イリノイ州のブロックチェーンによる公的証明書実験

シェアする

米国イリノイ州はブロックチェーンを使った住民台帳の実験を始めます。ブロックチェーンを使うことで、住民に出生証明などの公的証明書へより良い管理、アクセスと安全性を提供しようという実験です。この動きは、イギリス、ブラジルなどでも始まっており、アイデンティティのブロックチェーン管理が進みそうです。

Certification

スポンサーリンク

ブロックチェーンと公的証明書

アメリカのイリノイ州がブロックチェーンを出生証明、不動産登記、学位など公的証明書に適用する社会実験を行います。現在、出生証明は申請をしてから1−2週間程度して郵便で送られてくる仕組みになっていて、時間がかかるこの仕組をシンプルにすることを目的にするとともに、よりセキュアにデータの変更などができるようにすることを想定しています。

8月にイリノイ州ブロックチェーン推進委員会は、Evernymというオンライン住民台帳の会社をパートナーに出生証明、他の組織と医療情報など複数の社会実験を開始します。住民は自分のIDにアクセスしたり、本人が自分の個人情報へアクセスすることを許可した人・組織が閲覧することができる機能を提供する仕組みをスタートすると発表しました。

ここで使われるブロックチェーンの技術は、ビットコインやイーサリウムと同じ技術で、国に管理されない暗号通貨が発行されたように、ブロックチェーンを使った住民台帳も自律的な統治(self-sovereign)を意図としています。

具体的には英語になりますが、 IBIのページで解説されています。

Digital Transformation in Government: The Illinois Blockchain Initiative (webinar)
National Association of State CIOs (NASCIO) Webinar

ブロックチェーンを使うことで、個人情報の保存とアクセスに大きな変化が起きると言われていますが、具体的にはどんなことなのでしょうか?

ブロックチェーンを使うメリット

日本の住民台帳システムのように、個人情報は政府や地方自治体が管理するサーバーで一括管理されています。貴重な個人情報が一括管理されていると明示されている結果、ハッキングや不正使用などのリスクが高まるのは、流出のニュースが日本でも多いことが証明しています。

自律的な統治(self-sovereign)では、データは1箇所に保存されるのではなく様々な場所に分散して保存されます。分散して保存がされることで安全性が高まるものの、様々な場所に保管されている情報が最新の状態で保存・管理されないため、情報の信頼性が劣ることが問題でした。
身近な例で言うと、我々の個人情報はすでに多くの場所に分散して登録されています。ソーシャルネットワークで個人情報を登録したアカウント、飲食店のポイントカードに登録した個人情報、ECサイトで買い物をする際に登録した個人情報などは、その登録をしたタイミングの携帯電話番号・住所などであるものの、最新のものであるとは限りません。短期的には問題がなくても、引っ越し・結婚・転職などライフイベントが起きるごとに、分散管理された情報の一意性(同じ情報であること)は失われています。
ブロックチェーンは、個人情報だけでなく、これまでの変更歴などをすべて保持することができること、また分散登録されている情報を最新の情報にアップデートするように本人の意思で最新情報に更新することが可能となります。つまり、個人が情報の変更などを本人が管理できる環境がありつつ、個人情報にアクセスできる人・サービスなどを本人が管理できるようにする仕組みです。

そして、ブロックチェーンの特性として、暗号を解析することが難しため不正アクセスや悪意を持った人による改変などのリスクが少ないというのが特徴です。

個人レベルでなにか変わるの?

実際の運用では、スマホなど指紋などで安全を確保されたデバイスを使って、自分のIDを共有するという仕組みなので、すでにモバイルSuicaやモバイルクレジットカードなどを使っている方からすると、それほど変わらないと形になるようです。

一方で、政府が補完する個人情報が減っていくことでの変化は大きくなります。例えば、引っ越しをした際に、住民票を移転し、運転免許書を更新し、各種公共サービスの登録を変更しという住所や電話番号をなんどもなんども書類に書くことになると思います。これが、ブロックチェーンによる分散された自律的な住民台帳化されることで、1箇所で住所を変更して、その変更が認証されれば、他の組織については新しい住所へ更新にアクセス可能にするだけになります。

デメリットは?

メリットとデメリットを検証するために実験が行われていますが、いくつかの問題点もすでに指摘されています。

あまりに簡単になってしまうことのリスクも指摘されています。共有される情報が常に最新に維持される上に、学位、既往症や自動車など不動産などの証明にも紐付けされていくということもあり、情報共有についてはより慎重になるべきなのです。

しかし、現在フェースブックなどで横行している、ゲームや占いができるかわりに個人情報を引っこ抜くタイプのアプリに、いくらフェースブックが個人情報を抜かれると警告しても、気にせずに共有する人が多いという状況を考えると、結果的に行政ではなく個人が管理できるために安全性が下がるという結果になる可能性もあります。

また、そもそもブロックチェーンは国などの管理に頼らない民主的な手法という哲学があり、分散的に管理することが正しいというコンセプトになっています。つまり、分散管理することが本当に低コストなのかが検証されているわけではありません。特に取引や情報の整合性を維持するための仕組みに大量のコンピューター処理が必要になることを考えると、電力消費なども含めて考えた時に中央管理よりもコストが高いという結果になる可能性があります。

まとめ

ブロックチェーンによって利便性が高まる可能性は高いので実証事件はどんどん進んで欲しいですね。衆議院が解散して総選挙に600億円がかかると話題になっていますが、民主主義の基礎であり個人の最大の権利のひとつである選挙もブロックチェーンを利用して安全に実施できることなどが想定されています。個別の利用方法だけでなく、社会全体が利用するフレームワークがどのような形になるのか興味深いです。

スポンサーリンク

シェアする