事業計画書・事業企画書は出資や創業資金の融資を求める限られた人が書かなければいけないものから、企業内創業、企業内での新プロジェクト、新事業の提案、新商品の提案まで多くの領域で必要性が高くなりました。
ベンチャーキャピタルやエンジェルファンドから融資をもらうことを目指す場合、ボードミーティーングに提案する場合など、それぞれオーディエンスは違います。共有することは、自分が立ち上げようとしているビジネスを客観的に見直し、戦略や将来性を説明する目的を通じて、事業のサポートと資金の提供を依頼することです。
事業計画書・事業企画書を書く前に
日本で創業融資の大きな存在感をもつ日本政策金融公庫や金融機関の創業計画書は事業企画書のテンプレートとして有名ですが、いわゆる金融機関への融資審査申込書です。
なので、ビジネス戦略を明確に描き出すには少し散文的すぎるフォーマットとなっています。そこで、参考になる資料として、米国を中心に資金調達に成功したスタートアップが書いた事業企画書をまとめました。
英語の資料ですが、多くの事業企画書はビジュアルで語りかけ、シンプルな英語で書かれています。読み解くのにそれほど英語力は必要ありません。生きた事業企画書の例をまず吸収することで、先人のビジネスにかける意気込み、想いを感じることができます。
同時に、どんな内容が事業企画書にとって重要なのか3−4つの企画書を見てみるとわかると想います。シェアリングエコノミー、金融ビジネス、B2Bなどそれぞれのフィールドによってポイントも違いますので、自分の目指すビジネスに近い会社の企画書に目を通してみてください。
ビジネスプラン一覧
ロゴをクリックすると各社の事業企画書・計画書のページが表示されます。各企業のビジネスの概要、調達した金額、プレゼンテーションのスライドおよび記述されている内容のポイントを記載しています。知っている会社、気になった会社のロゴをクリックしてみてください。
参考になるプレゼン資料
事業企画書はプレゼンテーションのひとつのかたちです。アップルのスティーブ・ジョブズを筆頭に世界には多くの優れたプレゼンテーションを行っている企業があります。
それぞれ工夫が凝らされたプレゼンテーションをみることで、事業企画書記述にさいしてデータをどのように利用するのか、写真で課題を伝える方法など参考になる部分がたくさんあります。
ソーシャルメディア広告で有名な会社が定期的に発行しているソーシャルメディアのレポート | 製品の使いやすさ、デザインを行っている会社のプレゼンテーション | プロダクトデザイン、ウェブサイトなどテクノロジーとデザインを活用したコンサルティング会社 |
3Dアニメで有名なディズニーの子会社ピクサーのプレゼンテーション | オンライン・ストリーミングで映画やドラマ配信するネットフリックスのカルチャーデッキ |
感情を刺激する事業企画書の書き方
事業企画書は、シンプルでわかりやすい、実行計画・運営計画が明確、ファクトに基づいた計画、リーダーシップの存在という4点が備わっています。
シンプルでわかりやすい
社内での新規プロジェクトにしても、投資家にしても多くの案件を日々処理する立場にいる方が評価をするため、評価する人が不慣れな分野でも理解できるわかりやすい表現が求められます。
実行計画・運営計画が明確
そのビジネスをどう立ち上げて、成長させていくのか、方法、短期的ゴールおよびマイルストーンが明確にされていることで、アイディアがどうビジネス化されるのか理解できます。
ファクトに基づいた計画
ビジネスが解決する課題、そのマーケットの大きさ、初期必要なユーザー数などがファクト・数字として証明されることで、現実性を理解できます。
リーダーシップの存在
そして、プロジェクトをリードする個人もしくはチームが、正しい資質と経験を持っていることを証明します。
この4点を整理していくことで、顧客へどのような価値を提供するのか、どのようなベネフィットを提供するのか、それによって成長するビジネスの姿を伝えることができます。その結果、数字だけではなく、この事業をサポートしてみたい、面白いことが起きそうだという感情を刺激することができます。
典型的なストーリーとロジック
自分が提案するビジネスについて説明をするストーリーは典型的な項目があります。プレゼンテーションの相手やアイディアの方向性にあわせて要素を削除・追加することで事業計画書を書くことができます。
- 会社・ビジネスの名前とビジネス・ドメイン
- 事業が解決する社会的な背景・課題
- ビジネスのコンセプト
- 市場規模
- 競合他社の状況と差別化要因
- 顧客のメリット・ベネフィット
- 商品の詳細・デモンストレーション
- マーケティング・販売戦略
- 顧客から自社、協力企業間のお金の流れ(ビジネスモデル)
- リーダーシップチームの経歴
事業が解決する社会的な背景・課題
ビジネスの企画書では、自分やチームが考えついたサービス内容や製品について伝えたいとは思います。しかし、まずはビジネスの目的ではなく、ビジネスが解決する問題がどのようなもので、理想的な状態とのギャップをプレゼン相手に説明する必要があります。
事業企画書のプレゼン相手が提案するビジネスドメインの専門家であれば、課題感をすぐに共有できると思います。必ずしも相手はどの領域の専門家ではありません。まずは、ビジネスドメインとそこで発生している課題を共有しなければ、同じ前提でのビジネス提案とはなりません。
その問題がなぜ発生しており、どうしてこれまで解決されていないのか、数値的に示すことで、誰が顧客で、なにを、どのようにして、解決していくのかを示します。これによって前提を共有するとともに、提案する事業にニーズ・需要があるということを示すことができます。
その他の情報
上記の要素を1ページづつ書いたとすると10ページとなり、ビジネスのアイディアを提案する事業計画書としては充分な分量です。
ただし、投資・サポートを実際にするとなると、より詳細な情報が必要になります。例えば、売上原価、人員計画、設備投資、利益管理、資金計画、リスクと対応策などです。逆に言うと、アイディアに充分な興味を持ってもらえなければ、詳細な計画など立てても意味がありません。
事業企画書と他のプレゼンテーションの違いは、事業企画は不確実性の高い提案のためただ1人キーマンに興味を持ってもらい、口説き落とすことに集中するという点です。
すべての人が間違いなく成功すると革新するような新規事業はありません。不確実な中でリスクをとれる人が意思決定をすると、その人の意見に引きずられて、投資をしたり、サポートをしたりという状態になることが多いです。
収益モデルや資金計画から入ってしまうと、期待されているビジネスの大きさなどで評価が決まってしまいます。それよりも、キーマンにアイディアを買ってもらうことが重要です。
さらに、人員・設備や資金などはビジネスの状況によって簡単に変化します。これらの項目は、当初の計画に固執せずに環境に合わせて対応していかなければいけない個別の戦術です。
一方でビジネスの戦略は事業企画書に記載する部分になります。アイディアが魅力的で、戦略が明確であることが資金を求めるにしても、パートナーとして協業を期待するにしても重要です。
したがって、以下の項目は参考資料として付録にまとめましょう。
- 売上原価管理
- 人員計画
- 設備投資計画
- 利益管理・再投資プラン
- 資金計画(損益・キャッシュフロー)
- 事業リスクと対応法
市場規模の類推
新規事業、新商品の企画においては、まだ立ち上がっていない市場なので、市場規模を正確に算出することは困難です。調査レポートなどを購入しても、そのものズバリという数字はたいていないので、基本的な情報をもとに類推することとなります。TAM(Total Addressable Market)を利用して、製品・サービスが獲得することができる最大の利益機会を算出しましょう。
試験販売やクラウドファンドでの人気など基礎となる販売データがある場合には、そのデータを元にLTV(Life Time Value)を算出します。
リーダーシップ訴求の重要性
海外や外資系企業との取引が多い方は、企業間の取引でも担当者の経歴や専門性を評価することが多く、自分の経歴やリーダーシップのページを書くことにそれほど苦労しないと思います。
一方で、日本で普通にサラリーマンをしていると、口頭で自己紹介はしても、個人を資料として紹介することは少ないので、個人の実績を整理してプレゼンできないという方が多いです。また、実績も経験もないけど、このアイディを実現したい!という場合もあると想います。
リーダーシップチームのバックグラウンドを書く際のポイントは、嘘はやめるべきですが、経験したプロジェクトや商品・人間関係などを少しおおげさ(10を100程度まで広げる気分)で書いてやっと、経験がある人なのだなと認識してくれます。
自分が成し遂げたと思っていることの多くは、他の人にはたいした価値のないことに見えることは結構な確率であります。大げさに書くことで、価値のある経験なのだと認識してもらいましょう。