コンテンツマーケティングは企業のプロモーション手法である以上、当然投資に対するリターンが必要です。では、リターンをなにを計測するのか、どうやって計測するのかというのが議論となります。また、コンテンツマーケティングは一度やったらおしまいというものではなく、コンテンツを修正・調整して最適化する必要もあります。ということで、コンテンツマーケティング全体から個別の施策の評価まで、効果測定のフレームワークをまとめてみます。
効果測定対象の数値の例
デジタルマーケティングにおいては、多くの数値を取得することができます。コンテンツのフォーマットや利用するプラットフォーム、マーケティング責任者、制作担当者など、実施施策と管理者の職責に応じて重視する指標は変わります。大枠の目安のために31種類の基礎的なKPIを、コンテンツの消費、アクティブユーザー、シェア(共有)、エンゲージメント、リードジェネレーション、セールス、コンテンツ制作、投資効率の8種類に分類しました。
コンテンツ制作担当者であれば、コンテンツの消費、アクティブユーザー、共有などを重視することになると思います。コンテンツマーケティングの責任者は、リードジェネレーション、セールスおよび制作効率などが鍵となると思いますし、P/Lを負う立場の方は投資効率となるでしょう。
目的と計測するKPI分類
分類 | 対象 | 項目 | 詳細 | |
---|---|---|---|---|
コンテンツの消費 | Website, Video, Blog | Page View | ページビュー | |
Website, Video, Blog | Unique Visitors | ユニークビジター数 | ||
Website, Video, Blog | Average Time On Page | 平均滞在時間 | ページ単位での平均消費時間 | |
Email Open | メール開封率 | |||
Email Clicks | メールクリック率 | |||
Website | Asset Download | ダウンロード | メールなどの登録によりホワイトペーパーなどをダウンロードされた数 | |
Website | Registration / Opt-in | 会員登録 | 会員登録数や、会員登録フォームへたどり着いた人数を完了した人の数で割ったもの | |
アクティブユーザー | Website, Video, Blog | Return Rate | 継続閲読率 | リピートユーザーの比率 |
Website, Video, Blog | Bounce Rate | 直帰率 | ||
Website, Video, Blog | Page Per Visit | 訪問あたり平均ページビュー | ||
e-mail, Social | Unsubscribe / Opt-out | 会員離脱 | ||
Social | Follower Count | フォロワー数 | ||
シェア | Social | Social Media Share | シェア数 | |
Social | Social Media Likes | ライク数 | ||
e-mail forwards | メール転送数 | |||
エンゲージメント | Blog, Social | Comment | コメント数 | |
Website, Video, Blog | Session Duration | 平均セッション継続時間 | セッションあたりの閲覧していた時間 | |
Website, Video, Blog | Page Depth | 訪問あたりに閲覧ページ数 | 1回の訪問において閲覧される平均ページ数 | |
リードジェネレーション | Website, Video, Blog | New Lead Generation | 新規見込客発生数 | |
Website, Blog | Exsiting Lead Touched | クリティカルパス接触済見込客数 | コンバージョンにつながるコンテンツへの接触や行動を起こした新規見込客数 | |
Website, Blog | Funnel Conversion Rate | コンバージョンレート | 認知からエンゲージメントなどへ進んだ人数の比率 | |
Website, Blog | Cost Per Acquisition | 平均獲得単価 | 新規見込客の獲得単価 | |
セールス | Website, Blog | Pipeline Generated | パイプライン総価値 | ファネルのコンバージョン率にトップオブファネルの数をかけることで最終コンバージョンするであろう利益の合計 |
Website, Blog | Pipeline Touched | クリティカルパス接触済パイプライン総価値 | 上記パイプライン総価値のうち、コンバージョンにつながるコンテンツへの接触や行動を起こしたことに限定したもの | |
Website, Blog | Revenue Influenced | 影響を受けた利益 | コンバージョン前に1−2個のコンテンツに接触した人の合計価値 | |
コンテンツ制作効率 | Website, Video, Blog | Time To Publish | 制作までの時間 | |
Website, Video, Blog | Content Throughput | 一定期間内の制作ボリューム | 例えば1ヶ月間に制作するビデオの分数や記事の文字数 | |
Website, Video, Blog | Content Backlog | 平均顧客待機日数 | 平均新規記事の投稿間隔を訪問間隔で割ったもの | |
Website, Video, Blog | Production Cost Per Post | 平均エントリーあたり制作コスト | ||
Website, Video, Blog | Distribution Cost Per Post | 平均エントリーあたりコスト | ||
投資効率 | Total | Cost Per Revenue | 平均レベニューあたりコスト | |
Total | Return Of Investment | 投資対利益 |
効果測定のポイント
アクセス数がある日突然伸びるなど、KPIが大きく数字が跳ねると嬉しいですよね、モチベーションになります。モチベーションを持つのは良いですが、突発的にトラッフィクの向上が発生することは、運営して入れば一定の頻度で発生します。ソーシャルメディアで特に顕著に発生します。
なぜ変化がおきたのか理由を理解することも重要です。ただし、必ずしも大きな山(スパイク)として流入したトラフィックが高いコンバージョンを示すわけではありません。どちらかというと一過性のアクセスは顧客化しない率が高いです。このようにKPIをみるときにはいくつか気をつけておく必要があることがあります。
トレンドに注目しよう
直近の数字だけに注目するよりも、継続的にリード数が伸びている、継続的に高いコンバージョンを維持しているなど、時系列の変化を確認しましょう。ポジティブな状態を維持しているのか、ダウントレンドになった時には理由を調べましょう。
態度・行動に関わる数字を重視しよう
ページビュー、ユニークユーザー数、フォロー数、ライク数などの数字がKPIとしてよく出てきます。これらの数字もベンチマークとして他社などと比較する際には重要です。
ただし、ユニークユーザー数だけを見ても、数百回訪れている1人のユーザーなのか、1回しか訪れない1人のユーザーなのか分かりません。計測するべきなのはビジネスゴールに向けてどの程度の価値があるのか計測することになります。せっかく自社で運用して自由に数字にアクセスできる環境があるのですから、ページビューよりもページデプス(訪問あたりに閲覧ページ数)、ユニークユーザー数やフォロー数よりも、パイプラインの総価値を確認していくことで、コンテンツマーケティングのエコシステム全体での効率や長期的なブランド効果を管理することができます。
コンテンツマーケティングのベンチマーク
コンテンツマーケティングに限らないですが、上司から「競合他社と比べて自社の平均獲得人数は勝っているの?」など無邪気な質問を受けることがありますよね。とはいえ、公表されて言う数字はほとんどありませんし、必要な数字を買ってくれとベンチマーク用データベースに契約してもらえるかというと、予算化できないという結果に終わったりします。加えて、日本はケーススタディの共有される機会が未だに少なく、公表されている数字に限りがあるので、より厳しい状況に置かれます。
ソーシャルメディアはフェースブック、ツイッターなどプラットフォームが公表している数字もおおいので、課題になるのはウェブサイトやメールなどになります。ということで、なにもないよりは、ということで、ベンチマークとなる数字をグローバルやUSの数字から推定しましょう。いくつかのソースをまとめました。
コンテンツマーケティングの運用
Content Marketing Institutionが、B2Bでのコンテンツマーケティングにおける運営組織から課題までコンテンツマーケティングの全般に渡るチャレンジについて数字をまとめています。
コンバージョンレート
Unbounce Conversion Benchmark Reportに、業界別のサイトビジターが見込客になるまでのコンバージョンレートの最大値と中央値が掲載されています。64,000 のリードジェネレーションのサイトにおいて74,500,000のアクセスを評価したとあります。
業界別コンバージョン率ベンチマーク
インダストリー | 最大値 | 中央値 |
---|---|---|
旅行 | 25.1% | 5.0% |
不動産 | 11.2% | 2.8% |
ビジネスコンサルティング | 27.4% | 5.0% |
ビジネス・サービス | 15.7% | 3.4% |
消費者金融 | 24.3% | 5.5% |
ヘルス | 12.3% | 2.8% |
教育 | 11.5% | 2.6% |
法律 | 15.4% | 3.2% |
転職・スキル開発 | 25.0% | 6.0% |
メール開封率
MailCamp社がメール開封率のインダストリー別の平均、企業のサイズ別の平均を整理した数字を公表しています。100以上のメイルキャンプを利用している企業を評価対象としています。
企業のサイズ | 開封率 | クリック率 | オプトアウト率 |
---|---|---|---|
1 to 10 | 21.5% | 2.8% | 0.3% |
11 to 25 | 20.6% | 2.4% | 0.2% |
26 to 50 | 21.4% | 2.7% | 0.2% |
50+ | 22.8% | 2.8% | 0.2% |
効果測定のまとめ
KPIや効果分析において、多くの数字が手に入るデジタルプラットフォーム側の数字に集中していまい、オペレーション側の制作に関わるKPIはざっくり制作費や投資対効果ということになりがちです。パフォーマンスとオペレーションの両方を管理していくことが重要です。
Curata社のサイトに、20名程度のコンテンツマーケターがなにを重要視しているのかインタビューしたページがあります。それぞれの立場によって重視する項目は違いますが、共有点としてはKPIのトレンドを重視していることです。
あるインタビューでのコメントが印象的でした。「あなたが最初に行ったコンテンツマーケティングの施策は大体の場合最低のパフォーマンスで、現在の最高効率も将来的により顧客のデマンドを理解し、ストーリーテリングに習熟することで向上する、だからトレンドを重視する」と答えています。将来の成果に向けて気づきを早期に確認するためにトレンドを理解し、その中で施策を検討していくことが成功への鍵でしょうか。