ルーマニアの広告キャンペーンがすごい、事例3件

プレゼンテーション
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ルーマニアは東ヨーロッパにある人口1900万人弱の国です。小さな国のように思えますが、東ヨーロッパではポーランドについで2番目に大きな国です。この国の広告がアメリカ・イギリスの広告手法と違って面白いです。

 

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ルーマニアの国民的なチョコレート

2010年と少し古い事例ですが、ルーマニアの国旗をパッケージのデザインに配した国民的なチョコレート、ROMのプロモーションです。一方で古くからあるブランドということで、若者からの支持を失い、加えて経済危機の中で国外に行く以外に職を得ることさえ難しい中、ルーマニアに関することはすべて間違っているという認識が広がっていました。ルーマニアの代表というチョコレートにとっては、良い状況ではありません。

 

2011 ROM – AMERICAN ROM – case Study

 

そこで、ROMはパッケージをアメリカの国旗に変更するというキャンペーンを開始します。実際にスーパーなどで売る商品のパッケージを変更、テレビ広告もルーマニア語ではなく英語で、NEW ROMを紹介します。屋外広告も、ルーマニアにアメリカを築こう!といったメッセージを掲出。当然、自国の象徴であるチョコレートの変節に消費者は怒り、ROMにルーマニア国旗を取り戻そうとソーシャルネットワーク、メディアや街頭パレードなどが起こります。

 

2週間後、アメリカ国旗のROMにアンハッピーみたいだね、実は全部ジョーク、ルーマニア万歳!というテレビ広告を開始します。商品を広告にするという手法は、その後コカコーラの名前・歌詞キャンペーンなど世界中に広がりますが、ここまで挑戦的なパッケージの使い方をした例は類を見ないかと思います。これをジョークと許せる国民性が素敵ですね。

 

 

 

PAULのパイチャートのパイ

日本でも敷島パンが運営しているフランスのペーカリーブランド「PAUL」が協力しての社会問題をプロモートするプロモーションです。社会問題の啓発キャンペーンでありつつ、PAULの商品をプロモートするという広告で、社会問題を企業が取り扱うと、インパクトのあるクリエーティブだったとしても、とかく問題に貢献していることを訴求する企業広告になってしまう西側と違うキャンペーンになっています。

 

 

取り上げた社会問題は、日本でも課題として取り上げられることも多い、CFOのエントリーでHPの方がチャレンジとしていてる、ジェンダーギャップ(女性の社会進出)の問題、グラスシーリングという、女性が企業内の階段を上る上で存在する障害(見えないガラスの壁)をテーマにしています。

 

ルーマニアはヨーロッパの中で、最も女性の進出が遅れているとのことで、シニアマネージメントの男性比率は男性96.3%、女性3.7%。このような問題を示す様々なパイチャート(円グラフ)を、実際にPAULのパイの上で表現して、上場企業、メディアや公共期間のトップに送りつけます。パイを食べると、乗せていたお皿には、「ジェンダーギャップを埋めるために協力してくれてありがとう」というメッセージが現れます。これがニュースに取り上げられるのに合わせて、店頭でも「パイチャートのパイ」が、キャッシャーの横に展示されます。

 

2016 | Paul – BITTERSWEET PIES Case Study

 

PAULは、フランスのベーカリーということで、パン・デニッシュ・サンドイッチはルーマニア内でも認知されていたそうですが、インショップ以外でのパイやショコラの人気はそれほどだったそうです。このキャンペーンによって、女性問題を取り上げつつ、PAULのターゲットの女性に好意を持ってもらい、さらに商品を紹介するという仕組みが非常によく考えられています。

 

 

おばあちゃんの手料理を若者に

ルーマニアでは75歳以上のお年寄りの40%を超える400万人が一人で暮らしています。一方で、2008年の経済危機とその後の急激な経済成長の中で若者の食生活の西側欧米化が進んでいきます。

 

ボーダフォンが、おばあちゃんたちに協力をして、伝統的な食事を作りスマートフォンで写真を撮って、そのレシピと写真をフェースブックに掲載するという仕組みを提案します。フェースブックの中で、若者たちに「冷たくなる前にランチを食べにおいで!」というメッセージを入れて、伝統的な食事を食べに来る機会を紹介しました。有名なスポーツ選手が食べに来るなどの手法を使って、メディアへの露出を拡大、テレビのパーソナリティもおばあちゃんたちと一緒にランチを作ります。

 

2015 | VODAFONE – SUNDAY GRANNIES – 2MIN

 

そして、おばあちゃんたちは、ボーダフォンのロゴや4Gといったマークをパイやケーキの上に書いてフェースブックに投稿してボーダフォンのネットワークをプロモート。

 

PAULほど自然ではないですが、社会問題を喚起しつつ商品を紹介するという仕組みとしては同じ方向性になります。

 

 

 

まとめ

ルーマニアというと、チャウセスク、ペンシルバニアとドラキュラ程度しか思い出せない国ですよね。東側の陰湿で暗いイメージがありますが、情熱的なラテンの血が多いということもあり、社会的問題をとりあげる人間味のあふれる広告が多いのかもしれません。

 

プレゼンテーションをする際に、ストーリーをパーソナルにする、聞き手に身近なストーリーを入れる、時事問題を入れ込むなど、ストレートになりがちな提案を受け手にとって受け入れやすくする手法があります。考え込まれた広告の手法は、プレゼンテーションにおいても参考になりますね。