新しいビジネスや機能のアイディアが生まれたとしても、それを実現する専門的な技術や手法がわからないという時は多くの方が経験しているのではないでしょうか?
そこで、アイディアを実現しようと社内の専門家に聞いていくと、どうやったらできるかという手法ではなく、難しい部分をたくさん聞かされてしまい、どんどんアイディアが普通のものになっていってしまうということもよくあります。
専門家ほど知識や前提がわかっているので物事の困難な部分がよりわかってしまうというのは新しいことをやってみようと思ったときの最大の障害になってしまいます。
イーロン・マスクは、テスラという電気自動車ブランドを創業して、今や世界でももっとも価値ある自動車ブランドに育て上げると同時に、スペースXというロケットの会社やハイパーループという高速移動設備など未踏領域を次々と着手し、実現するというもっとも注目されるシリアル・アントレプレナーです。
彼が、ロケットやハイパーループを作る知識をどう身に着けたのか聞かれた時に言ったのは、「本を読んだんだよ」。
もっとも、イーロン・マスクはスタンフォード大学で物理学の博士課程に入学できるほどの知識を持った人です。
だからといってすべてのことを知ることはできないなかで、本をしっかり読んで専門家と議論することで専門家に困難なことをみるのではなく、新しいことにチャレンジしたい気持ちを刺激して、ポジティブな議論を実現することが重要だと言っています。
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか ピーター・ティール
ZERO to ONE by Peter Thiel
私もアメリカの大学院で驚いたのは実務家が彼らの体験を理論とともに教えてくれることが非常に多いこと、この本も非常にわかりやすく書かれていて、一緒にやる仲間には妥協してはだめだ、いいものを作ってもだめでマーケティングや営業を忘れてはいけない、競争よりも独占を目指せといったプラクティカルな法則が書かれています。
著者はトランプ大統領のアドバイザーにもなっているので、アメリカの現在と今後を知る上でも必読の本ですね。
アインシュタイン その生涯と宇宙 ウォルター・アイザックソン
Einstein: His Life and Universe by Walter Isaacson
物理学について専門的な内容も少し出てきますが、20世紀最大の天才の創造性と一方で恋愛や結婚のエピソードが満載されています。創造性というのが蓄積された知識と豊かな経験から生まれるということを教えてくれる本です。
イーロン・マスクは、ベンジャミン・フランクリンについてのアイザックソンの本も進めています、ベンジャミン・フランクリンはなにもないところからスタートした本当のアントレプレナーだとインタビューで語っています。
指輪物語 J.R.R. トールキン
The Lord of the Rings by J.R.R. Tolkien
イーロン・マスクは多くのファンタジーやSFを紹介していますが指輪物語は特別な物語なようで、この本を読む度に世界を救う義務を感じると言っています。実際、イーロン・マスクのビジネスは、ソーラーパネルでの発電、火星への移住、電気自動車、高速移動手段と世界の問題を解決するという意思が強くあり、それゆえに周囲の人々を巻き込まれています。
最近、AIの活用が広がることで文系では生き残れないという意識が広がり、海外ではScience, Technology, Engineering and Mathematics(科学・技術・工学・数学)について学ぶことの重要性が語られています。私の大学院の同級生たちも、子供にはMBAではなくSTEM領域でドクターを取らせたいという人が多いです。そんな夢を育んでくれるのがイーロン・マスクが愛読している3冊の本かもしれません。