外資系や日系グローバル企業のポジションへ応募する際に必要となる英文履歴書は、日本語の履歴書と構成が大きく違い戸惑う方も多くいました。
ただし、10−20年前に比べて転職が一般的になり、外資系への就職する機会が増えてきたこともあり、英文履歴書・CV・レジュメと検索すれば多くのテンプレートが紹介されています。
テンプレートどおりに英文履歴書を作成して埋めるだけであればそれほど難しくありません。しかし、フォーマットだけでいちばん重要な職務経歴をどう表現するべきか説明している情報が少ないです。そこで、どのように魅力的な職務経歴を記述するのか説明します。
英文履歴書の構成要素とポイント
英文履歴書の形式
英文履歴書はフォーマットは定形のものはなく自由ですが、時系列(Chronological Resume)、スキル別・職務別(Functional Resume)、複合(Combination)の3種類の形式があります。
基本的には複合形式(Combination)という構成が使われています。
プログラマー、クリエーティブなど専門職でスキルが採用判断において重要な場合、スキル別・職務別を使って、自分の能力と実績を主体にします。
英文履歴書と検索すると、カバーレターと職務経歴書を用意するようにアドバイスしている場合がありますが、メールやウェブサイト、ヘッドハンター経由での送付が多くなったので、カバーレターは必要ありません。複合形式の英文履歴書のみ用意しましょう。
英文履歴書テンプレート
Microsoft Wordのテンプレート集には履歴書だけでも多くのテンプレートが登録されています。Resume Simple, Resume Designなどデザインの違いだけでなく、For recent graduateという大学卒業予定者向けのテンプレート、Entryレベル用など職種・レベルに応じたテンプレートが登録されています。
構成要素
ResumeがCV、Work ExperienceがExperienceだけになるなど、テンプレートによって項目の名前は違いますが記載する要素は共通です。
Personal Information (個人情報) | 用紙の最上段にフルネームで名前、2行目以降に住所、電話番号、メールアドレスを記載します。日本で外資系に提出する場合は、年齢、性別なども記載しましょう。 海外、特にアメリカでは仕事に関係のない個人情報は記載しませんので、性別、年齢、人種、国籍、出生地、配偶者有無は記載しません。 |
Personal Accomplishment Carrer Objective (サマリー) | 自分のキャリア・能力などを箇条書きで6−8行程度でまとめます。この部分は応募する職種や期待される能力にあわせることで、募集職種とのフィットがあることを訴求することができます。募集要項にあわせて都度書き直しましょう。 カバーレターを書くことをすすめるサイトがありますが、僕は書いたことがありません。送付するときはメールに書きますので不要です。そのかわりカバーレターの要素をよりコンパクトにしてサマリーに記述しています。 |
Work Experience (職務経歴) | 最新のものから順番に職務経歴を記載します。日本語と順番も違いますしやめた理由などを記述する必要もありません。 自分のキャリアをアピールするパートですので、募集されているポジションにあった経歴・経験をゆうしていることを具体的に記述します。 |
Education (教育) | 大学以上の教育(学士、修士、博士や短期大学研修など)、専門資格をリストします。大学名、学部、在籍期間のみ記載すれば充分です。 大学で関連した学位を持っていることと、もしくはプラスと書いてある場合は、どう関連しているのか記述しても良いです。 |
Skills | スキルの部分は専門家として証明できるスキルと語学能力を記載します。言語はFluent, Businessなどレベル感でも書いてもいいですし、TOEICの点数などでもかまいません。 この部分にワイン、テニスなど趣味を書く方がいますが、プロフェッショナルとしてふさわしくなく、子供っぽいと評価されます。英文履歴書はプロフェッショナルとしての能力を伝える資料です。 |
英文履歴書記述時に意識するべき3つのポイント
英文履歴書を記述する際に意識するべき5つのポイントがあります。
読みやすい体裁を整える
大事なポイントをシンプルに文章の最初に記載して、細かな説明や無駄な情報は省くことで読み手にわかりやすい履歴書になります。パっと見たときに自分がもっとも伝えたい部分が目にとびこむのが理想的です。
- フォントを統一する:よほどデザインに興味・関心がある人以外は、Calibriで統一しましょう。見た目よりも読みやすさ優先です。
- 日付のフォーマットを統一する:9999/99/99や9999.Aug.10など、記述する場所によって違うフォーマットがないようにしましょう。
- 強調するポイントは太文字、イタリックで文章の最初に入れる:統一されていないとコピペしたのかな?と疑問を持たれます。
訴求する・アピールする
謙虚であることは美徳ですが、英文履歴書は自分の能力をアピールすための資料です。多くの履歴書の中で選ばれるためには過剰に書いていると思うぐらいがちょうどいいです。積極的にアピールするとなると、Great, Veryなどを過剰に利用する方がいますが、このようなキーワードは邪魔です。装飾ではなく、スキル(英語がすこししゃべれるのであれば、ビジネスレベルと書く)でアピールしましょう。
すべてを記述しない
英文履歴書の目的は評価者に会ってみたい、面接を設定しようと思わせることです。そのためには、すべてを書く必要はありません。募集されているポジションに関連した経験があり、リーダーをしていたとあれば、より具体的な内容を聞きたくなります。チラ見せが基本です。
また、すべての要素を同じ重みで書くのも避けるべきです。読みやすい体裁と同じようにアピールしたい部分、募集した職種に関連する経歴に、内容についてもボリュームでも重みをおきます。逆に、募集職種に関係のない内容で、自分のアピールにつながらない場合は最低限の記述にとどめます。
たとえば、大学卒業後、1年ほどはじめての配属部署として情報システム部門からキャリアをスタートして、その後マーケティング系のキャリアを築いた人の場合です。マーケティングにおいてデータベースやデジタルの知識の重要性は高まっていますので、基礎的な情報だったとしてもプラスに働くので、経験があることを少し記述します。
一方で、大学卒業後、数年はマーケティングを担当し、その後人事系のキャリアを築いている方にとっては、前の例よりも経験した年数は多いですが、人事系のポジションでマーケティングの知見は無駄にはなりませんが、大きな加点をもらえる要素ではありません。そうであれば、より強みを強調するためマーケティングの部分は記述しません。このように記述する情報に強弱をつけることで、より強いアピールを行うことができます。
履歴書を審査するポイントは職務経歴
この時のポイントとしては、採用するポジションへマッチした経歴の有無、ダイレクトにマッチしない場合は関連する経験の有無、タイトルと経験した業務内容の3点になります。ここで、もう少し話を聞いてみたいなと採用担当者が感じるとインタビューへすすめます。
職務経歴の要素
Work Experienceのセクションでは、会社名、勤続年月、部署名・役職名を記載して、簡潔に業務内容を説明するという5つの要素を、最新の職歴から順番に記述していきます。業務内容は4−5行程度のボリュームになります。簡潔にとはいっても、なにをしてきたのかわからず社名だけで採用することはないので、なにをしてきたのか理解するためには4−5行程度必要です。
基本的には直近2社程度しか見られないので、企業数が多い場合には直近2−3社は業務内容を2−4行程度で細かく記述し、残りの企業は会社名・勤続年月・部署・役職だけでもかまいません。
経験した会社が1社しかない場合には、経験した部署や役職を順番に記述することで情報量を増やすことをおすすめします。社会人経験3〜5年目程度ではじめての転職活用という方で、最初の会社と大学時代のアルバイトやインターンを記述する方がいますが、職務経歴として参考にしません。
アルバイトやインターンをプロフェッショナルな経歴と同列に扱った履歴書を送付された時点で、仕事への理解が足りていない可能性があるので、高い評価はつけません。それよりも、1社の中で経験した複数の部署、業務、担当などを記述することをおすすめします。
職務経歴のわかりやすさ
わかりやすい会社名によるシグナル
世の中にはキャリアビルダーと呼ばれる企業があります。業界内である領域の人材育成に定評のある企業などで、社名とポジションだけで最低限の知識と経験を持っていると判断することができる会社をキャリア・ビルダーと言います。
たとえば、外資系コンサルティングファームの経験があれば、一定の英語力、ビジネスのプランニングや経営やITなど担当領域での最低限の教育を受けていると判断できます。P&Gのマーケティングとなると、ブランディング・マーケティング・広告で教育と経験を持っていると判断できます。
実際には、個人個人によって経験や能力は違いますし、聞いたことのない会社でも大きな裁量を持ってマーケティングをした経験でP&Gのマーケターの平均よりも優れた方はいます。
ただし、履歴書を処理していく際には、一定のクオリティが担保されていることが予想できるキャリアビルダー1社で2年程度でも経験があることは、わかりやすい能力証明となります。
わかりやすい部署・役職によるシグナル
部署・役職は責任範囲を理解するための重要なシグナルです。同時に、会社によって担当領域が明確でない部署名だったり、異常に長い横文字の役職だったりと、一見しただけではなにをするところなのかわからないという名前も多くあります。
履歴書として重要なのは、能力・経験の証明として評価者にとってわかりやすさです。ユニークな企業の特色ある役職名よりも、英語で担当した業務において一般的な名前を設定した方が効果的です。どれほどユニークな部署名・役職名だったとしても、営業で2−3名のグループのリーダーであれば、Sales Manager, Sales Divisionと書かれた方がなにをやっているか想像できます。
本当のことを書くよりも、相手に伝わるように書くことが重要で、部署名・役職名も経歴を伝えるシグナルです。相手にとってわかりやすい言葉を使うことをおすすめします。
業務内容記述のポイント
STARシステムを使う
業務内容を簡潔に書くことをお願いすると、以下のような文章を書く方が多いです。
関東地区の大規模顧客に対応した営業部門において、A社担当のチーム5名のリーダーに従事
評価者からすると社名・部署・役職で理解できる情報であって、評価する情報となりません。
そこで、STARシステム、SOARAシステムと言われる仕組みに沿って記述することをおすすめします。このシステムは、面接で対象者の行動と能力を評価する方法として開発されたものなので、面接の段階でも活用できます。
STARは(Situation, Task, Action, Result)、SOARAは(Situation, Objective, Action, Result, Aftermath)とほぼ同じ考え方です。
日々担当する業務の概要を書くのではなく、その中で発生した事象に自分がどう取り組み、結果を出したのかを記述していきます。たとえば、以下のように具体的に担当業務で起きた事象を記述します。
2018年A社担当チームをリードする立場で、商品の不具合による顧客工場の操業停止を引き起こす可能性があった。問題点と影響範囲の把握、不具合のない在庫を確認、自社代替品、他社代替品についての確認をチームに指示するとともに、対応策別のシナリオ分析を実施。他社代替品の手配による操業停止の回避と顧客を交えての再発防止プロジェクトにより長期的な利益確保を実現した。
このような事故は規模の大小はあっても日々発生していることで、大きな成功でも実績でもなく、詳細に記述するようなことではないと言う方もいます。しかし、対処するべき課題にどう取り組んだのかわかりますし、どのように状況を分析し、結果どうなったのか理解できます。
評価者は、充分な分析をせずに動き出す人なのか?人をうまく使いこなせているのか?など面談をして詳しい話を聞いてみたいという思いが生まれます。
STARシステムを利用することで、より具体的に自分が与えた会社へのインパクトを記述できます。
面談が設定されたら、面接前にSOARAの最後のAftermath(この事象から学んだこと)を整理しておきましょう。Aftermathを加えることで、学び成長することができる人という印象を与えることができます。
数値化する
シチュエーションや達成結果を具体的に伝えるために、数値化できるところは数値化しましょう。たとえば、2018年A社担当チームをリードする立場という情報よりも、2018年A社担当5名のチームをリードする立場と数値を加えると5名を管理した経験があるという情報になります。
売上高や取扱高など社外秘の数字については、前年比を利用するなど公開可能な情報にすることができます。
年次評価を利用する
それでも日本のサラリーマンは共同作業なのでそれほどかけることがない、思いつかないという方は、多くの企業が現在採用している目標評価制度の内容を参考にしてください。
部門やチームのゴールと目標数値をもとに、チームとして実施したことを箇条書きで書き出して、その中でも自分が主体的に実施したことをもとにSTARシステムを利用して記述しましょう。
加えて、それが目標管理のゴールに設定されていて、それを達成したということを書くことで、結果にコミットできる人材という印象を与えられます。
毎日多くの履歴書を処理する評価者は、Result-driven、Strategic Thinker、Self-motivatedなどの履歴書定型文を何度も目にします。
Result drivenとだけ書くよりも、私はResult Drivenだと前段で書いた上で、目標を達成したストーリーを業務内容の部分に書きましょう。自分の特性とそれに合った結果というセットは効果的です。
Job descriptionで使われている単語を利用する
ここまでの3つは基本となる内容を用意するための考え方です。企業やリクルーターに送る際には、外資系・海外のポジションであればJob descriptionが用意されていると思います。
Job descriptionはそのポジションに求める能力、経験、業務内容などを説明したものです。
業務経歴を説明する文章とJob descriptionを見比べて、Job descriptionで使われている固有名詞や単語に置き換えられる場合は置き換えましょう。これにより、企業の求める理想の人材像に近いということを明示することができます。
ただし、あまりに多くキーワードが頻出したり、Job descriptionで期待された経験そっくりの内容が職務経歴に書かれている場合は、嘘・粉飾・ドレッシングの可能性が高いと判断されることがあります。キーとなる単語を数回利用する程度にしましょう。
英文法のレビューをする
タイプミスは情報の信憑性を大きく毀損します。かならず内容を見直すとともに、Wordの単語チェックだけではなく、Nativeが利用するツールを利用して文法が正確なのかチェックしましょう。レビューする際のポイントとツールについては以下の2つの記事を参考にしていただければ。
英文履歴書サンプル
エントリーレベルのCV
エントリーレベルの英文履歴書は、新卒や第2新卒の方が利用することを想定したものです。新卒の方はまだそれほどの経験がないため、職歴よりもスキルや学歴に集中することとなります。
職歴のある方と違い、学校の名前だけでなく、どのようなモジュールやゼミを選択したのか、趣味やボランティアなどの経験を記載することなりますが、あくまでも仕事に関連した内容として書く必要があります。「テニスサークルに所属していました」ではなく、「テニスサークルでサークル内外の方向けのウェブサイトの編集を担当」などビジネスに関わる経験として表現します。
英文履歴書をどう利用するか
採用に関しては、ネット上の情報も多岐にわたり、英文履歴書は常にアップデートして最新の情報にすること、カバーレータを丁寧に記述することなど多くのアドバイスがあります。どれが正しいのかは自分でしっかり判断しましょう。
個人的には利用することもまれな履歴書をアップデートするのは無駄ですし、カバーレータを書く時間があれば、その企業に人を紹介したり、採用者を送り込んだ経験のあるヘッドハンターを探して、その企業の特色や採用プロセスなどをヒアリングすることに時間を使います。
行きたい企業のトップに直メールやTwitterで連絡する人もいれば、その企業に勤めている人に紹介してもらうことを目標に人にあってネットワークを広げる人もいると思います。自分のキャリア・マネージメントの方向性にあわせて、効率的に活動したいですね。