ウォーレン・バフェットのように意思決定する10・10・10ルール

Decision makingビジネス

意思決定・デシジョンメイキングは日々の生活の中、仕事の過程でレベルにかかわらず日々行うとともに、大きな意思決定に直面することは必ず経験していると思います。どの程度その意思決定が自分や組織にとって影響をもたらしたり、ストレスを感じてテンションを生じさせるものだとしても、意思決定によって次のステージへと移行していきます。では、良い意思決定の方法はあるのでしょうか。

 

 

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意思決定のための方法論を持つこと

ウォーレン・バフェットは、オマハの賢人と呼ばれ、世界で最も成功している投資家のひとりです。インプットにほとんどの時間を使うライフスタイル、長期的な視座での投資、自分のわからないものには投資しないという哲学、注目される投資家向けのレポートなど彼の逸話は枚挙に暇がないです。

そして、ウォーレン・バフェットのような成功者は、意思決定においてもシステマティックな方法論を確立しています。

彼の実践する10・10・10ルールはとてもシンプルなものですが、直面する課題・問題に対してのビッグピクチャーを理解し、バイアスを廃して、短期的なメリットではなく長期的な影響を考慮して意思決定を行うことができる方法です。

2008年のリーマンショックにおいてもプラスの運用成績を残した、16兆円を運用するブリッジウォーターというヘッジ・ファンドを率い「ヘッジファンドの帝王」と呼ばれる投資家のレイモンド・ダリオは、長期的な視点での意思決定の重要性に関して「意思決定による直接的な影響のみに注目し、その副次的な影響を無視する人はゴールに達することはできない」と発言しています。

People who overweight the first-order consequences of their decisions and ignore the effects that the second- and subsequent-order consequences will have on their goals rarely reach their goals.

– Ray Dalio

このように俯瞰的にものごとを理解して意思決定をすることは、最善でなくともより良い意思決定をすることを助けてくれます。

 

悪い意思決定をしてしまう理由

Bad Choice意思決定に関しての研究を多く行っているde Bruin et alによると、意思決定にネガティブな影響を与える要素は、過去の(成功・失敗)体験、経験からくるバイアスなど年齢が大きく影響を与える要素、経済環境・教育や判断を迫られた時のストレス状態などの環境要因が挙げられています。

特に過去の経験からバイアスを持って全体像を把握せずに、可能性を狭めた状態で意思決定すること、つまり見たいものだけを見るという最悪の意思決定となってしまいます。このような偏見・バイアスを廃するために、システマティックなルールを活用して意思決定を行うことが効果的だと言われています。

悪い意思決定の要因

・過去の成功体験・失敗体験からだけ物事を見て、環境変化などを検討しない

・成功した方法を無批判に選択する

・年齢を重ねると若い頃に比べて少ない選択肢の中から意思決定を好む

・経済環境により教育の機会に恵まれず判断のための情報処理ができない

・短時間、強権など強いプレッシャーのもとでの意思決定

・コミットメントをすること、サンクコストからの逃避した非合理的な意思決定

・課題、問題が自分ゴト、自分に関係あると思っていない意思決定

 

 

10・10・10ルール

ウォーレン・バフェットが利用しているこのルールはシンプルな3つの質問に対してそれぞれ10分間検討するというものです。

  • 自分の意思決定について「10分後」にどう感じているのか検討する
  • 自分の意思決定について「10ヶ月後」にどう感じているのか検討する
  • 自分の意思決定について「10年後に」どう感じているのか検討する

とてもシンプルですね。

意思決定をしてすぐにどう思うのか、どう感じるのか、どういう評価が下されるのか、どう周囲の人が反応するのか検討する「10分後」。意思決定をしてその影響が判明する「10ヶ月後」、時間が経過した後どのように自分がその決断を評するのか長期的な影響を検討する「10年後」。たった3つのシンプルな質問ですが、自分がどう感じるのか短期・中期・長期で考えるというフレームワークを提供してくれます。

自分のキャリアの選択にあてはめてみる

たとえば自分のキャリアに対して当てはめてみます。僕はITコンサルタントとしてキャリアをスタートしましたが、その後マーケティングへと領域を変えました。意思決定をして10年以上経っているので、すでに答えがでているものではありますが、10・10・10ルールを利用してみます。

自分の意思決定について「10分後」にどう感じるのか

テクノロジーは有効だが、効率化を求める仕事よりも、クリエイティブな発想を活用するマーケティング領域はよりポジティブな仕事ができる、ユニークな発想をできる人と一緒に仕事ができる

自分の意思決定について「10ヶ月後」にどう感じるのか

マーケティングはデータ分析からの発見、効果的なタッチポイントの分析など、効率化のためのコンサルティングと同じ地味な作業の集積だが、ブランドを知ってもらいたい、楽しんでもらいたいなど前向きなアウトプットをすることが日々楽しい

自分の意思決定について「10年後」にどう感じるのか

コンサルティング、ITとマーケティングという3種類の知識・経験を持った人は希少価値が高く、バリューを発揮できる環境を獲得できる

 


 

10・10・10ルールを利用することで、目の前のバイアスの大きくかかった転職したい!という思いや機会に対して、意思決定もたらす目前の影響、その結果起きると予想されること、長期的に獲得できるバリューを確認することができます。

日常的な意思決定での10・10・10ルール

キャリアのような大きな意思決定でなくても、日々のビジネスの意思決定でも有効です。顧客から値引きを要請されたという場面で、10%、20%などの値引きを目の前の仕事を取りに行くことだけを考えるのではなく長期的な影響まで考えることで、正しい意思決定をするとともに、自分の意思決定の理由を明確に上司・部下に伝えることができます。

自分の意思決定について「10分後」にどう感じるのか

競合他社との価格差を埋めるために10%の値引きをすれば、これまで築いた関係、専門知識、サービスのレベルで受注が可能、この受注で年間予算をヒットする目処が立つ

自分の意思決定について「10ヶ月後」にどう感じるのか

10%の値引きをしたことでトラブルが発生した際にとれる選択肢が限られており、普段であれば問題なく対応できた細かな問題に対応するために、例外処理を求めて社内の承認プロセスに大きな時間を取られる可能性がある

自分の意思決定について「10年後」にどう感じるのか

実施した案件がベストプラクティスとして共有されることで、他社での採用が進みビジネスが拡大。10%の値引きは定常的な値引きを引き起こす事となってしまったが、ビジネスの拡大とベストプラクティスによる他社への提案にかかるリソース低減により充分回収できた

 


 

予算達成が厳しい状況で長期的な影響を値引きして案件獲得に飛びつくのではなくフレームワークを通して検討することで、中期的な影響を考えると想定されるトラブルと対応方法とリソースの準備、関係各所に事前連絡をしておくことを考えることができます。

長期的な影響を考慮して、ディスカウントの代わりにケーススタディとして活用することを顧客に理解してもらう、もしくは定常的なディスカウントにならないようなディスカウントの理由をつけるなどの手をうつことができます。

このように、書き出してみると、実はほぼ毎日の意思決定において当たり前に検討していることを、3つの質問としてフレームワーク化しているだけのものです。ただし、フレームワークは1回冷静になって俯瞰的に問題を理解し、影響を検討するというルーチンワークをサポートしてくれます。

 

意思決定と成長

今日どんな服を着るのか、今夜なにを食べるのか、週末にどこへ行くのか、すべて意思決定です。人間が生きていく以上は意思決定から逃れることはできません。同時に意思決定のクオリティによって、自分の人生や生活のクオリティが変化してきます。

誰かの言うことを盲目的に信じることがあっても良いと思いますが、自分で考えて意思決定をすることが進歩の源泉だと、著名企業のコーチングを行ったジム・ローハンは言っています。

It doesn’t matter which side of the fence you get off on sometimes. What matters most is getting off. You cannot make progress without making decisions.

– Jim Rohn

意思決定したことの集積したものが自分とそのライフスタイルを形作っていきます、意思決定においてはさまざまなデータ分析、数値などが活用されます。

分析やビジュアライゼーションだけでなく、どのようにデータを利用するのかというフレームワークを提供してくれる10・10・10ルールはシンプルですが効果的な方法論だと思います。

また、逃避のための意思決定ではなく、チャレンジをしていくことについては以下のエントリーをご覧ください。

チャレンジする文化:Get Out of Your Comfort
外資系企業で働いた方であれば、コンフォートゾーン(快適な環境)から抜け出ることを上司や同僚から指摘されたり、会社の課題などで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。慣れ親しんだ環境やプロセスから挑戦することは誰もが好むことではありません。...