リーダーシップ:感情をコントロールする5つの方法

ビジネス

友達からのLINEに大笑いしたり、駅のラッシュにいらっとしたり、仕事の進捗にうんざりしたり、感情は日々の生活・人生のもっとも重要な要素のひとつです。

そして、感情は日々の生活だけでなく、人生のクオリティに大きな影響を与える要素です。なぜなら、自分の感情をどのように表現するかによって、周囲の人が自分をどのように評価するのか決まる大きな要素となっているからです。

ビジネスでのシリアスなミーティングで、ずっと笑っていたら、受け取り方は人によって違うものの、「ああ・・そういう人なんだな」と評価されます。人間関係だけでなく、運転中に合流する車にいちいちイラついてあおり運転をする人は、危険な運転で自分や他の人の命を危険にさらすこととなります。

 

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感情をコントロールする5つの方法

感情のコントロールは簡単なものではないですし、コントロールしすぎるのも良くないものだとは思います。では、どのレベルでどのようなコントロールをするべきなのでしょうか?

この領域は学問として研究されているものの、残念ながら、科学的なアプローチをとっていても心理学は属人性が高く追試による再現性の低いと批判されていたり、宗教などの共通認識が前提として存在していたりと、いまのところ明確な数字で表せるわけではありません。ただし、感情が周囲の人、家族、他者に与える影響については研究が進んでいます。

スタンフォード大学の心理学者ジェームス・グロスが発表したモーダルモデルは、感情が刺激される順序を数滴モデルで説明しています。なんらかの環境・事象が我々の注意を引き、その意味を過去の経験などから評価し考え、我々の感情が反応・対応として露出されるというものです。

当然、周囲が笑っている時に一緒に笑うのは問題ないですし、怒りを共有することも問題ありません。ただし、みんなが真剣なことを理由があったとしても笑ったり、ひとり怒りを撒き散らすのは自分のためにも、周囲の人のためにもなりません。

とはいえ、感情が刺激されることは避けようがないので、問題のある感情をコントロールできない状態に身を置かないためにはどうすればよいのか、それでも直面した場合に(自分や周囲の人が不利益をうける前に)どう対応するべきなのかというのが、感情のコントロールということになります。

望ましくない感情をコントロールするための5つ方法をモーダルモデルを参考に整理します。

 

①シチュエーションを選択する

自分が望ましいと思わない感情をつくる環境やシチュエーションを避けることです。もし、自分が忙しい時に怒りがコントロールできないというのであれば、忙しい状態にならないように時間ギリギリでものごとに対処するのをやめましょう。

朝忙しくて怒ってしまうなら10分はやく起きて、やることやりましょう。逆に眠いと感情がコントロールできない人ははやく寝てゆっくり寝ましょう。

オフィスにぎりぎりに着くようにでるよりも少しはやく移動すれば、歩道を走る自転車やエレーベーターを待つ時間にいらっとすることもありません。同様に、いらっとする人が近くにいるのであれば、どう距離を取るのか考えましょう。

すべての環境をコントロールできるわけではないですが、多くの不快な感情は自分のちょっとした努力でその環境そのものを回避することができます。

②シチュエーションを変える

怒りをおぼえるような環境を避けたとしても、自分自身に行いに落ち込むことは生きている以上は避けられません。まったく気にならない幸せな人もいると思いますが・・・。

多くの場合は自分の理想と現実の差から失望は発生します。そうであれば、理想を代替できる現実へと変えましょう。

たとえば、かわいいキャラ弁、素敵なお弁当を作りたい!と思っていても、時間がなくてできなかったり、レシピ通りに作っても色味が違うということは、生ものを使った料理であればおきます。もしかしたら、使った野菜の鮮度のせいかもしれません、使った調味料が少し濃かったのかもしれません。

そもそもレシピに載っている写真が完璧なライティングのもとで撮られた写真なので、実際に作ったものでは実現できないかもしれません。その時に一番現実的な理想に近くなれば良い、少なくともレシピが使っている弁当箱より、自分の子供が好きな弁当箱に盛り付けられた料理はもっとステキと折り合いをつけましょう。

仕事のクオリティに完璧をもとめるよりも、そのタスクで達成しなければいけないゴールを実現できるのかに集中する。同じことを同じようにやるとしても、理想をアジャストすることで落ち込む感情を憶えないことができます。

③意識するポイントを変える

自分の周囲にいる知人、家族、同僚に対して、自分は劣っているなと感じてネガティブな感情に支配されてしまうなどということあります。

知り合いでなかったとしても、たとえば、ダイエットのためにスポーツクラブに通いだすと、ウェイトマシーンやランニングマシンを占拠する慣れた人たちがきれいなフォームで重いウェイトやはやいスピードで走っているのを感心するとともに、嫉妬してみたり、劣っていると感じて恥ずかしくなったり。

このようなすでにある領域で時間をかけて慣れている人を自分の比較対象にするよりも、同じような時期に入った人や同じレベルで運動している人を意識する対象とすることで、自分の運動レベルが大きく劣っているわけではないと自信が持てます。

嫉妬、劣っていると遠慮してしまうより、自分のレベルを認識して、その中でできることに自信を持つことで、先行している人たちの良いところ、優れているところを客観的に評価して、吸収することができます。

多くのメソッドでは同じレベルの人に意識をシフトするのではなく、自分自身の能力だけに集中するように勧めていますし、できればそれに越したことはないのですが、客観視がそんな簡単にできれば、そもそも問題なく。次善の策ですが、自分と同レベルの能力の人を意識して動くのが現実的な方法です。

④考え方・信じ方を変える

悲しいコトがあった、怒りがおさえられないコトがあった、喜びにあふれるコトがあったと、感情の根源にはなんらか影響をあたえるコトがあったと思いがちです。

実際には感情は直接コトから発生するだけではなく、自分がコトに対して信じる・想うことにより誘導されています。

身近な誰かを亡すことは悲しいを直接誘発しますが、よく利用しているモノを失くした場合は悲しいのが正しいと信じているから悲しいと想う。なにか良いことがあった時に、うれしいと信じて動く人と、ホントかなと信じられないということを感じて動く人がいます。

このようにコトに対して自分が妥当だと信じている感情を発生させるのであれば、そもそもそのコトに関連した感情やその強弱を自分にとって望ましい感情へと変化させることで、コントロールしやすくなります。

亡くす・失くす・無くすなどのコトを悲しいに関連付けるのではなく、身近な人を亡くした場合はかないい。そうでなければ、、寂しいけど次が楽しみとコトによって誘導される感情は自分が信じることを変えることで調整できます。

⑤反応・対応を変える

望ましくない環境を避けられず、変えられず、意識のポイントを変えられないというケースも多くあります。その場合は自分の感情をコントロールしようとせず、自分の反応・対応をコントロールすることに集中しましょう。

イヤなコト・シチュエーションにあるとき、心臓の鼓動ははやくなっていくように感じて、頭に血がのぼって、この状況を抜け出したいと拒否したくなり、強く強く怒りを感じる。誰かの一言がツボにはまってしまって、ミーティングは進んでいるのに、笑いが止まらない。

感情を感じること、表現することは重要ですし、無理にコントロールしても副作用が大きいです。ただ、極端な感情表現は相手をナーバスにします。深呼吸して、一瞬目をつぶって、極端な表現を避けて反応・対応しましょう。

実は、深呼吸と一瞬目を閉じるだけでも、相手に対して理性的な対応をしようとしているというサインを伝えられます。

アンコントローラブルになるのは、相手と自分がお互いに感情をコントロールできずに高めあってしまうという場合なので(相手が無視するような感情表現をしてもキレるトリガーになるので罵り合いのような場合でなくても感情を高めあってしまうことはあります)、サインを伝えるだけで、相手も冷静になってコントロールを取り戻せる場合があります。

5つの方法でコントロールする

5つのアプローチは日々の多くの場面で使うことができると思います。自分の感情をコントロールできないという環境になるトリガーを認識して、その環境に身を置かない・考えないというのは後ろ向きに思えるかもしれませんが、無理してまでしなければいけないことでなければ避けられるものは避けましょう。

すべてが避けられるわけではないので、どうしても避けられないものと、避けようがあったのに避けなかったことが同じ日に同じタイミングで来ると、相乗効果を持ってネガティブ・スパイラルに落ち込みかねません。

そして、避けられないことの代表が仕事に関する部分です。仕事・オフィス・同僚・上司などでの感情コントロールについて次に紹介します。

 

仕事で感情コントロールする5つの方法

感情制御が欠かせない、逃げる道の少ない仕事は、情報量の増加、継続的な変化、限定されたリソース、複雑なマトリクス組織や協力会社の数と、仕事環境は感情にとってもとても複雑な環境です。

この重要性は管理職になれば増していきます。ワシントン・ビジネス・ジャーナルの調査によると、管理職の40%の時間は社内・従業員間のコンフリクト・調整に時間を取られていると言われています。つまり、従業員としてもマネージャーとしても、職場の感情を理解・管理できるというスキルは重要になっています。

しかも、ひとつの方向性に沿ってビジネスを同じチームとして行っている以上は、感情コントロールの5つの方法のように、回避したり、変化させたり、視点をずらすということの効果は限定的です。

同時に、仕事という環境は価値観など共有している部分も多く、限定的な環境で効果的に感情をコントロールする方法はより具体的な方法が取りやすくなります。そこで、仕事においての感情をコントロールの5つの方法を紹介します・

①理解し受容する

感情を持つことは止められません。したがって、我々は上司や同僚などが感情を持つことを止めることはできないことを理解し受容しなければなりません。

仕事で感情的になる人はプロフェッショナルではないという方もいますが、感情を仕事に持ち込むことは悪いことではないということを前提として持ちましょう。上司、同僚の感情に合わせて対応をとること、感情を理解することを努力していることを伝えることは、自分自身の感情をコントロールしやすくなります。

②自分のボディ・ランゲージを意識する

多くの場合、自分の感情を理解する前に、感情はボディ・ランゲージとして体にあらわれます。たとえ、論理的に対応することができても、体の動きがアグレッシブだと取られる場合があります。

国によっては机を軽く叩くだけでもフィジカルな攻撃と受け取る文化もあるのでボディ・ランゲージのコントロールは重要です。

そこで、自分がある感情を持った時におきる典型的な体の動きを冷静な時に思いかえしてみます。眉毛がぐっとなる人もいれば、首を鳴らす人、指で机を叩く人と感情によって無意識に引き起こされる体の動きを理解しておきます。それぞれの行動に、怒りの前の行動など名前をつけておくと、より意識しやすくなります。

結果的に、自分が感情を理解する前に、体が動こうとする予兆をとらえて、自分がどのような感情に支配されて行動しようとしているのか察知して、コントロールしやすくなります。

③直感を意識する

不快だなという場面に出会う前に、話の流れや表情から望ましい方向になっていないと直感でかんじて、行動を起こすということはだれにもあると思います。

直感にもとずいてミーティングの席を立つ、会話を止めるといったことは、相手にとって理解できないことなので褒められたものではないですが、直感はたんなる思いつきではなく過去の経験から積み上げられたものなので、重要な感覚のひとつです。

なにか直感を感じたら、その直感を信じた上で、理由・環境を考えて対応するという対応することはコントロールを行う上で効果的な方法です。

④自分の事象に対する理解を整理する

なんらかのイベント・行動に対して感情が発生する時に、嫌いだ、怖い、いやだなどの感情をもとに反応をするのか、Aだから嫌いといったなぜその事象がいやなのか整理しておきます。

感情に応じての反応はたとえ正しい行動だとしても、感情的になっていると受け取られる事があります。一方で、イベント・行動に対して感情を示す場合は、理知的な対応をしたと受け取られることが多いです。

とはいえ、情動に対して毎回いったんそれを押し留めて、なぜそう思ったのか考えるなどしていると、自分でフラストレーションを貯めてしまい、結果的に感情が爆発してしまします。そこで、事前にこのようなコト好きだ、嫌いだ、気に食わないといったことを整理しておくと、イベントや行動に対してのリアクションを提示しやすくなります。

⑤以上を意識して感情をあらわす

感情をコントロールすることを止めることはできません。一昔前までは、社長は社長らしくなど理想的な職位像にあわせることが求められましたが、オーセンティック・リーダーシップなどと呼ばれる最新のリーダーシップの考え方は自分らしいさをより活用することです。

①〜④までを意識した上で、プロフェッショナルとしてふさわしく、モノやコトに関係性を維持したまま感情を示すことは、感情をコントロールして妥当な対応をしているということになります。

プロフェッショナルとしての感情コントロール

仕事という一定の閉鎖的な関係の中で感情をコントロールする方法を知ることは、自分の部下が感情的な行動をとる人の場合に対処する方法を伝えるためにも必要です。自分の上司や同僚が怒鳴り散らすなど望ましくない感情の発露をしている場合も、なぜそれが悪いことなのか本人に言うにしても、人事部にレポートするにしても冷静に伝えることができます。

もちろん自分がコントロールすることで、ビジネスをスムーズにすすめることができるようになります。避けられない環境であれば、理解して対応するという行動をとることで多くの場合は解決します。

とはいえ、方法を整理して考えると言っても、なかなか身につかない、いつもそんなことを考えていられないと思います。よく言われる「深呼吸してから・・」というのも多くの感情が刺激される場面ではそんな悠長なことは言っていられないというケースが多いです。

感情や怒りについては我々の先人も昔から苦労や試行錯誤をしてきた領域です。彼らの努力や推奨をたまに見て、対応方法を事前に考えるトリガーをつくることも有効です。

 

感情コントロールに関する名言

怒りや感情をコントロールすることの重要性を語った言葉は洋の東西、1000年前も現代を問わず多くあります。

怒りをあらわすことを戒める言葉もあれば、感情を発散することをすすめる言葉もあります。

感情をコントロールする方法を知ることも豊かな人生や仕事での成功に重要ですが、ふかく考えすぎず、先人たちの言葉に毎日一言づつ耳を傾けることも効果的です。

感情をコントロールするというと、宗教のような言葉や道徳的な言葉が多いですが、「Anger is only one letter short of danger」のような洒落た言葉もあります。

そして、怒りを管理することをすすめる言葉だけでなく、怒りを利用することを推奨する言葉もあります。マルコムXの「怒りは変化を起こす」という言葉は、どう感情と相対するべきなのか考える機会をくれます。

善く戦うものは怒らず ―老子

怒りを持つ時に話すと、決して後悔しないベストなスピーチができる ―アンブローズ・ビアス(「悪魔の辞典」著者)

怒りを抱くことは、誰かに投げつけるために熱せられた石炭を掴むようなもの。自分自身を焼く行為です。 ―釈迦

もっとも鋭い剣は、憤怒とともに語られる言葉だ ―釈迦

Anger is only one letter short of danger(Angerは危険より1文字少ないだけ) ―欧米のことわざ

たとえ妥当なことだとしても、怒りを持つ人に協調して応じてはいけません。他人の怒りを自分のものにしてはいけません。 ―ボディ・サンダース(武士道について著作のある執筆家)

あなたが反応するということは、自分をコントロールできていないということ。あなたが対応するということは、自分をコントロールできているということ ―ボディ・サンダース(武士道について著作のある執筆家)

怒りの最高の治療法は、時間を置くことだ。 ―トーマス・ペイン(「コモンセンス」を執筆してアメリカ独立に影響を与えた哲学者)

多くの人にとって、怒り狂うのは難しいことではない。ただし、怒り狂っている人を無視するほうがもっと楽だ。 ―不明

悲しみに陥っている時、なにごとも変わらない。ただ現状を嘆くだけに終わる。もし、怒りを感じているのであれば、変化を起こすことができる ―マルコムX(人種差別撤廃運動の指導者)

我々は怒りを感じている1分間ごとに、16秒間幸せを失っている ―ラルフ・ワルド・エマーソン(アメリカの思想家・哲学者)

怒りを表すことは、公共の場にポイ捨てするのと同じ ―ウィラード・ゲイリン(心理学者)

怒りはあなたを小さくする、許しは今以上の成長をくれるのに。 ―シャリア・カータースコット(エグゼクティブ向けのコーチング)

怒りは燃料だ。ロケットを打ち上げるには燃料が必要。ただし、複雑な内部機関のない燃料は単なる爆弾だ。 ―ジル・シュワルツ(コラムニスト)

憂鬱は情熱のない怒り ―不明

怒り狂え、そしてそれを乗り越えろ ―コリン・パウエル(元アメリカ国務長官、陸軍大将)

我々がどう感じるのか、なにを感じるのかは、自分の選択だ ―不明

合理的な思考は、感情が作り出すようなクリエーティビティーをおこせない ―ニール・タイソン(宇宙飛行士)