久しぶりにあった友人のアメリカ人のワードローブがポロシャル、スウェット、パーカー、パンツとアマゾンのプライベートブランドのアマゾン・エレメンツで占められていました。ニューヨークのような都会ではなく田舎暮らしながら、ウォルマートやターゲットの服は流石に買いたくないと言ってヘリーハンセンなどを着ていた彼になにが起きたのでしょう。
Amazonファッションのプライベートブランド
アマゾンがAmazon Basicのような日用品においてプライベートブランドを拡大し、日本のアマゾンでもノートやUSBケーブル、乾電池などが販売されています。Amazon Basicのファッション版がAmazon Essentialsです。
ファッションでは、女性向けのLark & Ro、男性向けにButtoned Down、昨年9月に開始したFindなど、アマゾンの名を冠していないプライベート・ブランドも展開しています。とても安いわけではないけど、デザインが優れているわけではなく、多くの評価は“Just Ok“というも。
これらのブランドについてラグジュアリーブランドの調査・コンサルティングを行っているL2は、アフォーダブル・ラグジュアリー、アクセシブル・ラグジュアリーと分類されるトニー・バーチ、マイケル・コース、ラグ&ボーンといったファッションブランドがブランド価値の毀損を恐れて公式にはアマゾンに出品していないため、アフォーダブル・ラグジュアリーをオンラインで買いたいという層を獲得することができるとしています。
これらのブランドよりもはるかに大きな売上を記録しているのが、Amazon Essentialsという定番衣料品を扱うブランドです。
Amazon Essentialsの商品は、ユニクロと同じようにベーシックな衣料品がラインアップされています。男性向けだと、プルオーバーパーカー、スエットパンツ、ポロシャツなどが、それぞれ17ドル、15ドル、15ドルでラインアップされています。
Amazon Essential $17 | Amazon Essential – $15 | Amazon Essential – $15 |
定番品を集めればスポーツとカジュアルを合わせたAthleisure風も簡単にということでコーディネートも紹介されています。もっとも売れているのはポロシャツとのことですが、アマゾンのレビュー欄にはコスパの良さ、シンプル・ベーシックで合わせやすいなど高い評価で並んでいます。
ベーシックな衣料品を必要充分なクオリティで提供するというブランドのバリューは、ユニクロと同じ位置付けとなります。
衣料品ブランドのアマゾン効果
アマゾンが参入することでトラディショナルなりテールやブランドが破綻していく現象は、書籍や音楽などを筆頭に様々なカテゴリーで発生しています。最近もおもちゃのトイザらスが破綻しました。
ファッションも例外ではなく、ギャップ、バナナリパブリックを展開するギャップ社は200店舗の閉鎖と女性向けブランドからの撤退、総合スーパーのTargetは衣料品売上が大きく減るなどの影響の一部はアマゾンのファッション領域での拡大によるものとレポートされています。
ユニクロとアマゾン
SPAと言われるブランドの中でもベーシックにフォーカスをあてたユニクロは、SPAのモデルで大きな成功をおさめてきました。店舗の拡大するだけではなく、自社オンライン・ショップを強く訴求するなどデジタルへの対応も進めてきました。
ユニクロ、ゾゾタウンといったファッション領域のオンライン売上は年々拡大し、2017年には衣料品全体の売上の10%を占めるまでに拡大しています。では、アマゾンのファッション領域への投資拡大はユニクロにどのような影響を与えるのか検討してみます。
新しいモデル開発に積極的なアマゾン
トラディショナルなプレイヤーへの脅威としては、アマゾンは新しい販売モデルのトライアルにも積極的であることがあります。Amazon Wardrobeでは、3点以上の商品を指定すると支払いなしに自宅に送られ、1週間以内にキープしたい商品を指定すると支払いが発生するというサービスです。この時、3点をキープすると10%さらにオフ、5点以上であれば20%オフという仕組みです。
試着のサービス、無制限返品といったトラディショナルな流通の優位性がなくなり、オンラインで服を買うことが標準になればなるほどアマゾンは自社のプライベート・ブランドの販売機会を拡大することができます。
データの深さと広さを持つアマゾン
競合ブランドを含めたファッション・アイテムの販売データをもとに、プライベート・ブランドの企画・制作をすることが可能です。これまでユニクロやH&MといったSPAは、POSデータを活用してトレンドや売上に対応した企画・制作を、スピード感をもって実現することで旧来のファッションブランドを圧倒してきました。
このモデルがアマゾンの場合は、自社ブランドのデータだけではなく、他の競合ブランドを含めたアマゾン全体での売上・嗜好・フィードバックのデータで実施することができます。自分たちの強みが拡大されたスケールで実施されることは大きな脅威になるでしょう。
ユニクロのネット通販戦略に注目したい
冒頭の友人の話に戻るとウォルマートやターゲットで服を買う気はない、着る服は定番品を繰り返し着るだけというタイプ。彼のような人には、シンプルで丈夫な商品が妥当な値段という基準になるので、アマゾンのプライベートブランドはチープなアイテムのようなペラペラなものではなく、どっしりしっかりな作りで満足。プライム会員なので、日々アマゾンで買い物しているついでに買えるので便利、洗濯忘れて急ぎで頼めばすぐに届く、と買い物しているうちに入れ替わったとか。購買行動の習慣として組み込まれることの強さを感じます。
このようなインターネット通販の台頭がユニクロの日本での業績の鈍化につながっている部分もあり、今後のアマゾンとユニクロの戦いは興味深いです。特に、ユニクロは17年8月期のネット通販比率が6%と業界平均より低い状態を30%まで引き上げることを計画していることも興味が尽きない理由です。
ユニクロと流通で提携しているビックカメラ、そのビックカメラは楽天が新会社を作っています。楽天はその他にも西友のネットスーパーを担うことを発表し、電通とデータ活用の子会社を作っています。ファッションのユニクロ、流通のビックカメラや西友、ネット通販の楽天と専門知識が・・・というのは結局船頭多くしてうまくいかない気がしますが、どんな手で巻き返しをするのか今後の動きが楽しみです。