ニュース・スポーツはライブ、それ以外はオンデマンド

ビジネス

アメリカのテレビ局ネットワークNBCが、クロスプラットフォームでのメディア消費についてのレポートを2020年9月に発表しました。テレビ番組を楽しむには番組表を観てテレビをつけて、今放送中の番組を観る(リニア視聴)というシンプルな時代から、スマートデバイス、ストリーミング、ビデオオンデマンドなど選択肢が増える中での環境変化を調査したものです。

NBCUniversal One Audience Trends Report

NBCがテレビ広告を売り込むための調査なので割り引いて見る必要がありますが、アメリカでコンテンツがどう消費されているのか知るのは日本のエンタメについて知るにも面白いデータです。特にNBC Peakokという自社の動画配信サービスをスタートさせて、複数チャネルのテレビから動画サービスを用意する仕組みを整えたばかりのNBCが調査やレポートをまとめた意図を考えていくと、テレビ、ストリーミングや広告のセールスピッチが想像できてきます。

スポンサーリンク

ニュースとスポーツはライブで観る

見逃し視聴やテレビドラマをオンデマンドでの一気観するなど、視聴形態が変わっていく中でもニュースとスポーツについては、90%の視聴者がライブで視聴。それ以外のドラマやバラエティについては、18-49歳の視聴者でライブ視聴をしているのは30%以下、50歳以上のシニアでも50%がストリーミングやオンデマンドでの視聴をしています。

ドラマやバラエティでは月曜日に放送された番組の視聴者数のピークは火曜日、水曜日になるといった情報も掲載されており、広い視聴者層をかかえるニュースとスポーツの価値と、限定的な人にしかリーチできないドラマやバラエティの価値を同じ視聴率という指標では検討できないでしょうし。ドラマやバラエティを好む層には、テレビだけでなく同じジャンルのビデオオンデマンドでの視聴にあわせた広告出稿が必要ということになります。

スポーツは鉄板だ!ということでコロナウィルスの影響から再スタートしたスポーツとそのテレビ中継ですが、アメリカでは残念ながら視聴率が例年よりも大きく下がっているとのこと。NBA, NHL, NFLといった人気スポーツが再開後に同じ時期に重なって実施されている影響が大きいようで、スポーツ全体の視聴者数が増えても個別の試合の視聴率がふるわないというのは、スポーツ興行の難しさを感じます。

No, sports' TV ratings haven't been great since returning. Despite what President Trump and others say, it doesn't really matter
It's important to understand the context here, and what TV ratings actually measure.

デジタルが拡大してもテレビスクリーン

デジタルでの視聴がどの年代でも大きく拡大しているという数字にも関わらず、74%のNBU digital contentはテレビで観られているということです。Convivaが2019年に発表したストリーミングを利用するデバイスは、北米では55%がテレビ、23%がモバイル、PCが14%という比率でした。コロナウィルスの影響でよりテレビスクリーンの利用が拡大していると思われます。スマホでのビデオオンデマンドやストリーミング視聴が多くテレビでの視聴が10-15%程度の日本とは大きく違う部分です。

Newsroom Archives - Conviva
Stay updated with our latest news and developments on the Newsroom page. Explore press releases, announcements, and insights into our company's activities now!

スマートテレビやストリーミングデバイスでテレビでアクセスできるコンテンツが増えるに従って、テレビスクリーンでの視聴が増えるということでは、まだまだスマホのみのコンテンツが多い日本も今後テレビスクリーンの利用拡大が想定されるかもしれません。

半沢直樹は正しかった?

半沢直樹シーズン2が放送開始後、TVerではダイジェストのみの配信ということで大騒ぎに。その後、お金を払わないと観れないのかと思っていたところへ最終話の放送終了後すべてのエピソードをTverとParaviで視聴できるようになるということで、こちらも驚きをもって迎えられました。

テレビ放送のドラマを人気を背景にストリーミングを制限することで、テレビでの視聴やその広告の価値を維持しつつ、イッキ見というストリーミングの視聴形態へ対応した提供を期間限定で行うことで、テレビでは観ないという層も確保するということで、視聴形態変化に対応した提供方法になっていると思います。このような形態が一般化するのか、広告パッケージや妥当な収益モデルになるのかなど興味深いです。

ストリーミングデバイスの動き

テレビでの視聴はスポーツとニュースという状態に対応する動きも日本で観られるようになりました。テレビでストリーミングをするため機器の代表格のAmazon FireTVは、2020年9月にLive機能を日本でもリリースしました。Liveという画面に行くと、ニュース番組を持つABEMAやHulu、スポーツ放送を行うRedbullTVやDAZNといった番組を視聴できるということです。9月末にはGoogleのChromcastも新しいデバイスを発表し、Android TVにLive機能を組み込んだことを発表しました。

Fire TVがさらにテレビっぽく。ライブコンテンツをぎゅっと集めたタブがあらわれた
AmazonはFire TVに新しく「ライブ」というタブを作りました。このタブを開けば、Fire TV上のアプリのライブコンテンツ一覧がどっさり表示され、「今」見れるものにすぐにアクセスできるんです。
TechCrunch
TechCrunch | Reporting on the business of technology, startups, venture capital funding, and Silicon Valley

この中であまりライブというイメージのないHuluがしっかり対応しているということに、日本テレビの対応力を感じます。とはいえ、10-12月に行われる日本テレビのプライム時間帯の番組をTVerでテレビの放送と同時配信するテストでは、スマートテレビやFire TVはもちろんのこと、Chromcastのミラーリングも対象外と記述があるなど、手は打ちつつもトラディショナルなテレビを維持したいという想いを感じます。