英語のスピーキング、ライティングで最低限のサバイバル・レベルに到達した後に重要なスキルはWrite and Speak English Conciselyという技術です。
ある程度会話ができるからと言って、背景から修辞的な説明までをダラダラ言うことは、結果的に意図が伝わらず、スピーキングやライティングの能力が効果的なコミュニケーションの邪魔をすると言う結果になります。
Write and Speak English Conciselyというスキルは、本当はかなりエントリーレベルで学習するべきことと言われていますが、教える立場の人がUnder Rateしているため大学レベルでやっと教えられる内容と他の国でもなっているといわれています。
端的に話すことの重要性を示した言葉を有名な数学者で哲学家のパスカルが残しています。
“Sorry this letter is so long, I did not have time to make it shorter.”
Blaise Pascal
加えて、世界のコミュニケーションの方法はこの数年で大きく変化しています。ペンと紙で書かれたレターや資料で行われたコミュニケーションは、比較的近しいeメールに代わり、その後多くのコミュニケーションがLINEのようなメッセージやFacebookのようなソーシャルメディアが主体となりました。ビジネスの世界でもSlackが使われ、90%以上のコミュニケーションは、より短く、端的なコミュニケーションとなっています。
Success誌がアメリカでビジネス上のコミュニケーションの手法別に利用頻度を調査しています。A lot, Little, Not at allの3段階で区分した結果、e-mailが37%, 33%, 30%と答えている中、電話はNot at Allが60%を占めています。また、In-Personのミーティングにおいても会議時間を30分に限定するなど短くする工夫を各企業がとっています。
つまり、短いセンテンスでポイントを理解してもらうコミュニケーションが必須になっています。
Conciseに伝えられない心理的背景
英語などSecond Languageで会話する以上、出来るだけ短く・簡単に伝えられることに越したことはないのですが、一般的に以下の3つがConciseに伝えることのブロッカーになると言われています。
- 過剰説明しがちな傾向による冗長
- 準備不足による冗長
- ポイントを把握していないための冗長
過剰説明
口頭での会話で多く発生する過剰説明、多くの人はポイントを指し示す内容を言うのではなく、その背景やコンテクストをリッチにするための情報を増やしていきます。トピックのポイントとなる部分だけを伝えて、残りの部分を削除することでより簡単に伝えられるとともに、相手にトピックに対して質問を促すことでコミュニケーションが効果的になります。
ネイティブは一般的に1分間に150程度のワードで話します、一方人間が1分間に理解・処理できるのは750ワードとはるかに多いです。この結果、トピック外のことを話すと600ワード分の処理時間で受けては余分なことや関係ないことを考え出してしまいます。
過剰な説明は、Second Languageを話す話者だけでなく、受け手にとっても集中を乱す手法になってしまいます。
準備不足
突然Concise, Clear, Briefに話せ、書けと突然言われても、受動態を避けるなど伝わりやすい表現、言わなくても理解できる余分な言葉がなんなのか理解していなければ、Conciseにコミュニケーションすることはできません。
同時に、そもそもなにを言いたいのかはっきりしない中で、プレゼン資料に言わされるようにスクリプト通りに話をしていくなども準備不足でConciseにならない典型です。受けてがある程度情報を持っているのであれば、自社商品の説明をするスライドであっても、基礎的な説明をするよりも自社のサービスや製品の違い、優位性だけを口頭で伝えたり、大きく書き加えた方が受けてに理解しやすいです。
ポイントを把握していない
自分でなにを言いたのかわかっていない状態というのは自分が思っているよりもよく発生いています。同僚から商品について質問を受けて、なんとなくそれは・・・と知っている範囲で説明しだしてしまう、結果的に回答はないけどだらだらと説明をする結果、途中で同僚が「もういいよ、それでどうしたらいいの?」と怒り出す。
善意で説明しようとしているので非常に厄介なこのポイントのない説明、わからないのであればわからない。それでも聞きたいのか?他の人を紹介できるけどどうする?と最初に言っておけば問題や課題の周囲だけを説明するような会話でも十分成立しますし相手も理解可能です。
まず、会話・コミュニケーションの目的を最初に把握することがConciseなメッセージのために重要です。
基本的な学習方法
けっして効率的ではないものの、TOEFLの学習などに合わせて実施できるため、効果的な方法としては、同じテーマのエッセイを短くしていくトレーニングをすることです。
TOEFLの問題などで提示されるエッセイの問題、例えば「Nowadays, food has become easier to prepare. Has this change improved the way people live? Use specific reasons and examples to support your answer.」という問題に5000 wordsのエッセイを書きます。
終了したらレビューをしながら、その内容を文章の意図を維持しつつ500 wordsへと減らします。できたら、さらにその内容を150 wordsへと減らすというトレーニングです。そもそも、長い文章や表現の中から余分な修辞を減らしていくことは重要なスキルです。その上で、短くすることで余分なセンテンス、回りくどい部分を減らしていきます。
- 5000 wordsのエッセイを書く
- 同じコンテキストが伝わる内容を500 wordsになるように編集する
- もっとも重要なことを150 wordsになるように編集する
このトレーニングの重要なところは、論理的な英語を書く能力と端的なセンテンスを書くことの両方に習熟できることです。Amazonなどの企業がPowerpointを禁止して6ページのWordの文章で論理的に説明することを求めていることは、大きな流れとして広がっています。
M&Aや契約などそれなりの長さの文章を書く能力がいらなくなるわけではありません。5000 wordsを用意しつつ、それを端的に伝えられる能力を作ることが必要なのです。
英語で俳句(HAIKU)を書く
日本語でも俳句を詠むなど学校の授業でしかしたことないと思いますが、575という限定がある形式で詩を書くことは、シンプルな単語で意味を伝えるトレーニングとしては最適な方法として、英語圏のコピーライターのトレーニングでも活用されています。
俳句と違いHAIKUは5ワード、7ワード、5ワードと文字数ではなくワード数という制限になります。例えば恋のはじまりを詠んだHAIKUは、
I am over you.
Then my eyes meet yours once more,
and I fall in love…
コンマやカンマをカウントするしない、季語を入れる入れないなどルールがあるようですが、あまり細かいことを考えるよりも5ワード、7ワード、5ワードで愛、恋、季節などを表現してみると少ない文字数でどう伝えるのか深く考えることができます。
フリーライティング
最初に説明した基本の方法に近いのですが、より短時間でトライできる方法がフリーライティングです。まず2分間、決して止まらずに何か書きます。フリーライティングでは、2分間止まらず考え込まず書き続けることが重要です。スペルミス、コンマ・アポストロフィーの有無などは考えずにとにかく書き進めます。
2分間経過したら、書き終わった内容のワード数をカウントします。WordであればコントロールキーとAを押して文章全体を選択すればウィンドウの下部にワード数が表示されます。その後、書いた文章の内容を半分のワード数で表現するように書き直しをおこないます。もし、フリーライティングで200ワード書けていれば、100ワードで同じ内容を表現するように書き直します。
全く別の文章として書き直してもいいですし、フリーライティングで書いた文章を編集するでも構いません。ルールは同じ文意を半分のワード数で表現するです。だいたい、10分程度の時間があればトライできる方法ですので毎日のちょっとした時間でできます。
100ワードで文化紹介
日本人である以上、海外の人と会話をしているとどこかで日本の文化について聞かれたり、紹介をしなければいけないということが発生します。そして、意外と他の国の文化を別の言語で表現するのは難しくて、だらだら回りくどい説明になりがちです。
Concise, Clear, Briefに日本文化を表現することを準備しておくと、実際のコミュニケーションでも役に立ちますし、シンプルな文章を書く・話す練習にもなります。そこで、茶事、能、江戸前寿司、着物、お寺、神社、正月、お盆など日本の文化に関わることを100ワードで説明する文章を作成します。
日本の文化でなくても、自分の会社の商品、社名の由来などビジネスに間することでも構いません。100ワードに限定して説明することで、1−2分間で説明することができるようになります。
Write and Speak English ConciselyのTIPS
TOEFLなどの勉強をしているのであればともかく、実務者が毎日・毎回5000 words書くのは現実的ではないので、日々のビジネスや学習の中で行う方法もたくさんあります。
- メールを書いて、その後短くするための編集を3回行う
- いらない言葉を削る、例えばvery, really, currently, actuallyといった言葉はなくても多くの場合伝わるセンテンスが書ける
- ピリオドの後にスペースを複数回あけたり、文章の最初にタブを入れる必要はないので削除
- とにかく短いセンテンスへと切る。長いセンテンスがスマホに表示されると、それだけで複雑な風に感じるので短いセンテンスを書くことにこだわる。
- 文章が冗長に感じるのであればセンテンスと箇条書きの組み合わせに変更する
- 短い単語を利用する、例えばUtilizeよりもUseを利用することで短くなる
- 文章の場合は話し言葉のように口語で書いてから、文章のように書き直しをする
- Call To Actionを明確にすることで、文章は短くできる。次のステップとしてなにをして欲しいのか、最初か最後に明示する。メールや会話であれば最初に書く、チャットであれば最後に書くなど受取る相手の理解するスピードや順番も意識して位置を修正する
- 余分な感情を文章や会話に込めない、ただただ事実や行動を淡々と説明すると短くなる
- 無駄に複数のフォントを利用するなど修飾を行わないことでシンプルに見える
一番簡単にトレーニングするにはTwitterで英語での発信を続けることです。多くの場合日本語ではシンプルに書いているのに英語で書くと異常に長くなってしまいます。文字制限のある中での表現を工夫することでWrite and Speak English Conciselyを学ぶことができます。