が登場するビジネス書籍やケースでも、継続的なイノベーションを起こす力とそれをグローバルブランドへと成長させる仕組みということをテーマにしたものが多いです。

そこで、A・G・ラフリーの著した本を紹介していきたいと思います。

ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす A.G.ライリー,ラム・チャラン

Game Changer by A.G. Lafley, Ram Charan

game-changeer

イノベーションということを議論すると、とてつもなく新規性のある発明や商品開発ということを思い浮かべる人が多いですが、イノベーションは既存のあるものの組み合わせや仕組みによって新たな価値を生み出す場合の方が多いです。したがって、ライリーの導入したイノベーションの仕組みというのは シンプルなチームワークをベースにしたものです。ターゲットセグメントの生活者の暮らしを実際に経験し、ニーズやウォンツを引き出し、それを実現する技術を世界中から外部との協業や集合知(R&DからC&D:Connect & Developmentへ)により見つけ出し、商品を開発する。そして、マーケティングにあたっては、店頭と使用においての出会いの瞬間(First & Second Moment Of Truth)を最大活用してブランドを作り上げる。

考え方としては非常にシンプルですが、全社員が継続的に行うというのは非常に難しいと思います。多くの人が関わっていくということは、それだけプロセスが長くなりますし、プロジェクトマネージメントも困難になります。同時にイノベーションにあわせて組織体を変化させていく必要もあります。

同時に、イノベーションは常に成功するわけではありません。ただし、ライリーは成功よりも失敗の方が学びは多いと語っています。ただし、そのためには深い分析を失敗に対してしなければならないし、経営者の仕事は失敗の責任を取ることだけでなく、失敗を学びに変えカイゼンを続ける文化持った組織を作ることだと言っています。

イノベーションの書籍というと、事例や思想だけを示したものが多く、同じことを自分の会社では実施できないと思うことが多いです。その中で、イノベーションのあり方を規定し、プラクティカルに導入できるプレイブック(手法と指針)とP&Gでの事例を示してくれる稀有な本だと思います。

日本では露出が限定的なA・G・ラフリーですが、グローバルでは2000年代最高のCEOのひとりと言われていることもあり、“P&Gウェイ: 世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディングの軌跡”という本や企業の成長に関する多くのビジネス書籍で彼の足跡が取り上げられています。

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