2010年代からストーリーを活用することの効果についての研究が進んだ結果、我々の脳みそは他の要素よりもストーリーに反応するようにできていることがわかってきている。ビジネスを行う上で、強力なツールのストーリーテリングは、残念ながら効果的に使われているとはいえない。効果的なストーリーを構築し、伝える11のTIPSを整理してみました。
ストーリーテリングの重要性
自社のブランドを競合他社の商品と差別化する、自分・自社のビジョンやバリューで従業員に伝えて方向性をつける、投資家に自社の戦略を理解してもらう、商品を売る、サービスを使ってもらう、オールスタッフミーティングで自分の意見を理解してもらう、中途採用の面接と、毎日のビジネスにおいてストーリーテリングは日々使われています。
さらに、商品があふれて、ソーシャルメディアが発達した世の中では、需要や供給ではなくストーリーを交換して、消費して生活していると言えます。では、言いたいことをまとめたメッセージではなく、スペックではなく、他の人に消費してもらうストーリーはどう作り、どう伝えるべきなのでしょうか。次の11のTIPSは効果的なストーリーの作り方とともに、ストーリーのあふれる時代の中でスタンドアウトする方法になります。
TIP1. シンプルな構成
ビジネスでは短いメッセージが効果的で、ストーリーテリングはあまり使われず有効に機能しないと思われているのは、ビジネスで一般的に使われるストーリーが複雑な構造になってしまっていることがひとつの理由です。真実のストーリーよりも強いものはありません、同時に真実だからと言って、聞き手が興味のない開発者の努力といった脇道のような話が多ければ、真実だからといって理解され共感されるわけではありません。
効果的なストーリーはシンプルな構造からスタートすることがすすめられています。あなたのストーリーは、あなたが何処かに行って、なにかが起きて、なぜこのストーリーが語るに足るのかサポートするという3つを行うことです。複数の登場人物の視点からストーリーを語ること、いつ&どこでというセットアップを冒頭に行うことに気をつけるだけで、聞き手にとってわかりやすい構造になります。
TIP2. 繰り返す、継続する、洗練する
ネイティブアメリカのことわざに「言霊が1つのストーリーを語るには1000以上の語り手が必要」というものがあるそうです。このように1つのストーリーが洗練され理解されるには複数の人が多くの回数実施する必要があります。
エバンジェリストと言われる新しいことを啓蒙する人たちのすごいのは、飽きずに信じて何度でも同じストーリーを話すことです。我々のような普通の人は繰り返し作業を苦痛に感じ、変えたり新しいものを探したりとしてしまうそうです。そうではなく、何度も同じ話をすることで精度があがります。会社であれば全社員が同じストーリーを話すことで、ひとりで繰り返すよりも回数を稼げます。
TIP3. ストーリーを語るにたる理由
ビジネス上のストーリーテリングは、そのストーリーの学び(理解し役に立つこと)がクリアであることが必要です。教訓や仏教説話のようなストーリーでさえ、寓話を語った後、なぜ登場人物がそんな行動を取ったのか聞き手に説明されます。ストーリーテリングと言われるとどうしてもストーリーそのものに集中してしまいますが、学びを明確に付加しましょう。
TIP4. ディテールを丸める
ストーリーが好きになると、結果的にあまりに多くの詳細な情報や設定を語りたくなってきていまします。結果的に情報量が多すぎ聞き手にとって難解になってしまいます。また、詳細や設定が長いと、聞き手はストーリーがどこに進むのか想定できなくなってしまいます。ストーリーはコアとなる、どこで、いつ、なにが起きたのかに集中できるように、ストーリーを書き出した上で余分な詳細を削除し、ストーリー内のすべての要素が、最終的な「学び」をサポートする情報なのか確認します。ストーリーに対して質問や疑問が生まれることは自然なことなので、聞き手が自然に質問できる程度に詳細を消す作業をしましょう。
TIP5. 会話を使う
あなたのストーリーに会話の要素をいれましょう。これは3人称でストーリーテリングすることを進めるのではありません。クライアント言った言葉、お客さまの問いかけなどを盛り込むことで、ストーリーのリアリティが高まります。3人称で「お客様はこのトラブルに対して文句を言ったのです」と言うよりも「お客様にこう言われました、こんな問題おこしてどう対応するつもり?」と言ったほうが、リアリティが増します。
ストーリーに会話がある場合、より脳が反応するという調査結果があります。会話を入れ込むことで、聞き手はあなたのストーリーに反応し集中します。
TIP6. 技術を盗む
世の中には話が面白い人と面白くない人というのがいます。これは技術と興味の問題で、面白い話を常にするタイプの人もいれば、仕事の話は面白い人、なんでも冗長な人といます。自分のタイプを理解して、ストーリーテリングのテクニックを学びましょう。おすすめはTEDトークの中でストーリーテリングについてのビデオをまとめたものを見ることです。英語の勉強にもなりますので是非。
TIP7. ストーリーを集める
シンプルなストーリーを多くの人に話をしてもらうこと、その際にストーリーの学びをつけること、会話を入れ込むことを説明しました。また、人によってストーリーテリングのスタイルが違うので、個人で学べるTEDトークを紹介しました。
多くの人が同じストーリーを話し始めたら、それぞれがどのような工夫をしてどんな人に対して話したのか収集しましょう。1つのストーリーがいつのまにか10も20もバージョン増えていきます。バージョンの中で、良い部分は維持し冗長・複雑になる要素、継続性がなくなる別の学びなどが混ざっている場合には、それを避けるようにパワーポイントなどストーリーテリングの支援するドキュメントを用意します。紙芝居があると語り手はストーリーを進めることに集中できます。
TIP8. ストーリーをマルチメディア化する
琵琶法師と語り部が口頭で伝えてきた平家物語の時代と違い、現代はさまざまなメディアでストーリー化することができます。ストーリーの背景である「いつ」「どこで」を固定するために動画を用意する、パワーポイントのエイドを用意する、トランスクリプトを用意する、ソーシャルメディアにアップロードするためにショートバージョンを用意するなど複数の選択肢がありあす。複数のメディアでの展開は、予算の問題で実際には出来ない場合もあると思いますが、それぞれの媒体でどうストーリーを語るのか考え、企画し、書き出すだけでも、複数の視点からストーリーを推敲することができます。
TIP9. 熱量をストーリーにバンドルし調整する
ずっとフラットなトーンで語られるストーリーは退屈です。起承転結などストーリーテリングに構成があるのは、どのようなトーンで話すのか、強調してパッションを伝える部分などを明示するためでもあります。自分らしいストーリーテリングをするためにも、どこでどの程度の熱量を込めるのか検討しましょう。
TIP10. ストーリー作成ツールを使ってみる
ソーシャルメディアの発達によってストーリーテリングを求められる場面が増えたことで、ストーリーテリングを支援するツールも多くなりました。いくつかツールを使ってみることで、ベストプラクティスを当てはめてみましょう。
Bubbler:Flickerの画像に吹き出しを付けてストーリーを作ることを支援するツール
http://www.pimpampum.net/en/content/bubblr
PicLit:ストーリーで使うキーワードを入れると画像をピックアップしてくれるツール
TIP11. ストーリーを読まない、語る
ストーリーテリングとリーディングは違います。ストーリーの最大の目的は聞き手に興味を持ってもらい、共感させて、理解してもらうことです。相手の目を見て、相手の様子に合わせて語りましょう。手元のトランスクリプトを読むだけであれば、商品スペックを読んでいるのとかわりません。ストーリーテリングの強みは、脳みそが反応しやすいという特色を利用して、聞き手の興味に影響を与えることです。
複数の視点から同じことを伝える
同じ話をなんども聞くと、ネガティブな感情を刺激していまします。同時に1回だけでストーリーのコアを理解してもらうことはほぼ不可能です。同じことを複数回言われ伝えられて始めて人は理解に向います。この2つの相反する目的を解決するのがストーリーテリングです。
上記の11のTIPSは同じことを複数の視点から繰り返し繰り返し言っています。ストーリーの構成、語り方であったり、利用するツールであったり視点は変えていますが、意図しているコアの部分は同じです。ストーリーテリングを活用して、確実に伝えたいコアを理解してもらいましょう。