経済誌フォーチュンは大手企業を対象としたフォーチュン500が有名です。フォーチュンはさまざまなランキングを作っており、今回はFastest Growing 100という、アメリカの証券市場に上場している急成長を続ける会社をランキングしたリストの2017年度版をみてみました。
ランキング トップ10
上場しているという条件はあるものの急成長している会社ということで、あまり馴染みのない会社が多くランキングしています。成長を軸にしているため、2017年は38社が新たにランクインするなど変化の激しいランクインです。
第1位のNatural Health Trend Corporationは、健康食品や化粧品の商品でマルチ・レベル・マーケティングを行っているアムウェイのような会社です。本社はカリフォルニアにありますが、投資をアジア市場に集中することで大きな成長を実現しています。特に香港市場では大きな成功を収めており、そこから中国市場へと拡大を目指しています。中国ではマルチ・レベル・マーケティングは禁止されているので、一般的な消費財に近いモデルで参入しています。商品別の売上では、約半分の売上をノニジュース、プロバイオティクス(善玉菌)、トリオティーン(アミノ酸の一種)の3種類が構成しています。
第2位のPaycom Softwareは、オクラホマに本社を持つ会社で人事系ソフトウェアの中でも給与支払い(ペイロール)に特色を持った機能を提供しています。すべての給与支払い処理をオンラインだけで完結できるサービスを提供し、さらに経費処理、人事関連ドキュメントの管理などオンライン系人事処理サービスとしての地位を確固たるものにして拡大しています。日本だと会計ソフトウェアサービスのFreeeような位置付けでしょうか。
第3位のLending Treeは、オンライン・ローンを提供する会社です。Lending Treeは、貸し手と借り手をマッチングさせることサービスとして提供しており、不動産のローン、自動車ローンなどユーザーは自分の興味のあるサービスについて比較検討できるサービスです。日本でいうと保険の窓口のような会社ですね。
第4位にはABIOMEDという史上初の人工心臓を送り出した会社、第5位にはMiMedxというバイオ医療に関連した医療機器を提供する会社がランキングしています。
ファイナンシャル領域の躍進
フィンテック、ビットコイン、暗号通貨などで盛り上がる金融カテゴリーが100社のうち35社を占める結果となっておりフィンテックの拡大を証明しています。Paycomもオンライン上の金融サービスですし、中国で富裕層向けの金融サービスを提供するNoahグループなど、幅広い金融サービスが成長し、トラディショナルな銀行や証券会社にかわってフィナンシャル・サービスを提供していることがわかります。
中国の企業・中国の市場
アメリカの証券取引所に上場している企業という条件があるため中国企業は決して優位ではないのですが、多くの中国・中国関連企業がランクインしています。第1位のNatural Health Trend Corporationはカリフォルニアの会社ですが香港を拠点にアジア・中国で拡大、第7位にランクインしたNetEaseは中国のPC・モバイルゲームの会社、広州のオンライン・ファッション企業VipsShopは28位、教育熱の高まる中国で拡大する北京ベースのTAL Educationは23位、ソーラー発電パネルメーカーのJinkoSolarなど、中国市場を取り込むことが成長エンジンとして大きな要素となっていることが再確認できます。
急成長する巨大企業の存在
通常大きな成長率を示す企業はそもそものサイズが小さい場合が多いのですが、2017年のリストにはすでに大きな企業ながら継続して高い成長を実現している企業がランクインしています。第6位のFacebook、第9位のAmazonを筆頭に、ニューヨーク証券取引所などを傘下にもつIntercontinental Exchange、ビットコインの採掘、AIや自動運転の拡大によるグラフィックボード需要の拡大を受けてNvidia、C型肝炎の根治薬で著名な製薬会社Gilead ScienceやバイオテックのBiogenなど大型企業がランクインしています。特に、GiliadとFacebookは大きな利益率を記録しています。
企業分析やベンチマークの基軸
Fortune Fastest Growing Company100は、フォーチュンが投資の参考となるべく作ったランキングのため、売上の上昇率、EPS(1株あたり利益)の上昇率、3年間の株式収益が要素となっています。したがって、必ずしも市場のすべてを反映しているわけではないですが、2017年のランキングで31年目と長期的に継続されてきました。
今年のランキングは金融35社、テクノロジー27社、ヘルスケア15社、製造・工業が13社と大きく金融が伸びた一方、これまでランキングの常連だったヘルスケアの会社は多くがランクから消えるもしくは会社自体が買収や破綻で消える結果となっています。
どのようなカテゴリーが伸びているのか、伸びそうなのか、巨大企業で成長を続ける戦略を分析するにあたってどの会社を対象にするかなど、ひとつの判断基準を経年のランキングを見ることで理解できます。さらに上場企業のみなので分析に耐えるだけの情報が公開されています。なにより、日本人には馴染みの中会社が多くランクされているので、ひとつひとう簡単に調べていくだけでも勉強になります。
フォーチュンのランキング
フォーチュン誌では、Fortune500や今回紹介したFastest Growingの他にも多くのランキングを発表しています。
ニュースアプリ、ソーシャルメディアでニュースを見ることが中心となり、自分の閲覧履歴に合わせて情報は最適化されて提供されることが当たり前になってきました。自分が触れない情報や会社、新戦略、新技術やマーケットを知るには、あるひとつの視点から継続してトラッキングされるランキングは情報の入口のひとつとして活用できます。