アメリカで従業員の高齢化が生産性悪化を招いている衝撃

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sylviebliss / Pixabay

高齢化によって企業の生産性が悪くなったと聞くと、日本のことのように感じますよね。しかし、これはアメリカで起こっていることです。

ブルーンバーグ・ビジネスウィークに、「アメリカの労働人口の高年齢化が生産性悪化を招いていることが調査から判明した」という経済記者のコラムが掲載されました。英語が読める方は元記事を読んでいただくとして、簡単にまとめてみます。

Bloomberg - Are you a robot?
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米国生産性の推移

 

労働統計局のデータによると、アメリカの生産性は1970年代より 一貫して平均2.5%で向上してきました。しかし、この数年生産性は引き続き上がっているものの、直近5年間は0.5%と伸び率が低下してきています。ムーディーズのチーフエコノミストは、この10年間の生産性の伸び率低下の原因として、労働人口の高齢化は大きな要因となっていると統計的に証明できると語っています。

全労働人口に占める65歳以上の労働者の割合は、1960年代から2000年代初頭まで下がってきましたが、近年急激な上昇を示しています。現在4−5%程度の65歳以上従業員比率が、30年程度をかけて9%近くまで上昇すると予測されています。これは主に、引退しないベビーブーマーが押し上げているようです。

中国が今後20年間での急激な高齢化が進むことが想定されているなど、高齢化は先進国共有の課題となっています。 一方で、米国は平均年齢が37.4歳と低く移民国家の強みを見せています。老齢労働人口が上昇していくというのは、驚きでした。

 

日本                 45.9歳

ドイツ              45.5歳

フランス           40.6歳

イギリス           40.2歳

ロシア              38.3歳

アメリカ           37.4歳

中国                 37.4歳

 

ムーディーズは、産業別、州別に老齢労働人口と生産性データを区切って関係性の確認もしています。結果、老齢人口比率の高い産業や州ほど、生産性が低いという結果が求められたそうです。つまり老齢労働者が、生産性の足をひっぱっています。

 

 

なぜ生産性がさがっているのか

 

1970年以降の生産性向上は、コンピューターの導入と高度化が大きな役割を担ってきたと言われています。ここで、生産性低下の原因として2つの仮説を立てています。

 

1.高齢者の低い生産性に企業が引っ張られている

生産人口の労働者に比べて、老齢労働者への生産性向上を牽引する新しい手法やソフトウェアのトレーニングが行われていない。結果としてトラディショナルな手法にとらわれてしまい、企業全体で俯瞰すると生産性が上がらない。

 

2.高齢者が韻彩することで、生産人口の生産性が下がっている

深い知見や経験を持つ老齢労働者が引退することで、中間層や若者に妥当なアドバイスを与える機会が減っているため、生産性がさがっている。日本の中小企業や職人でよく話題になるストーリーですね。私はできればこちらの仮説が正しいことを祈りました。

 

 

再度、ムーディーズのエコノミストが仮説を検証してみました。結果的に、残念ながら老齢労働者が引退するにつれて生産性が向上していくということが検証できました。したがって、老齢労働者は、今後30年間にわたって、アメリカの生産性向上を阻む重りとなると結論づけています。

 

少し希望の持てるお話としては、老齢労働者が生産性の足を引っ張る力は、現在がもっとも高く、今後は改善するだろうとの予測があったことです。デジタル化に対しての対応を比較的高齢で行うこととなったベビーブーマーに比して、今後老齢労働者となる人たちは、コンピューターがある職場に適応しており、大きな生産性低下は引き起こさないと予測されました。

 

老齢労働者へのトレーニングを意識しなければ

 

アメリカは移民をさらに受け入れることで、新陳代謝を促すことができると本コラムは結論づけています。同時に、より生産性の高いソフトウェアや手法のトレーニングを老齢労働者にも提供するように人事部を中心に企業は考えるべきだと提案しています。

この提案は日本で働いている私も、真剣に受け止め、対応を考えなければなければと思いました。

 

弊社で過去数年間のトレーニング・カレンダーを思い出してみると、一定レベルのクオリティを維持するためのジュニアの底上げを目指したトレーニングか、新たに管理職となったマネージャーへのマネージメント研修は確実にやってきました。従業員間で情報共有を行い、ケーススタディや最新技術を共有する仕組みもあります。

 

一方で、これからより厚みを増すであろう50歳以上の社員が、次々に現れる技術や、拡大していくデータについて、シニアの理解や環境に合わせたトレーニングを提供しているか?と問われれば、まったくやっていません。考えてもいませんでした。

 

シニアスタッフの経験は貴重です。彼らは新しい事象を完全に理解していなかったとしても、過去の経験からの比定などで、ある事象からインプリケーションを抽出。そして、アクションにつなげていけます。

 

ガートナーのレポートにもありますが、これから10年間はSFが現実化していく時期です。さらなるディスラプションが次々と発生していきます。たとえ、インターネットの変革に適用したシニア層だとしても、20歳年を重ねた中での技術進化に対応できるかはわかりません。

もちろん、ジュニア向けのトレーニングに参加を禁じているわけではないです。ただ、シニア本人たちも、現在提供されているトレーニングに参加しなければならないとは思っていないでしょう。

 

技術の進化によって組織内の生産性の平均は相対的に上昇します。どこかで、シニアは追い抜かれていく可能性が高いです。そのタイミングで、トレーニングを再度行って平均まで引き戻したとしても、結果的に組織全体の生産性は平均もしくは業界平均に対して低下していることになります。

 

 

まとめ

 

高齢化という環境変化にあわせての見直しは必須ですね。トレーニングは若手とステレオタイプに陥らず、組織の環境を俯瞰してみなければと自戒しました。

そういえば、ちきりんさんの書いた「生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの」も積読になってます。読みやすいらいしので読まなければ。