暗号通貨として話題になるビットコインやイーサリアムですが、仮想通貨をいかがわしいと思っている方もイーサリアムの嵐からは逃れられないかもしれません。ブロックチェーン・スマートコントラクトをビジネスで活用するための仕組みとして日本企業も多く参加しているイーサリアム・エンタープライズという仕組みがあります。イーサリアム・エンタープライズの活動を通して、スマートコントラクトのビジネス利用の現状を見てみます。
イーサリアムとビットコインの違い
ビットコイン(bitcoin)もイーサリアム(ethereum)もどちらも暗号通貨と知られています。投機の対象と言われたり、新しい民主的な通貨と言われたり毀誉褒貶という位置付けでしょうか。イーサリアムとビットコインの違いは、ビットコインがどこまでいっても暗号通貨でしかないのに対してイーサリアムは、スマートコントラクトをサーポートしていることと、企業がイーサリアムの仕組みを使って暗号通貨以外の分散管理型のアプリケーションを作れる仕組みというところです。
より散文的に書くと、ビットコインは通貨に革命を起こそうとしており、イーサリアムは資産管理の仕方に革命を起こそうとしているということでしょうか。
イーサリアム | ビットコイン | |
開始日 | 2015年 | 2009年 |
基盤技術 | ブロックチェーン | スマートコントラクト ブロックチェーン |
コンセプト | 暗号通貨 | 暗号通貨 アプリケーションプラットフォーム |
処理時間 | 10分 | 12−14秒 |
拡張性 | なし | Solidityというプログラムで機能を拡張可能 |
スマートコントラクトとは?
スマートコントラクトが提唱されたのはブロックチェーンよりも古く、合意されたある条件と成果を暗号化されたプログラムとして実装されたものです。合意・契約がドキュメントという文字で成立しているのに対して、スマートコントラクトはプログラムとして成立するため、合意・契約内にその合意のために必要なプロセスやイベントが発生した時に実施することを定義することができます。
また、ブロックチェーンの技術と統合されることで、暗号化の信頼性が高く悪意のある改変リスクが少ないこと、参照する人を限定する、過去の修正履歴などをすべて保存することができるというものです。
ものすごく簡単に書いてしまうと、合意された非常に複雑なルールにしたがって自動的にプロセスを実施する暗号化により安全性の高いプログラムということでしょうか。詳細は次のエントリーにもまとめました。
また、英語ですがイーサリアムによる分散型の管理という仕組みを簡単に理解できるビデオを紹介しておきます。中央集権型で管理されたものが、分散管理されることのメリットは、上記エントリー内の事例やビデオを見て頂ければと。
エンタープライズ・イーサリアム・アライアンスとは?
イーサリアムによって、ブロックチェーンとスマートコントラクトを利用した分散アプリケーションプラットフォームを、より企業のビジネスニーズに合った仕組みをつくろうというプロジェクが、エンタープライズ イーサリアムです。
2017年3月に、エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA: Enterprise Ethereum Alliance)は、世界最大のブロックチェーンに関するオープンソース組織で、インテル、マスターカード、シスコなどSP500企業やテクノロジーのスタートアップなど150社以上が参加しています。EEAは巨大なIT企業や金融機関が参加したことで注目されていますが、目的は企業、スタートアップ、アカデミックなどをつなげて、知識の共有と合意を目的としています。
EEAは、エンタープライズ・イーサリアムのプロトコルの標準化、プライバシーのフレームワーク作り、企業が必要な機能の追加などを議論し、統合的なスタンダードを作っていくという団体です。
すでにイーサリアム・エンタープライズは、La’Zooz, Arcade City, Colonyなどのプラットフォームで利用されていますが、標準化が進むことで企業が利用しようとした時に使えるリソースが豊富になるということになります。
エンタープライズ・イーサリアムがあたえるビジネスインパクト
多くの企業がバックアップすることによってブロックチェーンの基盤プラットフォームにエンタープライズ・イーサリアムがなりつつあります。結果、金融以外の領域もエンタープライズ・イーサリアムによってプロセスの管理が変わっていくということになります。
実際に消費者や企業の中で利用するという意味では、現在のプロセスが分散的な仕組みで管理されるということで、大きな違いは感じないかもしれません。ただし、以下のエントリーの寄付の例など、いままで難しかった仕組みもスマートコントラクトの合意されたイベントが発生した時に、自動的にプロセスを実行するということが起こることで、変わるものもでてきます。
IBMがレンタカーをケースにプロセスがどのように変わるのかビデオで紹介しています。
現在はレンタカーひとつとっても、ディーラーからリースをして、自動車の登録を国にして、保険契約に入り、自動車を消費者に貸して、 修理を工場に依頼してなどのステップで、本社・店舗従業員などが同じような情報をそれぞれ対応する相手に提供しています。これは、公共組織、保険会社、修理会社などがそれぞれの組織の中で管理されたシステムを持っているからです。
データを中心にした仕組みが用意され、関係者が必要な情報にアクセスをする仕組みが用意されていれば、重複された作業が必要なくなります。また、事故が起きたことが警察で登録されると、自動的に保険会社に連絡が行くなどイベントによって自動化されたプロセスがあれば、レンタカーの会社は毎回連絡をして書類を用意してという必要がありません。
新たなBPRの波
1990年代から流行したBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)が、バリューチェーン全体で行われるというのがエンタープライズ・イーサリアムのインパクトが大きいと言われる理由です。
BPRの際には、日本企業はコアとなるビジネス以外でも独自のプロセスを捨てれず、システム開発などによりかえってコストがかかる、パッケージ・ソフトウェアやSaaSの利用が進まなかった、従来のプロセスが維持されたという結果に終わりました。
グローバル化した環境の中で、インダストリー全体にわたるエコシステム変更に対応しないという判断は難しい環境になると思います。より標準な化されたプロセスになり、プロセスがシンプルになる・・・かもしれません。