フィットネステック(Fitness Tech)のアメリカ国外のプレイヤーを紹介しましたが、スタートアップの出口戦略のひとつである買収の状況についてCBinsightの記事を参考にまとめました。
出口戦略としての被買収戦略
フィットネステックの買収は活発で、様々な企業が買収へ動いています。2017年にはいってこれまでに買収されたのは15社にのぼります。2013年以降、資金調達が活発になるのと同様に、買収されるフィットネステック企業も増えてきました。フィットネステックのM&AとIPOは、2013年以降98件、そのうち15件の買収が2017年に発生しているというトレンドにあります。
買収する企業はさまざまなセクターや企業にわかれています。最近では、プレミアムホテルチェーンを運営するハイアットがExhaulというスタートアップを買収し、ホテルだけでなくウェルビーイング(健康関連)への進出を企図しています。一方でインドの中規模フィットネステック企業が、a1000yogaというヨガスタジオを運営するスタートアップを買収、Tribe Fitness Clubというスポーツクラブを買収と、自社サービスの拡充を推進するというヘルステックがトラディショナル・ウェルビーイングビジネスの買収を推進するという戦略も進んでいます。
2017年の状況
2016年のM&Aは30件、そのうち29件はM&Aでフィットネステックの雄フィットビットによるウェアラブル向けトレーニングアプリケーションを作っていたPebble Technologyの買収を含みます。1件はTechnogymという商用・家庭用のフィットネス器具を作っている会社のIPOでした。
2017年の15件のうち、14件はM&A、1件がブラジルのNetshoesのNASDAQへの上場になります。Netshoesはスポーツグッズのeコマースを行っている会社ですが、フィットビットの不調などセクターを不安視する投資家の傾向を受けて、4月のIPOにあたっては、初日18ドルとほぼバリュエーションのボトムという不調に終わっています。
今回のIPOと2015年が3件と最高数 だったことを考えると、フィットネステックの出口戦略は被買収というかたちになる傾向が続きそうです。
買収企業と被買収企業の特徴
CBInsightが、2013年からのM&Aを時系列に整理しています。ここからいくつかの傾向が見えてきます。
買収企業のプロファイル
典型的な買収企業セクターというものはなく、プライベートエクイティファーム、スポーツジム、スポーツ小売、アパレルブランドなどに加えて、ソーシャルネットワークの雄フェースブックがフィトネストラッキングアプリのMovesを買収したり、前述したハイアットによる買収と、様々な企業が自社のサービス拡大のために買収をすすめています。
トラディショナル企業のデジタル企業買収
デジタル領域でのサービスを拡大したいトラディショナルなウェルビーイング企業の買収が多く、Anytime Fitnessという事務を運営している企業が、PumpOneというスマートフォン上でのトレーニングアドバイスの企業を買収しています。ナイキやアディダスを上回る成功をおさめるアンダーアーマーも複数のフィットネステック企業を買収して、自社のアパレルへの付加サービスの構築を目指しています。例えば、Sessionsというフィットナスをレコードして共有するソーシャルメディアの企業、Gritnessというパーソナライズドされたワークアウトを提案する機能を持つ企業を買収しています。
一方でアウトドアファッションのノースフェースは、Lucy Activewearというアスレジャーブランドを買収し、自社の製品ラインアップへの取り込みを開始しています。
アスレジャーとは、これまでの派手なファッションに疲れた人たちの間で流行しだしたファッションスタイルで、アスレチックとレジャーを複合した言葉です。休日にフィットネスクラブやヨガスタジオでエクササイズするときの服装を、普段着の一部に取り入れるスタイルです。 アスレジャーは、2015年からNYなどを中心に流行しましたが、2017年から息切れを見せていて、流行を牽引していたルルレモンのセールスが停滞するなどの状況になってきまいた。今後、トラディショナルブランドによる買収が増える可能性もある領域ですね。
まとめ
フェースブック、ハイアット、ノースフェースウェイトウォッチャーズと、ITからアパレルまで多くの企業が、ライフスタイルをマネージする機能を取り入れることで自社製品・サービスの拡大を目指しています。
一方で、乱立していたトレーニングをアドバイスするソフトウェア企業の優勝劣敗による勝ち組の選定が進みだしています。そしてユーザーベースをスケールした企業は、そのリストを最大活用するため、フィジカルなスポーツクラブ・ヨガスタジオを買収して、自社サービスでのマネタイズや囲い込みを目指しています。
特定のプレイヤーがスタートアップを買収している業界に比べて、買収企業のプロファイルが多様なセクターは、いろいろな戦略に触れることができて面白いですね。
すべてのディールは、CBInsight社の記事にリストされています。