SOM:シェアオブマインドの算出と活用

ビジネス

マーケティングやブランディングの中で消費者の意思決定をモデル化したものは多く、もっとも一般的なものはフィリップ・コトラーの6段階のファネル(Awareness, Interest, Evaluation, Trial, Adaption, Loyalty)です。ただし、6つの数字をすべて管理するためにはコストが掛かることから、マーケットシェアに大きな影響を与えるシェアオブマインドとシェアオブハートというクラシックな指標が再度注目を集めているようです。

 

 

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意思決定モデルの進化

コトラーが1961年に発表したモデルは、認知、興味、評価、試用、活用、忠誠の6つのステージで消費者はブランド選択の意思決定を説明したものでパーチェス・ファネルとして広く利用されています。マーケティングはファネル上のステージに対応して認知をとるためのマーケティング、興味関心のためのマーケティングなどを実施することをマーケティングのタスクとして規定しています。

マーケティング・ファネルは、ダイレクトレスポンスマーケティングのようなインプットとアウトプットが直接影響するビジネスを中心に活用が進みました。

marketing funnel kotler

2000年代に入り、インターネットの浸透とともにソーシャルメディアや電子取引が一般的になると、消費者がテレビCMなどの広告でのブランド認知の前にユーザーの書いた評価に触れるなど、消費者が直線的にブランドに触れるのではなく複雑な消費者行動をとるようになりました。

この中で、クラシックなコトラーのファネルモデルは機能しないと言われ、新しいモデルが提案されるようになり、有名なものとしてはマッキンゼーのパーチェス・デシジョン・ジャーニー(消費者意思決定ジャーニー)と呼ばれる円状のモデルが利用されるようになりました。

Consumer Decision Journey – McKinsey

このような新しいモデルは概念としては正しいことがわかっても、実務に利用しようとすると、6つのステージのファネルを数字で管理することが高コストとなること、またジャーニーモデルではそれぞれのステージが影響し合うため、プランニングでは利用できても、マーケティング活動の効果をトラックするには理解するのが難しい数値の組み合わせになることが往々にしてありました。

そこで、マーケットシェアやセールスに影響を与えるより大きなポイントを数値でKPIとして把握し、各ステージについては概念的なプランニングに利用できないかということで、マーケットシェアに大きな影響を与える要素として、シェアオブマインド、シェアオブハートの2つを管理することが提唱されました。

 

マーケティング・ブランディングを管理するKPI

マーケティングのROIを測る数値として、マーケティング活動が与えたセールスへの影響をもとに数値化したものをmROIなどと言っています。1円投資した時に、1.5円売上が上がればmROIは1.5という事になります。mROIは活用が進みましたが、mROIは長期的なブランド効果を計測できるものではないため、短期的な効果だけを追い求めることとなってしまいます。

そこで、mROIに加えてSOM(シェアオブマインド)、SOH(シェアオブハート)の3つをKPIとして中長期から短期効果までを把握しようというのがSOM、SOHに注目が集まっている理由です。

具体的には、マインドシェアとも言われるSOMは認知から試用までのブランドとの関係性を構築する初期段階のことを指します。前述したとおりソーシャルメディアの発展により知識からブランドの関係が始まりブランド認知になるなど、消費者は複雑にステージを移動しながらブランドとの関係を構築していきますが、この初期段階すべてを統合してSOMと称します。

一方で、ブランドを購買してより深い関係になっていくブランドの関係の後期を統合してSOHと称します。こちらも直線的にステージを経ていくのではなく、周囲の影響でブランドへのエモーショナルな利用から継続購入に進む場合もあれば、合理的な消費者として継続的に利用する中でエモーショナルな関係を作り推奨する人になるまで、非直線での関係となりますが総合してシェアオブハートとして統合管理します。

それでは具体的にどのような数値をもって管理をするのか、これもモデルの提唱者により多くの方法が紹介されています。共有しているのは、そもそもの目的が複雑化する消費者の購買行動をシンプルに管理するという点にあるため、簡易な調査で確認できる方法とされていることが多いです。

シェアオブマインド

方法:ネット調査

設問:あるカテゴリーについて思い浮かぶブランド名を教えてください

計算式:シェアオブマインド(%)=純粋想起のブランド認知/全調査対象者数

ブランドの名称や商品をみて認知していると答える助成想起(Aided)のブランド認知ではなく、カテゴリーについて思いつくUnaidedのブランドを純粋想起として活用しています。

シェアオブハート

方法1:ネット上の評価サイト(価格コム、アマゾンなど)

計算式:シェアオブハート=ネット上の評価点(1−5点など)の平均値

シェアオブハートは調査で確認されることもあり、その場合はNPS(ネットプロモートスコア)を持ってシェアオブハートとする場合が多いようです。

方法2:ネット調査

対象:ブランドの購買・利用経験者への質問

設問:友人知人にこのブランドの利用を勧めるか教えてください

計算式:シェアオブハート(%)=推奨する人の数/全調査対象者数

 

このようにSOM, SOHは、純粋想起・NPSなどの名前で古くからあるものです。特に純粋想起はトップオブマインド分析というクラシックな分析方法でよく利用されてきました。

これまでのマーケティングは認知からスタートする場合が多く、Aided Awarenessが重要視されていましたが、助成認知で知られているだけでは意味がなく、興味関心を持ってブランドとの関係をもっていもらわなければ、指名買いが多くなるネット通販が広がる中で最終的なセールスにつながらないため認知の重要度が相対的に下がったことにあります。

一方で、購買後についてはブランドロイヤルティが重視された時期があり、メールアドレスの登録数や、フェースブック、インストグラムなどが浸透する中で広まった「いいね」の数をマーケティングの効果として活用するという時期がありました。しかし、いくらソーシャルメディアの中でいいねを集めても購買に結びつかないということが確認されました。

これに状況において、非直線・ノンリニアな顧客行動の中では、純粋想起とNPSがセールスへの影響度が大きいことが理解され、中長期的な効果をSOM/SOHで把握し、短期的な効果をROIで調査・分析・定点観測することが多くなりました。

 

理想的な方法

複雑化する消費者の意思決定や購買行動の中で、SOM, SOHなどのトラッキングしやすい数値をKPIとして管理するというアプローチが代替案とられています。しかし、理想としては各ステージの関係性やブランドの位置をステージごとに把握できることは望ましいです。

今後、フェースブック、グーグル、アマゾン・楽天などのプラットフォームのデータを活用して詳細な消費者ジャーニーを整理しKPI化することができるように進んでいくことが予想されます。一方で、アナリティクスに関するテクノロジーが進化する一方で、フェースブックの事件などプラットフォームの消費者データ利用について慎重になる可能性もあります。

今後、どのような技術や指標が生まれるのか、まだまだ進化が進みそうで面白そうです。