著者のシバタナオキさんは、楽天の最年少役員を経てシリコンバレーのモバイル・アプリ検索最適化ツールのスタートアップをされているインダストリー側の方。
ビジネスマンが知っておくべき、企業のパフォーマンスを管理する指標や基礎的な財務指標について解説している本で、投資や財務を担当している方ではない視点で書かれている本であり、その視点からとても優れた本だと思います。読みながら2つほど過去のエピソードを思い出していました。
新卒最初の上司の言葉:会計はビジネスマナー
私が新卒で入ったIT会社でSEをやっていて、システムの企画・設計やプログラミングをいていました。
会計とはほとんど業務上関係なかったのですが、当時の上司に社会人初めてのフィードバック面談で「会計はビジネスマンのマナーだ、かならず勉強するように。簿記かファイナンシャル・プランナーの資格を取得するのであれば会社も費用を負担するので、1年以内にマナーを知っていることを証明しろ」と言われたことを覚えています。
当時は、あまり意味もわからずに、言われたことをとにかくやってみようと、日商簿記3級とAFPの勉強をしたことを覚えています。
結果として、その後外資系のコンサルティング会社で新規ビジネス企画を担当する機会に恵まれた時、マネージメントとして会社のパフォーマンスを理解する時、M&Aを担当したときなど、ことあるごとに会計の用語が共有言語として使われていて、新卒時の上司に感謝しています。
決算書類からビジネスモデルを理解する
もうひとつは、MBAに言っていた時です。日本語の会計用語であれば理解できることがGAAPの用語が結びつかず最初は四苦八苦して覚えていましたが、ファイナンスで特定のセクターの決算資料を何社かピックアップしながら、決算資料からビジネスモデルを分析するという授業がありました。
新卒レベルの多いMBAと違いEMBAに通っていたのでディレクター以上のタイトルを持っている学生ばかりなので、ビジネスモデルという言葉に違和感はないものの、収益をあげるという概念的な方法程度にしか考えていなかった我々学生は、決算資料をもとに分析していくと、同じセクターであったとしてもコストや収益の扱い方がBS/PLで大きく違い、それを元にビジネスモデルを整理していくという緻密な作業に大きく盛り上がった記憶があります。
その後、グループ経営企画をしていく上で、子会社群をどのようにリードしていくのか検討するにあたって、この演習はそのまま援用することができた。
キャリアの中で折に触れて、決算資料を読む能力というのは助けてくれたものの、新卒の時にあまり考えずに会計について学んだという幸運に恵まれた結果だろう。
現場でビジネスを推進していって、ある日突然PLを預かることになり勉強するという事になった場合、大型書店に並んでいる会計の教科書や書籍を見たとしても、どの本を読めばいいのかわからないだろう。そして、知らない単語の並んだ本を読むのは苦痛だろう。
MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣 シバタナオキ
「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」という本は、会計とビジネスのブリッジが丁寧にされていることで、実務家にとって読みやすく、同時に会計の基礎的な用語に親しむことができるという本となる。
本気で決算資料を読むには、会計的な分析よりもビジネス領域が強すぎるかもしれないが、ある程度ビジネスを経験した方には最適な配分になっている。
この本が薦めるような、決算を読む習慣を持つことはなかなか難しい。
ただし、クライアントの成長戦略やグローバル本社の方向性などについて話をきいて、その後決算資料を読むとIR資料上で明示はされていなくとも読み取れる場合があることもたしかで、手を抜かずに決算資料に目を通す習慣を作ろうと自戒した。
最後に
ただし、学生や新卒から3年目までであれば、この本よりも会計の資格を取得することをおすすめします。グローバルにもっとも評価されている日本人経営者のひとり、京セラの稲盛和夫さんも、たとえどのようなファンクションであったとしても会計を知るべきという会計の重要性を説いています。