アマゾンの次の一手として話題の広告ビジネス

ビジネス

アマゾンが物販、コンテンツ、生鮮食品とオンラインコマースを席巻し、ホールフーズを買収、AmazonGoでスーパーマーケット、FireTVやタブレット、エコーと家庭の中やオンライン以外の家庭の中に入って来ました。その中でもクラウドサービスのAWSが大きな収益の柱になっていることはよく知られています。この中で、広告ビジネスが次のAWSとして収益の柱になる成長を遂げているとマーケティングの世界で話題になっています。

 

 

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世界のオンライン広告事情

オンライン広告の世界はグーグル・フェースブックの2強状態に近年なっており、検索連動広告、ディスプレー広告、YouTubeのビデオ広告を擁するグーグルがリードし、記事風のネイティブ広告を擁するフェースブックが新しいサービスを発信してきました。この2社でオンライン広告市場の5割をコントロールして、さらにそれぞれ年率25%、15%の成長を遂げているという状態です。

 

世界最大の広告市場であるアメリカにおいて、アマゾンの広告シェアは未だ2.5%と言われています。ただし、年率40%以上で成長しつつ広告での利益を拡大しているとのこと。2018年にはニューヨークに3000人収容できる広告チーム専用のオフィスを構えることを発表するなど、急激にビジネスを拡大していることは間違いないと思われます。では、なぜ急激に広告ビジネスが伸びているのか、Adweek、AdAgeなどの記事を参考に考察していみます。

 

マーケティング・ファネルのトップからボトムまで対応

マーケティングは広く商品について知ってもらうテレビなどのマスメディアでのコミュニケーション、より詳しいブランドの内容を知ってもらう雑誌やウェブサイトのコンテンツでのブランドの浸透、サーチエンジンでの購買推進、ソーシャルメディアでのロイヤリティ向上など複数のレイヤーを総合的にプランニングする必要があります。Googleの場合、YouTube、DBM/GDNのようなディスプレー広告、検索広告などファネルに対応したサービスを提供しています。

アマゾンもこのようなサービスをこの数年で構築してきたことが業績の拡大を支えているようです。アマゾンのトップページへの露出やFireTVなどテレビ画面を利用した露出で認知を作り、アマゾンのサイトでのディスプレー広告、商品検索結果に連動した広告となります。

ここで疑問はGoogleがすでにトップからボトムまでの広告サービスを提供しているのであればなぜアマゾンを利用しする会社が増えているのか?答えは「データ」の精度とクオリティのようです。

GoogleやFecebookもさまざまなデータを持っていますが、最終的な購買データを持つアマゾンのデータベースを利用して、商品購買の可能性がある消費者に商品を認知してもらい、より詳しく知ってもらい、買ってもらう、さらに購入者にレビューを書いてもらうことで、インルエンサーとしても機能できるということが大きな違うとなっているとのことです。

 

データによるアドテック効果の実現

DSPというオンライン・ディスプレー広告のプラットフォームが近年拡大してきました。この領域でもアマゾンは独自のDSPを持っています。このDSPを通してアマゾンのサイトだけでなくアマゾン以外のサイトに広告を出すことができます。

デジタル広告の調査会社eMarketerによると、このサービスの顧客満足度がGoogleを含む競合他社に比べて非情に高いとのこと。理由としては、再度データと書かれています。商品情報を検索した人、購買した人などをターゲットとして広告をだすことができること、さらにその購買プロファイルをもとに今後購買可能性が高い消費者に向けて広告を出せるという仕組みは強力な差別化をアマゾンの広告サービスに提供しているようです。

 

データ時代の勝者はアマゾンなのか?

オンラインマーケティングによってマスマーケティングよりもより粒度の高い情報を獲得することができるようになり、コンピューターパワーが拡大することで大量のデータを処理することができるようになりました。そこで、今後はデータの活用だとDMPと言われる巨大なデータベースの導入がこの5年ほど進んでいました。さらにマーケティング・オートメーションと言われるデータを利用して自動化も進むと言われてきました。

実際には大量のデータをどう利用するのか、データの質を担保できるかど多くのチャレンジがあり、思ったほどの効果を上げることができなかった会社の方が多かったと言われています。その中で、高いデータ精度を持ったアマゾンが統合的なデータを武器に広告サービスを提供することで、大きな違いを提供しているということのようです。

日本はアメリカほどアマゾンが独占的ではないので、アメリカほどの拡大ができるのかは疑問ですが、競合の楽天やYahoo!は様々なお店が出店するモール式のため、自社での販売をするアマゾンに比べてデータベースの統合精度が低いと言われています。

 

変わると面白いと思うもの

アマゾン日本も広告サービスの提供を開始しています。ほとんど事例なども公表されていませんが、アマゾンのデータを利用してのマーケティングやターゲティングがどのような変化をオンライン広告に提供するのか興味があります。

個人的に興味があるのは、クリックからの脱却が起きるのかということです。WPPのメディアグループのGroupMは、日本は世界で最もクリックを重視した市場だと発言しています。他の国では、最終的なクリックももちろん重要ですが、クリックだけでなくその過程で広告が見られる回数やクオリティを最適化することに注力しているようです。一方で、厳しい個人情報保護法が施行されている日本では、消費者がオンライン上で広告を見たということを統合的に把握するのが難しい部分もあるらしく、クリック重視となっているそうです。

アマゾンのデータを活用することで、精度の高いデータをもとにオンライン上の行動を把握することができるようになり、よりオンライン広告を見た・接触したという部分の価値の分析やマネタイズが進むとこれまでと違ったオンラインの使い方が広がりそうです。