聞いたこともない巨大企業:McKesson (マッカーソン)

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仕事で見込客のリストを作らねばならずFORTUNE500の最新リストをながめていると、意外としならい企業ばかり。その中でも、FORTUNE500という巨大企業のリストの5番目にランクする会社McKesson (マッカーソン)。恥ずかしながら聞いたこともありませんでした。アメリカでのビジネス雑誌でも「知られていない企業リスト」に取り上げられていたこともあり少し調べてみました。

 

 

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最新のFORTUNE500

フォーチュン500は、米国フォーチュン誌が年1回発表する企業のランキングとしてはS&Pと並んでもっとも有名なもののうちのひとつです。S&Pがグローバルのランキングなのに対して、フォーチュンは全米上位500社がその総収入に基づきランキングされたものです。

最新のランキングでは、ウォルマート、バークシャー・ハザウェイ、アップル、エクソン・モービルと有名企業が並びます。しかし第五位あたりからマッカーソン、ユナイテッドヘルスなど知らない企業と知っている企業が混在します。

金融系の会社にでもいない限り、トップ100までのすべての企業を知っている日本人はほとんどいないのでしょうか。とはいえ、聞いたこともない全米第5位の企業というのは気になります。

Fortune 500 2017 List

 

McKesson (マッカーソン)の企業情報

マッカーソンは、1833年に設立されたサンフランシスコをベースとする企業で、アメリカでもっとも古くてもっとも大きなヘルスケア関連企業と自社を紹介しています。

ヘルスケアといってもフィイザーのような製薬企業ではなく、全米最大の調剤薬局チェーンを運営しており、アメリカで処方される薬品の三分の一はマッカーソンで調剤されているとのこと。調剤薬局チェーンだけでなく、医療機関向けに包帯、温度計、手術用品などを納品する流通機能を提供しています。

One Minute at McKesson

ビジネスの領域

事業領域として設定しているのは、医療用医療品流通、医療用品製造、処方薬局、医療機関管理ITシステムの4領域。コーポレートスローガンは「Empowering healthcare」です。

business area of mckesson

マッカーソンの巨大さを示す数字はたくさん見つかりますが、いくつかピックアップするだけでもその大きさが理解できます。

  • フォーチュン500第5位
  • アメリカの処方箋の1/3を処方
  • 全米第4位の処方薬局チェン(4700店舗)
  • 全米の医療機関の76%が顧客
  • 全米の医療保険上位25社のうち24社はマッカーソンの管理システムを利用
  • アメリカ・カナダに7万人以上の従業員
  • データ分析企業としては最大級の1社

マッカーソンのファイナンス

マッカーソンは年率5%程度で過去10年以上成長を続けており、グロスマージンは6%と流通業らしく高くありませんが、着実に手元のキャッシュを積み上げています。

CoverMyMed社を買収するなど堅実な財務状況を活用してM&Aを行うことで、流通からサービスへとビジネスの領域を拡大をしています。また、ベンチャーに投資するファンドも設立しており、ベンチャー支援によるイノベーションの取り込みに本腰をいれています。

経営陣については、CEOのJohn HammergrenがHarvard Business Reviewのもっとも活躍しているCEOの40−60位に選定されるなど、高い評価をえています。一方で、近年問題となっている経営者への巨額報酬については、CEOのJohn Hammergrenは過去10年間で692億円ということで、CNNなどで収入が多すぎる経営者のひとりとしてハイライトされています。

知られていない巨大企業

本拠地であるアメリカでも知られていない企業(you’ve never heard of)という記事になることがあります。Fortune, Forbesなどマッカーソンで検索すると、記事が出てきます。

McKesson: The healthcare tech giant you’ve probably never heard of
CEO John Hammergren talks about how medical tech helps save lives and money.

 

ヘルスケアのテクノロジーは、マイクロソフト、オラクルやスタートアップなどテクノロジー企業やアクセンチュアのようなコンサルティング・ファームが発信しているものが多いですが、ヘルスケア・テックの領域では多くの情報やオピニオンを出しています。

CEOもインタビューに答えていますが、大きな強みとなっているのは、医療施設内のIT化を担当することで巨大なデータベースを構築していることです。

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SWOTアナリシス

SWOTで整理してみても、とても健全な会社です。ヘルスケア領域では現在も鎮痛剤Opioidの問題で規制が議論されるなど政策による振れ幅が大きい領域です。ただし、それを除くと、高齢化は味方をすること、海外展開できる領域も広くまだ成長余地の多い会社となりそうです。

 

Strength 強み

  • ヘルスケア領域の幅広いソリューション・ポートフォリオ
  • B2BとB2Cのリテールを両方大きなサイズで運営
  • 高い医療従事者の認知
  • 健全な財務状況
  • アメリカ・カナダでの巨大なオペレーション
  • 医療機関・医療履歴のデータベースを持つ

Weakness 弱み

  • 米国の複雑・高額なヘルスケアシステムに集中したビジネス
  • トップ10の顧客で50%の利益を稼いでおり大手医療機関へ顧客が集中
  • 動物試験など複雑化がさらに進むヘルスケア領域の法律・規制によるコスト増
  • 海外展開はオーストラリア、英国など限定的(83%のレベニューは北米から)
  • 競合と違い純粋な流通業であり医療情報プロバイダーとして機能していない

Opportunity 機会

  • セルフメディケーション推進により拡大するOTC市場
  • アメリカでも進む高齢化によるヘルスケア市場の拡大
  • ヘルスケアの効率化をすすめる政策によるソリューションビジネス拡大
  • オンコロジー(腫瘍・ガン)など高利益率、多品種小量薬剤による医療流通の収益

Thread 脅威

  • ヘルスケア政策による収益性・ビジネス領域の変化
  • スタートアップなどによる医療系情報システムの参入

 

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