言わずと知れたシェアリングエコノミーの雄であるAirbnbが資金調達のために用意した事業計画書です。事業提案書はとてもシンプルですが、課題、解決方法、マーケットのサイズという基本をしっかりと押さえているプレゼンテーションです。ビジネスピッチのお手本と言われる内容だと思います。
Airbnb事業計画書
提案年 | 2009 |
調達額 | $600,000 |
投資家 | Sequoia Capital |
AirBnBとは
Airbnb(エアビーアンドビー)は、宿泊施設・民宿を貸し出す人・借りたい人のマッチングをするウェブ上のサービスです。2008年8月にサンフランシスコで創業され世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供しています。最初のページには、Welcomeという文字とともに、Book rooms with locals, rather than hotels(ホテルよりもローカルの部屋を予約しよう」という説明が社名の下にあります。1行だけですが、このサービスがなにをしたいのか明確に伝えることが書かれていることで、どのようなサービスでなにをしようとしているのか読み手に伝えています。
Problemスライド
AirBnBの事業計画書は、2ページ目にProblemという題名で、AirBnBが解決しようとする課題をシンプルに3つの箇条書きで整理しています。1つ目は価格、2つ目はホテルでは地元の生活・文化との関係を築けないこと、3つ目はホテル以外のローカルな宿泊施設へアクセスすることの困難さと設定されています。このまとめのすばらしいのは、価格勝負をホテルに仕掛けるということを直接書くのではなく、消費者が価格を起点に宿泊施設を選んでいるという事実を言いつつ、価格で勝負するのではなくローカル・カルチャーとの断絶が問題だと設定することで、価格での戦いではなくバリューで戦うことを伝えていることです。
ソリューション
解決方法として、こちらもシンプルにウェブサービスを作ること。Save Money、Make Money、Share Cultureという3点だけで説明しています。Save Moneyが借り手となる消費者、Make Moneyが貸し手となるホスト、Share CultureがAirBnBが借り手と貸し手をつなぐコミュニティの役割を担うこととてもシンプルに伝えています。そして、この3つのAirBnBの役割が、このあとに続くページの説明の軸となっています。
マーケットサイズ
競合のサイズやTAM(Total Addressable Market)を提示しています。このセクションでもAirBnBはシンプルで反論余地の少ない数字を並べるだけにとどめています。投資家としては、成長余地の十分あるマーケットを対象にしていることが理解されれば十分なので、複雑な計算式を提示するよりも、どの大きさのマーケットの、どの部分を目指しているのかということをシンプルに提示するこのアプローチはとてもスマートです。
プロダクト
プロダクトでは商品の機能性をシンプルに提示しています。貸し手と借り手双方にサービスを提供する機能を持つにもかかわらず、プロダクトとしては消費者が借り手としてどうサービスを利用するのかという点だけに絞ることで、サービスがどのように機能してスケールする可能性があるのか理解しやすい内容になっています。プロダクトは細かな点や競合との優位性がある部分など多くのことを語りたくなる部分ではありますが、1ページでシンプルであることを維持するスライドの作りはとても聞き手とって受け入れやすい仕組みになっています。
ビジネスモデル
ビジネスモデルの説明もシンプルに、10%のコミッションを取りますとあるだけです。ビジネスモデルという言葉はビジネスモデル特許などの影響もあり誤解のある言葉で、プロダクトの仕組み、関係者、機能など多くのことを説明するのがビジネスモデルと考えている人がいますが、ビジネスモデルは「どのようにレベニューを生み出すのか」という会計・財務の視点の言葉です。その意味で、「10%のコミッションをとります」というのは明確で必要十分なビジネスモデルの説明になっています。
アダプション・ストラテジー
このスライドの中でアダプションストラテジーというタイトルだけがわかりにくいのですが、「Go To Market」を示したものです。マーケットにチャンスがあったとしても、消費者が知らなければ利用してもらえないため、どのようにサービスを認知させるのか、初期顧客を獲得しスケールさせるのかを説明することは必要です。同時にあまりに細かな情報よりも活動内容が地に足がついて、実現可能であるということが重要です。
競合・競合優位性
シンプルな4象限と競合優位性のポイントを整理しています。この2ページはHotel.comの方がスケールメリットを享受して安価なのでは?など本当にそうなのか疑問を覚える内容になっています。ただし、最低限どのようなプレイヤーを競合と認識しているのか、自社はどう戦っていくのか書いてあれば十分と割り切って書かれているのかもしれません。
(スライドをクリックするとスライドショーが開きます)