自分の潜在的な能力、可能性を客観的に理解することは難しいことです。何年もにわたって特定の仕事やスキルの向上に打ち込んで能力を開花させようという試みは、同時にもしかしたら自分が持っているかもしれない他のスキルに関して無視してしまうことになるかもしれません。才能を無駄遣いしている、もっと他にやれることがあるのにと他人に対して思うことはあっても、自分も人にそう思われていることに気づくのは困難です。
多くの人はある領域での強みを持っていますが、現状を変える努力や試みをするには時間もなく、安定を捨てることも居心地が悪いため、強みを活用している人は少ないと言われています。結果として、多くのビジネスパーソンは本来の自分の能力を活用できていないとフラストレーションを抱え、人生の目標を持てないと嘆いているのは就職氷河期を過ごしたロストジェネレーションのインタビューなどでも頻出します。結果的に自分のキャリアという坂道を登るのを諦めてしまうという結果にもつながってしまいます。
人生の目標が重要なことは就職を控えた学生や日本人に限らず普遍的で、Linkedinの「仕事をする目的」という調査では、50歳以上の48%、30代の38%、20代の30%が「給料や役職よりもやりがいにプライオリティを置いている」と答えています。
自分の能力を把握し、自分にあった仕事をすることは非常に幸せなことのようです。ただし、そのためには客観的に自分の能力や可能性を理解しなければなりません。そこで、コーチングのコーチをする人たちが利用している、能力を理解するための7つのシンプルな方法を紹介します。
Time To Introspection
Introspectionは自分のことを見直すことです。なにごともスピードが早く、すべてがつながっていて、テクノロジーに溢れた環境において、自分のことを見直すという時間をとることはかえって難しくなっています。じっくりと時間をかけて考えるよりも、人にあって話を聞く、ネットで調べる、インフルエンサーの話を聞くなど行動をすすめるプロセスが多く、内省的になるよりも行動が進められる世界です。
目的がないタイミングだったとしても、なにも手に持たず考えるためにコーヒーを飲んで時間を過ごすことより、スマホをみて、PCで仕事をしてとなってしまいます。自分自身について疑問を持ち、もやもやっとした思いを整理して、自分の興味があることをリストにしていく、そんな時間を定期的に持つことで自分自身のスキルにセンシティブになることができます。
Experience Gift
少し内省的になる時間を作ってもやもやっとしたことをリストにしていくと、やりたいことがぼやっとしたことでもリストになると思います。今度はそれをひとりでやってみるという行動をとります。ライン、ツイッターと一緒になにか行動を起こそうという時に、一緒に動いてくれる人を探す、同好の士を見つけるのは難しくなくなりました。
そこで、自分ひとりでやってみるという経験をすることで、リストをより明確なものにしていくことができます。強制的にそのような状態に追い込むのであれば、ひとりで少し遠くに旅をした上でやりたいことをやってみるのが簡単です。環境を変えて新しい価値観から物事を見ることもリストをクリアにすることをサポートしてくれます。
Step Outside Comfort Zone
たとえば口でどう言おうとも、人間は変化を嫌う動物です。どれほど今の仕事に飽きて、人間関係がうまくいかない職場であったとしても、外部の力で変化を矯正されたときにはまず否定から入ってしまうものです。しかし、変化しなければ自分の強みを発揮する場所へと移動することは叶いません。
たとえどれだけ不満を持っていたとしても現在の自分を否定して、不安な領域に足を踏み出すことは自分の強みをテストして、スキルを上げるためには必要なステップです。実際にはそれほど難しいことをしなくても、不安な領域に触れることはできます。たとえば、
・オフィスにいない時に考えていることしていることを整理して、優先順位をつける
・自分ひとりになれる時間をつくる
・苦手と思っていることをやってみる
・いままでやったことのないことをやってみる、教室に通ってみる
・ボランティアに参加してみる
不安な領域、不安定な環境になった時にこそ、どうするべきか自分がなにができるのか考えることができます。
List of Strength &Weakness
古典的でよく言われる手法ですが、何年にも渡って推奨される方法というのはその方法が効果的だからです。自分が得意なことはなんなのか、なにが下手なのかは、書き出していく工程を経なければ整理されません。そして、次の一歩に踏み出すためには、書き出すということは効果的なステップです。
それはつまらないことかもしれません。Zガンダムのセリフをすべて暗記していることかもしれませんし、ただ姿勢が良いということかもしれません。姿勢が良いということがどんな意味を持つのかどんな時に効果的なのか、書き出していくことでつまらないと思っていたことが意外な強みになっていることに気づくことができます。
Personal Test
世の中には多くの能力や強み弱みなどを把握するツールがあります。人事部主導の研修などで受けたことがある方が多いのではないでしょうか。Googleで検索すると多くの心理テスト、リーダーシップタイプのテストなどがあります。これらのテストの結果が正しいか正しくないか、結果に一喜一憂することはあまり意味がありません。
ただし、テストに使われている質問は、自分の行動や興味について深く考えさせよう、あらわにしようという意図で作られています。これらの設問に答えていくことは、自分のタレントを知る一助になります。
せっかく新しいタレントを知ろうというのであれば、英語でテストを受けてみるのも一つの方法です。なれない言語で受けると結果はともかく、質問についてひとつひとつ深く考えることができます。
Gallup Strenghts Finder (GSF)
Myers-Briggs Type Indicator (MBTI)
16 Personality Factor Questionnaire (16PF)
Revised NEO Personality Inventory – 3 (NEO-PI-3)
Daily Journal
レコーディング・ダイエットは続けることは難しいけどもっとも効果的な方法のひとつです。同じように、自分のタレントを理解してそれを発揮できる場所に向かおうという日々を記録していくことは、自分の理解しているタレントが本当に自分を反映しているのか、それともまだ浅い理解なのかなどを整理してくれます。日記だからといって毎日書く必要はありません。それよりもランダムに最近のことを思い出して書いてもいいですし、キャリアだったり、子供の頃のことだったりをまとめて書き出していくということも有効です。
Go through High School Scorecard
高校生の通信簿や連絡表、先生からの年賀状やメッセージなどが保管されていたらそれをみてみましょう。高校生は子供から大人、理想と現実、進路と夢など多くの可能性が残されている中で方向性を決める時期です。同時に、現実を知識として理解しながら臆面なく理想を口にできる最後のタイミングでもあります。通信簿や連絡表を見直すことで、その頃の自分が一番興味を持っていたことを思い出すことができます。
そして、その興味や関心が厳然たる数字として5段階で評価されたり100点満点で採点されているというのも高校生のスコアカードが面白い理由です。もちろん高校を卒業してから、新しい環境や知人により人はどんどん変わっていきます。それでも自分の原点として、True to yourselfである評価を見直すことは気付きを与える体験になることがあります。
7 Simple Steps
内省的な時間をとって、ひとりになって、あまり考えたくないことを考えて、強みと弱みを書き出す。その内容をテストして、記録する。少し昔の情報をひっくり返してみる。なんでもないようなことに思えますが、そんな時間を過ごしたことが最近あるかというと難しい。言うがやすし行うは難しという典型のようなものが「自分のタレントを知るシンプルな7つのステップ」です。ただ、あまり難しく考えず、長い人生の中で時々時間をとってみるというチャレンジを続けるという時間を使うということは大きな投資です。
自分のタレントを見つけたとしても、それを発揮できる場所に行くためにはハードルがたくさんあると思います。理解した上でハードルを越えようとすれば難しくないことも多いです。課題がわかりさえすれば解ける問題は多いです。7つのステップはアプローチを示したものです。方法はひとそれぞれ。座禅に打ち込むのも、山を歩くのも、家で音楽を聞くのも、方法はいろいろあると思います。