デジタルによるオートメーションとRPAの役割

ビジネス

デジタルによるビジネス変革が唱えられて四半世紀が過ぎ、2016年からはたらき方改革も大きな課題になる中で、ルールベースの自動化システムにロボットという新しい名前が与えられてRPAが注目を集めています。デジタルによるオートメーションのトレンドと課題について整理しました。

 

 

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AIでの失業

AIでの失業というニュースが話題になっていますが、オンライン化によってオンライン化によって社内にいたメールボーイなどの仕事がなくなり、1990年代からのデータベース化が進んだことでタイピストやパンチャーなどといった人の仕事がなくなりました。他にも多くの仕事がシステムに置き換えられてきました。人工知能という言葉が人の仕事を奪うという感覚を強めてしまいますが、大きなデジタル・トランスフォーメーションのトレンドの中で起こっていることであり、この状況に対応するためにはトレンドを理解して、自分のスキルセットを調整する必要があります。

 

デジタル・トランスフォーメーションのトレンド

初期のデジタルによるオートメーションはERPの導入など基礎的な情報をデータベース化することが1990年代より行われてきました。結果としてデータは多くなったもののシステムへの登録作業やダウンロード、データ統合など多くのホワイトカラーが単純作業に時間を費やす結果となってしまっていることで、RPA(Robotics Process Automation)による作業の自動化が進んでいます。このトレンドに人工知能(AI)が統合されたことで、大きく適用範囲が広がっています。

IoT(モノのインターネット)

The Internet Of Thingsは、デジタル化の大きな手段のひとつとなっています。物理的なプロセスをモニターし、オートメーションすることがIoTによって可能となっています。IoTはAIスピーカーなど家庭内の自動化としても語られていますが、より大きなインパクトは製造業の工場内で起きています。2016年単年で製造業がグローバルでIoTに関わるプロジェクトに向けた投資は2000億円以上と言われています。この投資はIoTによる製造業のオートメーションの大きな効果が報告されることが増えたことと、IoT導入コストが低減したことことで引き続き拡大するとみられています。

Analytics (データ分析)

データの統合と分析のAIによる高度化は単純にプロセス改善などに比べると効果を想定しづらい領域ですが、企業がデータを利用したプロセス改善を進めるためにより大きな効果をもたらす基盤となります。マーケティングにおいては消費者・顧客インサイトの分析、プロセスのオートメーションではボトルネックの把握などに活用されています。UBERの成功はシェアリング・エコノミーという新しいサービス形態を切り開いたこともありますが、そのバックエンドとしてドライバーと利用者双方がベネフィットを感じる価格を算出する仕組みをデータからリアルタイムで作り出すことが大きく利用を広げました。

AI(人工知能)

人工知能は今回のオートメーション改革において多くの技術革新のバックグラウンドで稼働しています。マシンラーニング、ディープラーニング、コグニティブコンピューティングなど多くの種類がありますが、情報処理のパワーを1段階上げることを実現しています。LINEやFACEBOOKメッセンジャー上のテキストベースで自動的に応答するチャットボットや、データのビジュアライゼーション、翻訳・通訳などの自然言語処理、人間であれば認識可能な範囲で画面上の情報を認識する画像処理など多くの要素技術にAIが関わっています。これらがこれまでの規定されたルールだけしかできなかった機械から、自分で学習することで変化や類推が可能となったことでロボットにより効率化推進が実現されています。

RPAのアプリケーション

ロボットによるプロセス改善は動画の画像処理など特定の領域では進んでいましたが、これを財務処理、経費処理、トラブル管理、FAQの蓄積・回答などビジネスの現場で活用することができるように一般化したツールが登場したこともオートメーションを推進しています。そして、RPAの適用が拡大するとともにさらに適用範囲が広がるという状況になっています。

 

 

RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の現状

働き方改革がスタートする理由のひとつとなった電通、みずほ銀行、三井住友銀行などがロボットを利用したプロセス改善プロジェクトを開始しており、成果をあげています。ただし、RPAのプロジェクトの30−50%は失敗すると言われています。

 

RPAとは

これまで企業はエクセルのマクロやワークフローシステムによって単一のアプロケーション内での自動化などを推進してきました。ただし、企業内のシステム化が進むと社内および社外のパートナーが提供する様々なシステムからデータを取り出して管理・運用する必要が出てきます。このような複数のシステムにまたがって、繰り返し行われる定型的な業務をロボット(物理的なロボットではなくデジタルな業務実施者)に担当させることをRPAとしています。

RPAは総合的なコンセプトとなっており、個人レベルでプログラミングなしにマクロの実施やデータ統合を実現できるデスクトップツールの導入、サーバーサイドで運営されるルールベースの自動化ツール、自然言語や学習によってルールだけでなく学習により幅広い業務に対応できるようにするコグニティブコンピューティングなど、広い領域をRPAと言われており、それぞれメリットがあり、どのレベルのRPAを実現するのかによって、想定しているモノが違うということを理解する必要があります。

タイプ目的と事例メリットデメリット
デスクトップのツール個人が行っているデータの統合や検証
(交通費生産時にYahoo!で最短経路とコストをチェックするなど)
幅広い業務に適用可能
低い導入コスト
コスト削減効果は低い
セントラルバックエンドでルールベースで社内プロセスの人からロボット化
(受注データが登録されたら社外パートナーのウェブサイトへ同じ内容を登録するなど)
プロセス全体を見直すことができる
プロセスの全社管理が可能
高いコスト削減効果
長期的な導入
運用保守費用
コグニティブバックエンドで自然言語処理などを活用して社内プロセスを統合化
(コールセンターの応答記録から自動的にFAQを生成してウェブサイトへ登録、オペレーターにも提案)
プロセス全体を見直すことができる
プロセスの全社管理が可能
高い柔軟性
高いコスト削減効果
長期的な導入
運用保守費用

 

RPAは魔法の杖ではない

ロボットを使うという違いはあれども、基本的にはプロセスの改善の方法でしかありません。オートメーション化がされる前に、全社のプロセスの一部としてセントライズ・標準化・最適化のフィルターを通すことが必要です。部分最適の積み上げは必ずしも最適とは限らないということは通常のシステム化案件と変わりません。

スケールできないロボット

失敗する理由のひとつとして、ロボットが特定の拠点内の処理や手間はかかる上位顧客向けに設計・導入された結果、せっかく導入したロボットが社内の他の部門、他の拠点などで機能しないという状態になるケースが多いのがグローバルの会社ほど多いようです。

ロボットの際限ない増加

自分が組織にいる理由をつくるために、従業員が仕事を作り出してしまうということはままあります。ロボットも自意識で行っているわけではありませんが、結果的に不要なプロセスを維持するロボットが社内にあふれるという結果になってしまい、初期にRPAを実施し会社はロボットの管理に工数がかかるようになるという状態になっているようです。ロボットが社内でどのようなプロセスを担保しているのか管理する仕組みも同時に導入が必要とのことです。