リーダーシップはチームリーダーを採用する際にも、スペシャリストとしてプロジェクトをリードする際にも重要視されるとともに、ジュニアなポジションでもリーダーシップの素養について必ず評価されるスキルです。
転職という場面でなくても、上司・部下・プロジェクトチームのメンバーや協力会社からリーダーシップを求められる場面は多いと思いますが、具体的にどういうことなのか明確にできていない方も多いでしょう。
そこで、人事評価や転職といったタイミングで企業がもとめるリーダーシップについて説明します。
リーダーシップの考え方の違い
リーダーシップは、グループをひとつのゴールに向けて方向性をまとめて、行動をうながすことです。人と人、グループとグループの関係で発生することのため、絶対的な正解はなく、リーダーシップの形は千差万別です。同時に求められるリーダーシップのスキルも企業や人によって違いがあります。
モデリングとオーセンティック
リーダーシップのスキルを身に着けるにあたって、大きく2つの考え方があります。
ひとつはモデリングと言われる手法で、リーダーシップはこうあるべきという理想像、こうなりたいという理想的な人物の優れた部分、能力、立ち振る舞い、会話の仕方、考え方を自分のスキルとして身につけていく方法です。
もうひとつは、オーセンティックリーダーシップと言われ考え方で、自分はどういう人間であるか、自身が大事にしている価値観は何かなど、自分自身が持つ本来の哲学に根差したリーダーシップのあり方を検討して、身に着けていく方法です。
モデリングは、理想像の思考パターンや行動様式を観察し、まねる・コピーすることからスタートします。その中で理想的なリーダーシップに自分を合わせる部分と、自分なりにカスタマイズする部分を検討します。モデリングの利点は、多くの人がイメージするリーダー像に近いリーダーになるため、周囲の人が受け入れやすい・わかりやすいという部分です。一方で、自分の理想と自分の本質が違う部分はどうしても発生してしまいますので、そのギャップに苦しむ結果となることがあります。
オーセンティック・リーダーシップは、まず自分の価値観を見直し、本質的に重要視している考え方や哲学を突き詰めて、その価値観を組織全体の成長や行動へと適用していく方法です。自分と理想像とのギャップは生まれませんが、必ずしも誰もがイメージするリーダー像というものになるわけではありません。
つまり、モデリングは弱点をなくしていく方法、オーセンティック・リーダーシップは長所をより生かしていく方法となります。
安定した組織、ビジネスドメインなど平時のビジネスリーダーには、比較的モデリングのアプローチがあっている。一方で、現在の変化の激しい市場、変わりゆく環境ではオーセンティック・リーダーシップが注目されていると言われています。
実際には、いきなり自分の価値観を見つめてリーダーとして行動できる人は少ないです。まずはモデリングでリーダーシップのスキルをみにつけて、その後自分らしいリーダーシップとしてオーセンティックであることを希求するのが現実的なオプションです。
転職や昇進という場面でも、ベンチャーや急成長をしている企業、ターンアラウンド中の企業はオーセンティック・リーダーシップを、安定した企業はモデリングを求める傾向にあります。その意図の違いに合わせて、自分をアピールする必要があります。
リーダーシップの視点の違い
リーダーシップが必要なポジションを採用する際には、候補者が効果的に同僚、顧客や協力会社と関係を構築できる能力が高いことを期待しています。
一方で、同僚や上司部下はより人事評価の際や採用に置いて、感情のコントロールができている、忍耐力、受容性、人的リソースの活用に関する理解などより細かなレベルでのスキルに注視する傾向があります。
企業視点で求めるリーダーシップを実現するためには、同僚が意識するリーダーシップのスキルが必要です。
企業の視点ではあるグループを第3者の俯瞰的な視点に対して、個人レベルではチームメンバーや顧客など関係するプレイヤーの位置づけという視点の違いがあります。
昇進や転職のためにはコミュニケーションスキルといった大きなレイヤーでリーダーシップを証明し、日々の業務や360度評価など同僚からの評価においては、粒度のひとつ低いレイヤーの能力を証明するのが効果的です。
企業が重視するリーダーシップのスキル
企業が求めるリーダーシップの姿や要素は企業によって違いますが、求められるスキルはひとつだけです。組織、チーム、顧客とのコミュニケーションです。では、どのようなコミュニケーション・スキルが重視され、評価されるのか紹介します。
効果的、効率的なコミュニケーション・スキル
リーダーは効果的で、効率的なコミュニケーションができることが必要です。
個人をリードするときでも、グループをリードするときでも、場面にかかわらず必ず必要となるのがコミュニケーションです。そして、アイディアや方針を共有する、ゴールを設定し共有するなどリーダーシップの根幹となるスキルです。
効果的コミュニケーションとは、個人対個人、大人数へのプレゼンテーション、書類として記述して共有するなど方法を問わず、自分の伝えたいことを正確に、明確に伝えることができることです。非効率なコミュニケーションとは、誤解・混乱を生んだり、確認をしなければわからないため、ひとつのことを伝えるためのコストが高い状態です。
効率的なコミュニケーションをするためには、コミュニケーションの相手を理解し、理解されやすい伝え方や媒体を利用することです。そのためには、相手の疑問、不安、熱意などを聞き取れるリスニングのスキルが必要です。
コミュニケーション・スキルを証明するとなると漠然としていますが、スキルを証明するには、自分の言いたいことを正確に伝えることができること、相手の言いたいことを聞き取ることができることの2点を証明することとなります。
面接の場面であれば、設定したゴールへ向けてチームを動かすために、相手の思いを理解した上で伝えたというエピソードを伝えることが効果的です。
非言語でのコミュニケーション・スキル
伝えたいことを伝えられる技術のひとつとして、非言語のコミュニケーションを効果的に活用していることが評価の対象となります。
コミュニケーション能力の高い人は、相談しやすいオープンな雰囲気、偏見や余談で判断をしないなどの環境を作り出しています。この環境は言葉よりもボディーランゲージが効果的なことが多いです。企業がもとめるリーダーシップは、冷静で、オープンで、楽観的、ポジティブといった要素です。
転職の面談では、上記の要素を示すボディランゲージをもとにふるまうことで、企業が求めるリーダーシップに合致していると評価をえることができます。
コーチングのスキル
リーダーはひとりではできないことを組織の力で達成することを実現する人です。したがって、リーダーとして集団を率いるということは、チームのメンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できるようにサポートすることを意味します。
コーチングは相手のことを聞いてアドバイスをするスキルです。コーチングを活用することで、能力を発揮するようにメンバーをサポートできます。
面接の場でコーチングのスキルは、メンバーが日々行っている活動、言動をもとに、長期的なスキルの課題を共有し、課題を指摘することで表現できます。
方針を示すスキル
関係を構築するスキル
つまり、リーダーシップの必要ないポジションだとしても、昇進を目指すにしても、転職をするにしても、リーダーシップを証明することは重要です。
結果だけを残せばいいという一匹狼を集めることを意図した組織もありますが、多くの場合は結果だけでは不十分で、リーダーシップを証明することは必須です。