人類の歴史・世界に大きな影響を与えた本ランキング

おすすめの本
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歴史、科学、宗教、文化など、人類の歴史や世界に影響を与えた本は、西洋文明の基盤となった聖書を筆頭に、第2次大戦でのヒトラーが書いた我が闘争など数知れずあります。大きな影響を与えた本は何十年、何百年と読み継がれたこともあり、現代を生きる私たちには読みにくいものも多いですが、知識・教養として世界に与えた本の存在を知って、1冊読んでみるのも面白いかも知れません。

人類の歴史・世界に影響を与えた本は、World Economic Forum、Guardian紙など多くの雑誌、団体、研究者が発表しています。

リストやランキングでは、論語、春秋、聖書、シェークスピア、種の起源など読みにくい、読む気にならないものも多いので、ここ50年で書かれた本に限定すると、比較的読みやすい本になると思います。

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最近50年に書かれた世界に大きな影響を与えた本

アトキンス博士のローカーボンダイエット Dr. Atkins’ New Diet Revolution

1992年に発売されたこの本は、近年、日本でも一般的になった低炭水化物ダイエットを紹介した最初の本と言われています。脂肪とカロリーが主体だった健康・ダイエットに対して、ライザップを筆頭に多くのダイエットプログラムの基盤となっている炭水化物の量を調節する仕組みを取り入れました。一方で、極度な糖質制限が健康被害を起こすなど議論にもなっています。その意味では、先進国のライフスタイルに多大な影響を与えた本と言えます。

アメリカンマインドの終焉 The closing of American Mind

アメリカの哲学者、アラン・ブルームが1987年に発表したアメリカンマインドの終焉は、保守的な思想を持つ著者が1980年代の若者の価値観について観察・理解・批判している本です。ロックを批判し、テレビを批判する一方で、知識人がポリティカル・コレクトネスに拘泥してしまう様を批判もしています。60−80年代の時代的感覚がわからないといまいち理解できないですが、左翼批判のトーンを決定づけた本としてアメリカでは位置付けられているようです。

神は妄想である The God Delusion

日本でもベストセラーとなった利己的な遺伝子の著者で、オックスフォード大学教授のリチャード・ドーキンスにより2006年に発売された本書は、その年のベストセラーとなりました。内容としては科学者のドーキンスがなぜ神が信じられているのか?宗教が与える社会への害など元に、アメリカのキリスト教福音主義やイスラム原理主義を批判している。

ダビンチ・コード The Da Vinci Code

神は妄想であるが科学的に宗教、特に3大宗教を否定しているのに対して、エンターテーメントの世界からキリストは神ではなく、たんなる陰謀・権力闘争でしかないということを示した本として大きな反響を読んだ本です。エンターテーメントとして一流なこともあり、神性の否定について日本で大きな議論になることはありませんでしたが、カソリックの本山たるバチカンはダビンチコードや天使と悪魔に対して怒りを示しています。

ダーウィンのブラックボックス Darwin’s Black Box

神は妄想である、ダビンチ・コードが宗教へ疑問符を明確に示した本だとすると、1998年にマイケル・ベーエが上梓したダーウィンのブラックボックスは神の存在を科学的に示そうというインテリジェント・デザイン運動を主導した本です。

インテリジェント・デザインは進化論ではすべてを説明できないほど複雑なことが自然界では起こっており、淘汰による進化ではなく偉大な知性が世界を構想し、意図・目的をもって世界がなりたっていることを科学的に認めようという運動です。聖書の考え方から宗教的・神秘的な表現をなくした結果、多くの人に受け入れやすくなるとともに、カルトや反社会的イデオロギーに利用されることとなりました。疑似科学・創造科学など、科学ではないものを科学的に咀嚼・理解することアプローチはその後も多くの領域で行われることとなりますが、その代名詞と言えるものです。

悪魔の詩 The Satanic Verses

悪魔の詩は1988年に発売されたイギリスの作家サルマン・ラシュディが、イスラム教の預言者ムハンマドの生涯をテーマにした小説です。アメリカでのテロ以降続く激しい西洋とイスラムの萌芽のひとつとして、イランのホメイニ師が著者のラシュディに死刑宣告をして懸賞金をかけるとともに、各国語の翻訳者や出版関係者が暗殺が起き、日本では本書を翻訳した筑波大学助教授の五十嵐一さんが1991年に刺殺され、トルコの翻訳者も殺害される、さらに焚書・発禁を求めるでもが相次ぐなど大きな影響を残しました。

小説として見たときにそれほど面白いか?と言われると、疑問符です。ラシュディ作品としては「真夜中の子供達」をおすすめします。インドに興味があるかたや、テックセクターでは働いていてインド人と関わることが多い人はインドの近代史も把握できるのでおすすめです。

沈黙の春 Silent Spring

1962年に発売された本書では、農薬や化学物質が自然に与える影響を、当時あまり知られていなかった農薬の残留や生体濃縮がもたらす生態系への影響を紹介し、公害や環境保護に大きな影響を与えました。警句と事例を織り交ぜて紹介する文章なので、あまり科学的素養がなくても理解できる文章です。中国発のエスエフ小説「三体」でもモチーフとして使われたこともあり、再度注目が集まっているようです。

生命の多様性 Biological Diversity

2019年現在は一般的な概念となり国連環境開発会議を通じてCBDやCOPと言われる生物の多様性に関する条約が結ばれた生物多様性は、1992年にエドワード・オズボーン・ウィルソンが生物多様性を提唱し、地球上の3000万種を超えるという生物種が互いに影響を与えながら生命活動を維持していること、それをシステムとして維持しようという考え方です。

E.O.ウィルソンは1975年に社会生物学という本を出版し、これまで個別のテーマであった集団遺伝、動物行動などの分野を統合する社会生物学を成立させ、それ以降生物多様性、自然科学と人文科学の統合など重要なテーマを継続して紹介し続けています。沈黙の春が広く多くの人に影響を与えたの対して、彼の本はアカデミックな側面から裏付け・問題提起を続けたことで大きな影響を与えています。ただ、彼の社会生物学、社会生物学、コンシリエンスなど専門用語が容赦なく使われるアカデミックな本なので気軽に読める本ではないです。

崩れゆく絆 Things Fall Apart

ナイジェリア人の小説家、崩れゆく絆は世界で1千万部以上売れ50以上の言語に翻訳された1950年代以降もっとも読まれたアフリカ文学の父と呼ばれる。植民地主義、人種差別、キリスト教主義とアフリカの文化などを題材にしている。崩れゆく絆は、古くからの習慣が残る地方で成功を納めた主人公が、欧州の植民地支配と伝統的な文化の衝突により生活・価値観が変わっていく様を描いています。未だ欧州の植民地が多かったアフリカ諸国の独立機運に合わせて崩れゆく絆は高い評価を獲得しました。

7つの習慣 Seven Habits of Highly Successful People

「金持ち父さん 貧乏父さん」と並んで3000万部以上を世界で売り上げた、最も売れたビジネス書が7つの習慣です。成功するためには小手先のコミュニケーションスキルではなく人間としての品格が必要で、そのための考え方、哲学や習慣をまとめたものです。

具体的には、1.主体的である 2.終わりを思い描くことから始める 3.最優先事項を優先する 4.Win-Winを考える 5.まず理解に徹し、そして理解される 6.シナジーを創り出す 7.刃を研ぐという内容で、その後の自己啓発本やビジネス書に大きな影響を与えてるだけでなく、社会問題・社会位変革が共通課題だった60年代から、個人主義・個人の成功に集中する時代を象徴しています。一方で2010年代になってから社会主義、ソーシャルアントレプレナー、社会改革などが再度共通テーマとなっていること考えるとひとつの時代を象徴した本といえます。

美徳なき時代 After Virtue

ノートルダム大学教授のアラスデア・マッキンタイアが1981年に出版した美徳なき時代は、モラルに関する哲学的な考えについて20世紀でもっとも高く評価されている書籍と言われています。理解が正しければ、マッキンタイアはヨーロッパの暗黒時代を克服した啓蒙主義が個人主義・自由主義をもたらした結果として、合理的なゴール・目的だけを指標とした道徳感が個人の好みや主義主張だけで善悪が決定されるようになり、地域のコミュニティや正しい道徳を破壊したと主張する本なのですが、哲学の本らしくとにかく読みにくいです。

コミュニタリアンという言葉を聞いたことがない私などは、本を読むよりまずマッキンタイアの主張に関する記事などを読んで事前知識を備えないといけないという系統の本ですが、この本で主張された「伝統への回帰」がアメリカの対テロ戦争を主導した新保守主義(ネオコン)の源流になったという21世紀の世界に非常に大きな影響を与えた本となります。

肩をすくめるアトラス Atlas Shrugged

宗教、伝統的な価値観の尊重に大きな影響を与えたアメリカン・マインドの終焉に対して、対局となる自由主義(リバタリアン)に大きな影響を与えた本です。経済的自由を求めて市場を重視し、政府の介入を否定、社会的自由のために人種やマイノリティの差別に反対するという自由主義の思想は、この小説が出版された1957年以前にもありましたが、小説という体裁のために広く読まれたこともあり広く継続的に影響を与え続けるとともに、保守派から強い批難をされています。結果、アメリカ人が聖書の次に影響を受けた本と言われるほどの影響を与えたと評価されています。

古い本ですが難しい本ではなく、ディストピアといわれる未来の管理社会を描いた小説です。未来のアメリカで、成功した起業家やビジネスマンを攻撃・規制する様々な法律によって、優れた事業家たちが国を捨てた結果、社会に不可欠な諸産業が崩壊していくというストーリーです。その内容が自由な産業を作り出すシリコンバレーの文化や企業哲学を擁護することになったと言われています。

毛沢東語録 The little red book

中国語の題名は毛主席語録、第2次大戦後の内戦をおさめて中華人民共和国を建国し共産党主席として中国と共産主義を率いた毛沢東の著作から引用された本です。自由主義国でも学生運動へ大きな影響を与え、特にフランスではゴダールの映画「中国女」の影響もあり1967年に毛沢東語録が売り切れるといったブームの様相をもたらした。

中国では1945年以降共産党の行動指針として扱われ、1960年代後半の文化大革命においては、人民日報には毎日毛語録からの抜粋が掲載された。紅衛兵の行った殺戮・弾圧において「革命は暴動である」「奮闘すれば犠牲者がでるし、人が死ぬのはよくあることだ」という暴動とその犠牲としての人の死を肯定する思想が数千万とも言われる死者と、取り返しのつかない古代の文物の破壊を招いた。カンボジアでは毛沢東思想を抱いたクメール・ルージュ、ポル・ポト派が大虐殺を行うなど、アジアでも武装闘争や虐殺といった多くの血を流す結果となった。

二重らせん The Double Helix

バイオ医薬、バイオを活用した農業、DNA検査・診断によるリスク検査やルーツの把握、DNA検査によるルーツ探索、DNAシーケンサーと多くの領域でDNAやそれに関わる技術が活用されています。そのDNAの構造を最初に解き明かたチームの一人として1962年にノーベル化学賞を受賞したジェームズ・ワトソンが、二重螺旋の構造を解き明かすまでの軌跡を苦労や人との出会いなどをまとめて1966年に発表したのが二重らせんです。

DNAやその構造の説明ではなく、助成金をとるために悪戦苦闘したりと発見に至る過程をまとめた本のため、科学的な素養は必要ないですし、一般的にも読みやすい本ということで広くDNAや二重らせん構造を広げた本として知られています。ジェームズ・ワトソンは差別的な発言で研究所から追放されるなど毀誉褒貶のある方です、そんな口の悪い人なので面白い本ということもあります。TEDトークでもジョーク満載で話をしているので本を読む前に聞いてみると面白いです。

世界を変えた本、まとめた書籍・記事

最近50年に限定した本でも現代人には読みにくいものがだいぶ混ざるのですが、時期を限定しないと世界に影響を与えたとして今更読む気にならない本ばかりです。とはいえ、ランキングを見てみると、誰がどういう本を選んでいるのかという視点で楽しむことができます。

世界を変えた10冊の本

元NHKのジャーナリスト、池上彰が世界を変えた10冊の本を紹介するという本です。登場する本は、聖書、コーラン、資本主義と自由、資本論、雇用、利子および貨幣の一般論、資本主義と自由、種の起源、プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神、イスラーム原理主義の道しるべ、アンネの日記、沈黙の春という10冊になります。

聖書、アンネの日記、沈黙の春はかろうじて読んでいるものの、ほとんど読んだことがない本ばかりですし、今後も資本論や種の起源など読む気にならないです。それよりも、これらの本がどのような影響を世界に与えて、どのように変化していったのかわかりやすく解説してくれた本書を読んだ方が、読んだ気になります。卑近な例示で解説する手法はほんとうにわかりやすい。

世界を変えた100の本の歴史図鑑: 古代エジプトのパピルスから電子書籍まで

洋の東西を問わず本の歴史を100冊の本を通じて紹介する本というよりも図鑑です。それぞれの本が写真で紹介されて、解説がのっているという豪華な本で、子供の頃に存在していたら手元に置いておきたかった。洞窟の絵、ギルガメッシュ叙事詩から始まり、文学・科学・医学・神話から漫画まで網羅しています。開いて眺めているだけでも楽しくなる本。

World Economic Forum: The 20 most influential books in history

スイス・ダボスで開催される年次総会が有名な世界経済フォーラムが記事として取り上げているのは、2015年のアカデミック・ブックウィークに際して、もっとも世界に影響を与えた本を投票した結果をまとめたものです。歴史・社会の教科書に出てくる錚々たる書籍が並んでいますが、1984年、沈黙の春以外は読んだことありません。労働者階級、フェミニズム、性的マイノリティなど権利に関する本が多く選ばれているようです。

  • ダーウィン「種の起源」
  • 毛沢東の「共産党宣言」
  • シェークスピア全集
  • プラトン「国家」
  • カント「純粋理性批判」
  • ウルストンクラフト「女性権利の擁護」
  • アダム・スミス「国富論」
  • サイード「オリエンタリズム」
  • オーウェル「1984年」
  • アインシュタイン「相対論の意味」
  • ボーヴァワール「第2の性」
  • トマス・ペイン「人間の権利」
  • ホーキング、宇宙を語る
  • 沈黙の春
  • ジャーメイン・グリア「去勢された女」
  • マキャベリ「君主論」
  • ジョン・バージャー「ものの見方」
  • エドワード・トムスン「イングランド労働階級の形成」
  • ホガート「識字の用途」
  • デズモンド・モリス「裸のサル」
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論語 The Analects by Confucius

中国の存在が拡大する中で中国人・中国の価値観を理解することの重要性が高くなり世界を変えた本に選出されることが増えています。2400年以上前に書かれた論語は中国の価値観や文化を構成する大きな要素となっています。コーランや聖書など経典と違い、日々の生活での規律や哲学で構成されており、家族への忠誠、モラル、社会におけるヒエラルキー、政治などをカバーしています。

聖書に「汝の敵を愛し、汝を迫害する者に祈りを」という一説がありますが、論語では「私心の無い、仁の心をもった者だけが純粋に人を大事にする事ができ、また純粋に人を憎む事ができる」と書かれており、悪意の存在が肯定されているといったように、聖書と論語を読み比べていくと西洋文化と東洋文化の違いのルートがほんのりとわかってくるように気になれます。