デジタル・エージェンシーのポジショニングと評価

Digital Agency Mapビジネス

デジタルマーケティングの領域は、コンテンツ、メディア、CRM、マーケティング・オートメーションのようなテクノロジープラットフォームなど領域が拡大する中、ビジネスストラテジーと統合されたデジタル・マーケティングを提供するコンサルティング・ファームが参入するなどプレイヤーが拡大しています。グローバル調査会社のガートナーが広告主向けにグローバル・デジタル・エージェンシーのポジショニングをレポートしています。

 

 

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デジタル・エージェンシーのランドスケープ

調査会社のガートナーが3月にリリースしたレポートで、デジタル・マーケティングを提供する広告会社、コンサルティング・エージェンシー、システム会社などを提供する会社を、広告主のニーズであるデジタルトランスフォーメンショーン、コンテンツ、テクノロジー、メジャメントやアナリシスについて評価するとともに、広告主のデジタル上での成長を支援する能力を評価し、ビジョンと実行能力の2軸上にマッピングしました。

Magic Quadrant for Global Digital Marketing Agencies

Source: Gartner (March 2018)

 

4象限は、ビジョンと実行能力の揃った「リーダー」、ビジョンに強い「VISIONARIES」、実行能力に強い「CHALLENGEER」、どちらも能力が低い(もしくはこの2軸とは別の所で差別化されている)「NICHE PLAYERS」にわけられています。

ビジョンと実行能力が両立されている会社としては、WPPグループのAKQA、電通イージスのISOBAR、PublicisのSapientRazorfishがリーダーの位置にマップされています。上位陣の中でよりビジョンや将来的なテクノロジーにフォーカスしているのがIPGのRG/A、実行能力に秀でているのがPublicisのDigitasとIPGのMRM/McCANNという評価です。

コンサルティング・ファームだけ取り出すと、アクセンチュア・インタラクティブは相対的にビジョンに強く実施能力は低いとされ、デロイト・デジタルやPwCは実施能力が強い、中間に位置付けられているIBM iXという傾向になっています。

 

各社の評価:強みと弱み

このレポートは、マップ上の位置付けで会社を評価するよりも、それぞれの強みをそれぞれ評価しているため、レポートの大半が個別の会社の評価になっています。

例えば、リーダーのAKQAとDeloitte Digitalであれば以下のようになっています。

AKQA

マーケティングインサイト、クリエーティブ、統合ブランド体験をグローバルエージェンシーとして提供。ナイキ、ネットフリックス、デルタエアライン、ベライゾンなどをクライアントに持つ。2017年にはDIS/PLAYとDTを買収、ヨーロッパ・アジアでのフッテージを拡大している。

強み:

Experience:体験型マーケティングをデータ活用でデザインする方法論を確立し、デジタルとリアルの顧客体験を提供できる。NIKEやTAG HEUERの案件では人工知能を活用するなど先進的なテクノロジーの活用にも優れる。

Mobile:洗練され複雑なモバイルソリューションをサービス、しかもスケーラビリティを持って提供することができる

Creative:高いクリエーティビティに定評

弱み:

LATAM:ラテンアメリカでは限定的なプレゼンス

Data & Analysis:データの活用についてAKQAのクライアントは満足しているが、インダストリーのリーダーたちから高いと評価はされていない

Deloitte Digital

Deloitte Digitalはチャレンジャーに分類される。Deloitteの一部門としてテクノロジーとクライアントの業種業務知識に優れ、トラディショナルな広告会社のビジネスとコンサルティングの統合を目指している。2017年も買収によりクリエーティブ、デザインを含むケーパビリティ拡大を実現している。

強み:

Strategy & Execution in CX:コンサルティングのケーパビリティから戦略をカスタマージャーニーのすべてのステップにおいて統合された実行することに優れている。パーソナライズされた体験マーケティングを提供するためにデータ、クリエーティブ、ECを買収により構築し、トラベルや流通領域で実績を出している。

Tech Deployment: セールスフォース、アドビ、デルなどのソリューション・プロバイダーと協力してテクノロジープラットフォームを導入し、ビジネスの効率化を行うことに優れる。

Quality collaboration, Support & Delivery:クライアントインタフェースに優れ、Can Doを信条とするカルチャーとクライアントが必要な時にリーチできる。

弱み

Knowledge transfer during transition:クライアントはプロジェクトを終了すると社内のリソースでビジネスを推進できないことが多く、知識の移転に課題ありとしている。

Resource Integration:M&Aで拡大しているため、買収したチームが統合されたサービスに組み入れられていない。

 

パートナーを探すための指標

このような詳細な会社評価が全社分用意されています。それぞれの会社の出自により強み・弱みは違うため興味深いコメントが多いです。デロイトデジタルのナレッジトランスファーが足りないという評価などを読むと、トラディショナルな広告会社と違いクライアントはサービスを提供するだけでなく、自社のプロセス整理とオペレーションエクセレンスの確率のためにデロイトなどコンサルティング系広告会社をアサインしている部分もあり、ニーズの違いがあるということを再確認できます。

ガートナーはパートナーとして必要なケーパビリティを判断するための情報と書いています。必ずしもリーダーが自社のパートナーである必要はなく、社内でデータ分析を十分やっていたり、制作会社とクリエーティブと良い結果を出しているのであれば、ビジョンよりも実行能力の高い広告会社をパートナーとするべきということですね。

今回のマップですが、同じものを3年前に作っていたらコンサルティング・ファームはランクインしていなかったでしょう。新たにグーグルが予算を預けてくれればビジネスの結果を提供しますというグーグルが運営してくれるサービスを開始し、これまで広告会社やコンサルティング・ファームが行ってきたサービスの一部を自社サービス化しています。

まだまだ、デジタルの世界は変化が激しいですね。2年後の2020年にどうなっているのか楽しみです。