オンラインショップ、サーチマーケティング、ソーシャルネットワーク、コンテンツマーケティングなど効果分析は、オンライン・マーケティングの効果を把握し改善するための指標です。消費者行動が複雑になった今、マーケティングROIを把握する仕組みも新しい指標が必要になります。
トップダウン・アプローチ
マーケティング・ミックス・モデリング(MMM: Marketing Mix Modeling)は、統合的なマーケティング効果を把握する手法として発展してきました。テレビや雑誌などトラディショナルな広告、サーチ広告やコンテンツマーケティングなどデジタルおよびセールスを統合して把握できる手法です。MMMは、さらにプロモーションや店頭施策など非広告の手法をモデルに取り入れることも可能です。
MMMの問題は、シンプルな回帰分析・重回帰分析ではモデルが適合しないため、複雑なモデルを利用する必要があります。また、広告媒体の重複効果、広告のストック効果、広告効果の時差、消費者行動誘発の減衰など、多くの定説のない要素を取り入れる必要があります。さらに、どのようなモデルを採用するのかはデータセットによって違うために、課題によって利用するモデルが違うということになります。
結果的に、モデルがブラックボックス化してしまうこと。また、複雑なモデリングのため情報の粒度は粗くなり、年間予算の設定とその結果としてのROIを算出することには使えるものの、実施プランを作る際にはまったく違う方法をとるため、計画と実施で統一性がないという結果になります。
ただし、マーケティング投資や投資する媒体の違いによるROIの変化を複数シナリオで検証する時には、もっとも効果的な方法となります。
ボトムアップアプローチ
ルールベースのアトリビューションモデリング(Rule-Based Attribution)が典型的なボトムアップのアプローチと言われています。ルールベースのアトリビューションモデリングも多くの種類があり、ラストタッチ、ファーストタッチ、イーブンウェイト、タイムディケリなど複数の分析手法があります、
MMMと違い、広告の設置された場所、サイズ、メッセージ、キーワード、ソーシャルプラットフォーム別など、様々なデジタル広告の要素について細かな分析ができること、ほぼリアルタイムでの分析ができることなどが強みです。
Google Analytics, Adobe Analytics, Google Analytics360などトラッキングツールには、無料・有料を問わずアトリビューションモデリングの分析機能があるため、簡単に利用できるということもメリットのひとつです。
多くのツールでは、ラストタッチのアトリビューションがデフォルトの手法となっています。これは、コンバージョン(購買などゴールとなる行動)の直前に行った行動を分析する手法です。
ソーシャルやデジタル以外のコミュニケーションが与える影響を分析するためには、カスタムアトリビューションと呼ばれるファーストタッチやイコールウェイテッドなどの分析手法を用いる必要があります。最初にソーシャルでブランドに触れて、ウェブサイトで詳しく知り、その後サーチの後にコンバージョンするというコンシューマージャーニーを分析することが可能です。
さらに、店頭での購買までつながったのか確認する方法もGoogleやDSPなどのベンダーが提供を始めています。これはPOSのデータから店頭購買を推計する方法です。
ただし、ルールベースのアトリビューションモデリングは、デジタルだけの分析となってしまうため、限定的なマーケティング効果しか測ることができない、もしくは多くの推計がされているということで、アドバンスド・アトリビューション・モデリングなどの手法も提唱されています。
アドバンス・アトリビューション・モデリングでは、媒体の重複効果やデバイスの重複効果などを調査などから把握し、媒体別の接触データからデジタルだけでなく、テレビなどの効果も考慮する方法になります。ただし、重複した接触についてのデータは、携帯電話会社など極一部の企業のみ利用可能なため、他の企業では引き続き接触確率からの推計が必要となります。
手法の比較
手法 | メリット | デメリット |
MMM マーケティング・ミックス・モデリング | 複数の媒体やチャネル・広告などの効果を分析できる | モデリングに時間がかかる モデルがブラックボックス化しやすい 細かな媒体の効果を分析できない |
Rule based attribution ルールベースのアトリビューション・モデリング | 詳細なチャネル別効果をドリルダウンできる リアルタイムでの分析が可能 | トラディショナルチャネルや非広告コミュニケーションの効果を考慮できない |
Advanced attribution アドバンスド・アトリビューション・モデリング | 複数の媒体やチャネル・広告などの効果を分析できる 詳細なチャネル別効果をドリルダウンできる リアルタイムでの分析が可能 | 必要なデータの入手性が低く、推計による分析となる |
まとめ
マーケティングROIを計測する方法は複数ありますが、完全な方法もありません。ただし、未だに多くの企業が根本的なマーケティングROIを計測していないということも事実です。販売は流通や販社・代理店が行っており出荷データしかないなど、できない理由 を作ることは簡単なのです。
ただし、デジタルでのマーケティングにシフトしていく中で、人間ではなく機械がクリックするやターゲットの偽装など、不正の温床も大きくなってきています。デジタル広告会社が提出する数字は、媒体社の数字を使われています。この数字が自社で設置したGoogle Analyticsなどの計測値と大きく違っている場合もあります。
一方で、リサーチ会社、広告会社などが提供するマーケティング・ミックス・モデリングはモデルやロジックがブラックボックス化されていることが多く、Make-Up(粉飾)が入りやすいということも事実です。しかも、make-upの部分ほど、革新的な正規化や分析手法と説明されることがあります。
複雑な数式やモデルを理解することを諦めるのではなく、仕組みを理解することは重要です。YouTubeに解説をしたビデオもありますし、ベンダーに納得するまで確認することが重要です。
また、コンテンツマーケティングなど非広告の投資についても、MMMを活用して商流全体への効果を把握することで、本当の効果を理解することができます。ブランドイメージの向上なども重要ですが、ビジネスの商流と結果を起点とすること、継続的な投資と関係部署の軽お俗的な強力を得ることができます。
自社の投資がどのような効果をもたらしているのか、把握する努力はしなければですね。