2019年後半からディズニーがDinsey+、AppleがApple+に加えて、USでの現象になりますが2020年にスタートするAT&T Warner MediaのMBO MAX、Comcast/NBCのNBC Peacockなどの参入による動画配信の争いを称して、ストリーミング2.0、ストリーミング3.0やストリーミング・ウォーなどと言われるようになってきました。
ストリーミング2.0によって視聴環境や視聴習慣のなにが変わるのか?コンテンツの制作の変化、視聴習慣の変化、企業の評価基軸の変化が起きていくこととなりそうです。
ストリーミング2.0の戦い
ディズニーのキラーコンテンツであるアベンジャーシリーズを擁するマーベルの社長が今後マーベルの作品を完全に理解するにはディズニー+が必須になると発言する。NBCがNetflexに提供しているThe OfficeをPeacockのために引き上げる。といったように、これまでネットフリックス、プライムビデオなどに作品を提供するだけだった既存エンタメプレイヤーが、自社コンテンツを自社サービスで抱え込むサービスを提供することになります。
- 2019.11.02 Apple TV Plus開始
- 2019.11.12 Disney Plus開始
- 2020.04 NBC Peacock開始予定
- 2020.05 HBO MAX開始開始予定
- 2020 Discovery 開始予定
コンテンツ制作の変化
ストリーミング1.0は、DVDのNetflix、Amazon Prime Video, Huluなど動画配信サービスが、コンテンツの制作に参入してアカデミー賞やゴールデングローブ賞を席巻する中で、Appleが新たにコンテンツ制作に参加しました。
アップルは自社製品を購入した消費者には1年間の無料アクセスを提供してます。これも、アマゾンがプライムの追加サービスとして提供して、自社制作もしているということでアップル風にAmazonのサービスに追いついていく動きになります。
これらのプレイヤーは新たな資金共有先として豊富な資金をコンテンツ制作に供給するとともに、コンテンツの設計、監督、配役などをプラットフォームが蓄積したデータから行うコンテンツ制作を実施して大きな成果をおさめています。
一方でストリーミング2.0は、これまでプラットフォーマーに映画、ドラマ、テレビ番組などのコンテンツを提供してきた制作会社がプラットフォームを提供することで直接消費者とつながることでプラットフォームに握られていたデータへのアクセスを獲得することとなります。
視聴習慣の変化
ちょっと前までは消費者はあるドラマを毎週1週間1話づつ見ることが普通でした。この習慣を大きく変えたのがネットフリックス。自社制作のコンテンツを1シリーズ10-12話一気に提供することで、消費者は毎週1時間見るという習慣ではなく、今見たいものを一気に視聴するという習慣に変わりました。この変化は、旧来のテレビ局からストリーミングへ興味を持たせて移行させることに大きな変化をしています。
一方で、Disney Plusは一定の顧客層を確保できることもあり、より長期的にサブスクリプションを継続してもらうために毎週1話づつストリーミング開始という方法を再開させています。旧来から新しいシステムへの移行ではなく、同じ土俵の中で契約者の取り合いをするストリーミング2.0ではネットフリックス、アマゾンプライムビデオなども継続視聴をしてもらう方向に行く可能性があります。
企業の評価軸の変化
ディズニー、ワーナーブラザーズ、NBCなどのエンターテイメント企業はこれまで株価収益率が重要な指標になっていました。当たり外れの大きなエンターテインメントのビジネスでは、資本をどれだけ効率的に収益につなげたのかが大きな指標となっていました。
ストリーミング2.0においては、コンテンツ企業はプラットフォームを持ち、定額を消費者から徴収しつつ制作を行なっていくため、コンテンツの重要度は変わらないものの収益の軸がサブスクリプションからもたらされる比較的安定的なキャッシュフローが発生します。そのため、評価指標として契約者数、MAU(月次アクティブユーザー数)やチャーンレートが大きな指標とへなっていくと考えられます。
とはいえ、同時にコングロマリット化が進んでいるため、評価は難しくなりそうです。ディズニーの最大の収益源であったディズニーランドやリゾートの運営は、ストリーミングが拡大しても引き続き最大の収益源になりそうです。この部分をレガシーとして低い評価をするか、大きな戦争において複数の収益源を持つことを有利と感じてネットフリックスやHuluが厳しい戦いに直面することを想定して低い評価とするかは判断が分かれそうです。
ディズニーを含むストリーミング2.0でプラットフォームに参入する企業は、NBC, ABCなどテレビ局の運営などトラディショナルなビジネスを含む多角的なビジネスをしており、ネットフリックスほどシンプルにMAUをもとに評価するというわけにはいきませんが、最大の戦場であるストリーミングにおいての優劣が大きな評価視点になると思われます。
日本での動き
リニア放送を行う地上波が強い日本は特殊な市場になっています。引き続きコンテンツの力としてはテレビ局が強いものの、スマホで今見たい番組を見るという習慣が定着しています。
この中で、アマゾンプライム、ネットフリックが伸びをみせていますが、旧来型のSVOD(定額モデル)で、世界的な主流となりつつあるA+SVOD(定額+広告モデル)はAbemaTVのみですし、AbemaTVのリニア無料、見逃し配信課金という仕組みは、見逃し配信に費用を払うほど価値を感じるのかモデルとして疑問符です。
消費者の視聴習慣変化に対応していかなければいけないものの、新聞のように老齢層向けの媒体として縮小しつつ行き続け、同じコンテンツをアグリゲーター経由で若年層が消費するという独特の生態系となる可能性もあります。グローバルと同じになる必要はないので、独自の進化を遂げると面白いですね。
まとめ
コンテンツ制作の変化
・データに基づいたコンテンツ制作の拡大
・周辺コンテンツ、クロスオーバーの拡大
視聴習慣の変化
・地上波・ケーブルから動画プラットフォームへのシフト
・一気に視聴から週に1回への回帰
企業の評価軸の変化
・資本効率からストリーミング加入者数で評価
・トラディショナルビジネスの収益評価、スピンオフ