トヨタ自動車の人工知能(AI)ファンド投資を分析

シェアする

米国で人工知能(AI)の研究開発を行うトヨタ自動車の子会社トヨタリサーチインスティチュート(TRI)が7月11日に立ち上げた1億ドルのベンチャーキャピタルファンドの動きから、トヨタ自動車のAIへの投資状況とフォーカスを分析してみる。

Toyota

スポンサーリンク

自動車各社のCVC

GMはGM Ventures、BMWはBMWi Venturesと自動車会社各社は人工知能や自動運転などの研究開発の一環としてベンチャーキャピタルファンドを立ち上げています。GM Venturesは2010年に設立され、環境性能のための 自動車Clean-Tech、インフォテーメント(ITとエンタメの融合)、最新素材など比較的広い領域への投資をしています。BMWi Ventureは、2011に設立されて2016年にファンド規模を拡大して、人工知能やe-Mobilityといった自動運転とドイツ企業らしくIndustry4.0に投資をフォーカスしています。

こうした自動車を含む企業内のベンチャーキャピタルはCorporate Venture Capital (CVC)と呼ばれているようですが、オープン・イノベーションとして、自社で全てを解決しようとするのではなく、革新的な技術を持った企業との共同開発を視野に入れたものです。

ベンチャー側も、資金調達だけでなく、CVCによって産業領域の広い知識やデータにアクセスすることができるため、自社の技術を効果的に製品化することができます。

トヨタのベンチャー投資

トヨタの立ち上げたファンドTOYOTA AI VENTURES(TAV)は、AI、クラウド、データ、ロボティクスなど自動運転をフォーカスとして設立されています。

トヨタ自動車やTRIはすでに多くの企業への投資をファンドを介さずに行ってきた実績があります。たとえば、2016年にUBERへの出資、提携解消したものの2010年に行われたテスラとのEVでの提携などを実施してきました。加えて、マサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学・人工知能研究所、スタンフォード大学スタンフォード人工知能研究所とAI研究での提携と5000万ドルの投資を発表しています。

トヨタの投資実績

トヨタもしくは関連会社の出資

出資元出資先領域
トヨタ自動車UBERライドシェア
トヨタ自動車Getaroundカーシェアリング
トヨタ自動車Jaybridge Robotics人工知能技術の研究・開発
トヨタ自動車Preferred Networks機械学習の研究・開発
トヨタ自動車Cartivator空飛ぶクルマの開発
トヨタ自動車Chargepoint EVの充電プラットフォーム
トヨタファイナンスMaaS Globalコネクティッドカー

TOYOTA AI VENTURESの投資先

出資元出資先領域
TAVNAUTOドライバー支援AI
TAVSLAMCore 地図・位置情報
TAVInstitution Robotics 高齢者介護ロボット

トヨタの出資先についてのインサイト

2012に行われたCharge Pointへの投資を除くと多くの提携・出資が2015年12月以降に行われています。10社近い投資を短期間で積み上げているというスピード感が日系企業とは思えないトヨタのすごみを感じます。

TAVの投資はAIと自動車というのがファンドの名前からもわかりますし、TAIの投資先についても、NAUTO, SLAMCoreがAuto-TechとAIという領域での研究開発を手がけています。一方で、Institution Roboticsは自動車へ直接的な関係のない企業で、高齢者向けに自宅に居ながら遠方の家族や友人と交流するためのロボットを開発しています。伝統的にトヨタが取り組んできた高齢化社会とロボットや人間をサポートするパートナーロボットというテーマについてもTAVがカバーするというのは面白い特徴だと思います。

CVCでAIにフォーカスとなると、どうしても米国スタートアップがメインになる場合が多いのですが、国際的にバランスの取れたポートフォリオを目指しているようです。フィンランド、英国、イスラエル、日本など、米国だけでないく広く技術やサービスを希求しているようです。

ハイブリッド、燃料電池などで長期の自社での研究投資をしてきたのに対して、AIやEV領域では、オープン・イノベーションへ舵を切ったということをTAVの設立というカタチでで明確にしたということになりますね。

TAVのブログ

コーポレートベンチャーキャピタルは、秘密主義ではないものの出資元が企業ということもあり、ポートフォリオなどを公開している程度なのですが、TAVはなんとブログを持っていて、情報発信をしています。

https://medium.com/toyota-ai-ventures

月に1つ程度のポストではあるのですが、 institution roboticsを紹介するエントリーなどはシニア世代とロボットについて説明しています。

イスラエルはトヨタのM&A戦略の未来

トヨタがM&A戦略を拡大させていますが、トヨタAIベンチャーの社長Jim Adlerがロイターのインタビューにこたえて、今後の戦略やイスラエルのスタートアップの位置付けについてこたえています。

カリフォルニアに設置された100億円のファンド、トヨタAIベンチャーは、人工知能、自動運転やロボテククスなどの分野への投資を行うビークルとなっています。 $14MをInstitute Roboticsに投資をするなど、トヨタのM&A戦略の一翼を担っています。Institute Roboticsは高齢者向けのロボットを開発しており、来年以降テスト運用を開始するとのこと。

Adlerは今後もイスラエルのベンチャーに投資をしていく、豊富なパイプラインが存在していると語っています。面白いのは、トヨタAIベンチャーはトヨタの自動車戦略だけでなく、超高齢化を迎える日本の社会問題を解消することも設立目的に入っているとAdlerが語っていることです。今後も意外な投資をしていくかもしれませんね。

スポンサーリンク

シェアする