アメリカを筆頭に世界中で大学学費の高騰が進んでおり、日本でも国公立の学費が安いとは言えない状態になってきました。裕福な家庭のみが高等教育を受けられるというのでは格差が広がる一方です。一方で、その対策であった奨学金も卒業時点で500万以上の負債を抱える社会人はリスクが高くなります。
社会的に認知された意味のある学位を自国や留学で取得するのは無理と決めつけてしまっている人も多いようです。実態は、未だに学費無料や低コストで大学など高等教育を受けられる国はまだまだあります。アメリカ、イギリス、中国、シンガポールなど、高騰著しい国ではなく、可能性のある国を知って、自分で挑戦するかどうかです。
恵まれない世代
我々の世代は就職氷河期やバブル崩壊後を社会人として暮らしてきましたが、実は日本円は比較的高いレベルを維持しており、下手をすると80円台という時代もありました。私の場合も、アメリカの大学院の学費は80円台で支払っているため、安くはなかったものの結果的に今同じ学校の学費の半分程度ですみました。日本円が110円以上を維持する中で、ここ10年間でアメリカの大学学費は約180%と大きく高騰をしてきました。
海外で学ぶことがすべてとは思いませんが、違う考え方・見方を与えてくれる海外での就業・学習経験は、貴重な経験となります。同時に、多様な考え方が求められる現代のビジネス環境において、企業へアピールサインとしても引き続き意味はあると思います。
無料・低コストで高等教育を受けられる国や地域
ドイツ
ドイツへの留学というのは、イギリス・スイス・スペインなどの国として高等教育を産業化している国に比べて歴史的に低かったものの、この数年人数は増えています。これは国公立大学の学部であれば、学費が存在しないこと、そしてそれはドイツ国籍にかぎらず留学生にも適用されるからです。留学生に課せられるのは、最低限の入学処理費用で150−250ユーロ(3−5万円程度)です。
この低コストでの大学教育とドイツの好調な経済状況が、世界中の留学生や親にドイツ留学を決心させているようです。教育の水準についてもHSBCがレポートしているThe Value Of Educationという国ごとの教育水準の報告書でも、上位5カ国につねにランクしています。
ただし、この環境はあとすこししか続かないため、動くのであれば今すぐ動く必要があります。2017年からドイツ南部のバーデン・ウォーテンバーグ州は非EU居住者への学費導入を発表しており、他の州も今後導入が進むと思われます。学費は30万程度になるとのことなのですれでも割安ですが、数年かけて導入と価格調整が進んでいくと思われます。
ドイツの著名な国公立大学は、工学系はミュンヘン、総合系はベルリンに集中していますが、どちらも生活費が比較的安い都市にランキングしています。
フランス
フランスは独特の高等教育システムをとっていることもあり、ドイツよりもさらに留学先としては検討されることが少ない国ですが、実はドイツ同じように無料もしくは低コストでの高等教育を提供している国のひとつです。
フランスの国公立大学は、ドイツと同じように経費として3万円程度必要とする以外は、多くの場合は無料です。ただし、工学・医療系などでは実験器具などのために一定の費用が必要になるようです。国公立と言ってもグランゼコールについては、高い学費が必要になる場合が多いようです。
ドイツと同じように、フランスも自国語を大切にする文化のためフランス語での授業になります。ただし、フランスは大学院レベルでは英語での授業を提供する大学が増えています。また、生活費についてはパリを除けばEU圏のなかでは低いグループになります。
北欧諸国
ノルディックと言われる北欧諸国は、高い生活品質、雄大な自然や高い税率などで有名ですが、高等教育を無料で提供していることも知られています。デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンといった国は、無料もしくは低コストでの大学・大学院教育を提供しています。
例えばノルウェーでは、すべての大学教育は国籍を問わずに無料で提供されています。学部レベルはほぼノルウェー語で実施されることもあり、ノルウェー語ができることを証明する必要がありますが、大学院レベルでは英語での入学を許可している大学やスクールもあります。
デンマーク、フィンランドなどは、残念ながら無料の教育が提供されるのはEU圏内の国籍保持者に限られています。いずれにしても、デンマーク、フィンランド、スウェーデンは高ランクの大学が首都に集中しており、首都の生活費が近年の経済発展で高騰が著しいために選択肢としては検討が難しいです。
その他
ランキングが高い大学がありながら低コストという国や地域は他にも、台湾、インド、アルゼンチンなどがあります。
また、国としては制度を持っていなくとも、特定の大学やスクール単位で、一定人数の留学生を無料で受け入れている大学もあります。これは自国の生徒にグローバルな多様性を経験させるという意図のため、教育素材のような扱いにはなりますが、低コストである以上はある一定の譲歩は甘受するべきかと。
まとめ
ドイツ、フランスなどメジャーな国がまだ無料・低コストでの高等教育を提供しているというのは、調べていてびっくりしました。
以下にランキングを見ても、多くの大学がランクインしており、教育の質や名前についても意味があるかともいます。
日系企業に関して言えば、ハーバードなど一部の著名スクール以外は、南部アイビーリーグ校など世界的には有名でも日本では知られていないというケースは多く、ドイツ最高の工業大学など語れるストーリーがあれば、中途半端な大学に行くよりも価値はあります。
英語だけでなくドイツ語やフランス語に習熟しなければならないというのは大きなハードルです。ただ、1000万円近いお金を節約しようと考えれば、価値ある投資になると思います。また、英語以外も話せるというのは、それだけでも価値になります。私は3ヶ国語だけしかできませんが、ヨーロッパ語族を2つ、3つ学習して見るのも面白そうです。
Qs Global University Raking
Rank | Country | University |
23 | Japan | The University of Tokyo |
36 | Japan | Kyoto University |
43 | France | Ecole normale supérieure, Paris |
54 | France | Delft University of Technology |
56 | Japan | Tokyo Institute of Technology |
59 | France | Ecole Polytechnique |
64 | Germany | Technical University of Munich |
66 | Germany | Ludwig-Maximilians-Universität München |
68 | Germany | Ruprecht-Karls-Universität Heidelberg |
73 | Denmark | University of Copenhagen |
73 | Sweden | Lund University |
104 | France | Eindhoven University of Technology |
109 | France | Utrecht University |