日本ではP&G出身のマーケターがChief Marketing Officer(CMO)に就任してUSJ, マクドナルドなどの再建をリードするなど注目を集めている。一方、アメリカの企業はCMOを廃してCGOへと切り替える動きが活発になってきた。CMOからCGOへと変化する役割の意図を紹介します。
機能が変化するCxO
これまでCEOへのステップと言われていたCOOが絶滅危惧種となっているという動きを紹介しました。
インターネットの拡大により、流通や消費者のライフスタイルが変わっていく中、CxOの役割が大きく変わっています。その中で、CMOが次の絶滅危惧種として紹介されています。
Chief Growth Officerの勃興
CGOはまったく新しい職種というわけではなく、10年ほど前からB2B企業やプロフェッショナルファームでの採用が始まりました。それがB2C側にも拡大しており、過去5年で多くのFMCG(日用品)企業がCGOを採用してきました。CMOをCGOに切り替えた会社としては、コルゲート、モンデリーズ、コカ・コーラなどが著名な企業が含まれていること、そして、マーケティングがリードすることで有名な企業であるコカ・コーラがCMOを廃してCGOへと変更したことが大きな注目を集めました。
CGOのプロファイルには共通点があり、86%のCGOはFMCG出身、57%が社内昇格、75%が7年以上をその企業内で過ごしているという3点になります。日本企業では珍しくないプロファイルですが、スキルポジションの役員はグローバルレベルの人材を外部から採用することを考えているアメリカのグローバル企業においては非常にめずらしいプロファイルです。
CMOの限界
CMOの拡大というのもそれほど古い話ではなく、CMOのロールが拡大しているというマッキンゼーのレポートがでたのが2007年。この記事の中ではインターネット時代の変化をリードする機能として期待されているとなっていますが、その後10年で大きく評価が変わっています。
マーケティングを担当するCMOは、ブランドをコントロールするとともにマーケティングによる市場拡大を担務としていきました。結果的に手元のポートフォリオを最大化することが責務となり、新しい領域へと手を広げることは少なくなってしまっていました。ただし、それでも充分な拡大が望めたのがこれまでの環境でした。
成長を実現するためには、短期的な成果ではなく、長期的なビジョンを持っていることと、同時にそれを実現するための仕組みを会社全体に構築することが必要です。そして、全社の仕組みを構築するのは複雑化した現代の国際企業においては大きなチャレンジで、外部から来てすぐに実現できることではないということが挙げられています。
コカ・コーラがCGOを採用した理由
コカ・コーラも世界最大級のマーケティング企業のひとつですが、2012年の$48Bの収益が2016年には$44Bへと減少しています。そして、クラシックコークと言われる赤い缶、ダイエットコークの売上は年々減少する中で、かろうじてコカ・コーラゼロのみ成長しているという状態です。この数年のワン・コカ・コーラの戦略は、コカ・コーラのイメージを拡大しているものの、セールスとしてはコカ・コーラゼロしか伸びていないという状態です。
健康意識の高まる中で、茶系飲料などのポートフォリオを拡大できているのは実はコカ・コーラ日本だけという状態です。伝統的な炭酸飲料のマーケティングから成長のために商品開発を行い、ポートフォリオを充実させるためには、マーケティングのトップではなく成長のための決断をできるCGOを必要していたということになります。
今回のコカ・コーラ社の動きは大きなマイルストーンとなったようで、欧米のメディアでは多くの記事が書かれています。
CGOの役割
企業によってCGOの役割は違いますが、CGOの役割として期待されているのは、これまでそれぞれの部門に分断されてきた、 ビジネス・デベロップメント、セールス、マーケティング、オペレーション、情報システム部門などの部門を統合して、成長への仕組みを作ることとサれています。
大きく変化していく社外の生活者、パートナー企業などにあわせて、社内のアラインメントを取ることということで、良くも悪くも専門ごとに分散してしまったリソースを統合する役割。
マーケターの役割変化
マーケターが、ブランド戦略、広告、デジタルプロモーションなどの専門家であると自分たちを規定し続ける場合には、その会社のマーケターは役員会での位置を失いCGOにレポートするファンクションのひとつになってしまうと、人事コンサルティング会社のラッセル・レイノルズはレポートしています。
コカ・コーラ社は、マーケターがデータとパフォーマンスにもとづいた施策によって成長を実現するチームへと変化することを期待していると語っています。