オレオ、トライデントやリッツなどを持つ世界最大級の食品会社モンデリーズ(旧クラフト・フーズ)がGlobal CMOの役割をブランド戦略・メディアなどに集中するGlobal CMOと、ヨーロッパ、北米、ラテンアメリカ、アジアの4リージョンでのRegional CMO4名の5名に分割することをAdAgeが報じています。Chief Growth Officerによる成長のための方策としてマーケティングのローカライズをする動きにモンデリーズが加わったことになります。
Chief Growth Officerの役割拡大
欧米の巨大企業は権限を本社に集約し、同じ方法論でグローバル転回することでビジネスを拡大してきました。しかし、食品や日用雑貨などのカテゴリーで地域に特化したプレイヤーやスペシャリティーブランドにシェアを奪われ成長が鈍化するなかで、コカ・コーラなど欧米企業でCMOを廃止してChief Growth Officer(CGO)に権限を渡し、より事業の成長に向けた会社が増えているという動きがあります。
CGOの施策のひとつとして、消費者の生活スタイル変化や地域ごとの違いにより綿密に対応するために、ローカルへの権限移譲し、ビジネスの成長を目指すことが行われています。
モンデリーズも今回この動きに続いたということになります。AdAgeの記事でも、新たなストラクチャーについてインタビューに、Global CMOに就任したマーティン・レナウドではなく、CGOであるティム・コファーが応えています。
モンデリーズのCMO5人体制
昨年11月に就任したモンデリーズのCEO、Dirk Van de Putの方針によるものです。Dirkは、各ローカルでのテイストの違いにより早く対応すること、そしてECを拡大することを優先順位の高い施策として上げています。
今回の新しいストラクチャーはこの方針を受けたもので、ブランド戦略、広告会社とのリレーションシップ、マーケティングケーパビリティ、メディアとデジタルメディアの購買などグローバルのガイドラインのようなものは引き続き本社のGlobal CMOが担当します。
一方で、4名のRegional CMOが設置され、各リージョンのトップにダイレクトレポートとなり、各地域のマーケティング施策や商品はRegional CMOが責任を持って実施することとなります。そしてCMOの最大の責務は成長をリードすることであり、これまでのようなブランド管理ではない役割を担うこととなっています。
次のEC化施策はどうなるのか
大きな一歩を踏み出したモンデリーズ。CEOはマーケティングをローカライズすることと、ECの拡大を優先事項にあげています。セブン&アイやイオンなど流通業、アマゾン・フレッシュや西友と提携した楽天などネットスーパーは日本でも拡大していま。
ただし、お菓子のEC化はまだまだ進んでおらず、大きな要因としてはかさばる割に単価が安いため物流効率が悪いことが上げられると思います。トラディショナルな流通でさえコストがあわないとカルビーがカールを東日本で販売しなくなったことからも、物流が大きな壁になるカテゴリーです。
モンデリーズは、オレオ・リッツなどのビスケット、キャドバリーなどのチョコレート、フィラデルフィアなどの食品、トライデントなどのガムやミント、コーヒーなど飲料の5つの領域がありますが、どの領域でどのようにECを拡大していくのか。ECでの成長が望める分野へとラインアップを拡大していくのか。モンデリーズはフィリップモリスから分離する前からM&Aにより拡大・分割が繰り返されてきた会社だけに思い切った施策をする可能性もあり楽しみです。
アマゾンが圧倒的なシェアを握る欧米市場、アリババが巨大な中国、アマゾンと楽天がしのぎを削る日本など、市場ごとに違う環境の中で、モンデリーズがどのような方法でECに対応していくのか興味深いです。