エア・フランス・KLMがブロックチェーンをメンテナンスに活用

飛行機ビジネス

ブロックチェーンが空を飛びます。航空会社がブロックチェーンなど最新技術の活用を促進しています。世界最大のエア・フランス・KLMがメンテナンス記録簿にブロックチェーン化を実現するとのことです。

 

 

 

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空を飛ぶブロックチェーン

航空機の整備は安全運行上欠かせない作業です。日々の検査、耐久検査、部品の入れ替えなど整備作業はすべて記録されなければならず、飛行機が最終的に廃棄・解体されるまで飛行機とともにあります。エア・フランス・KLMは、この整備記録にブロックチェーンを利用するということです。

 

航空機向けのソフトウェア専門のラムコソフトウェアとマイクロソフトをパートナーに、ブロックチェーンをエア・フランス・KLMのMRO(Repair and Overhaul)に活用するインフラを構築することを発表しました。

ブロックチェーンを活用する利点は、ブロックチェーンの機能であるresilience(復元力)、traceability(追跡性)、integrity(完全性)とdisintermediation(中間排除)が航空検査・整備記録に適していると結論づけたとのことです。

 

航空機は当然いろいろな飛行場に飛んで行くため、メンテナンスはすべて自社で行うのではなく他の航空会社の整備サービスに委託する場合があります。3−5年で行われるオーバーホールは専門的なサードパーティに依頼されることもあるなど、1社で完結する作業ではありません。理論的には現状でも自社の整備システムを他社と接続することは可能なものの、多くのパーティーと接続することは大きなコストがかかるとともに、関係者が多くなればデータの信頼性維持にもコストがかかります。中央集権的に管理されたデータベースではなく、分散管理されたデータながらデータの信頼性を確保できるブロックチェーンは、このようなサプライチェーンに最適とのこと。

 

また、飛行機は中古市場があり、先進国のナショナルフラッグは一定期間の運用後、その他の国の航空会社、貨物用途、部品取りなどで中古機を販売します。この時の値段付けにおいても整備記録は重要な指標となるため、信頼性の担保は重要です。

 

ブロックチェーンは、ビットコインなど暗号通貨での活用が有名ですが、金融関連だけでなく多くの領域に適用されることが期待されています。具体的な活用領域としては、医療情報、小中規模発電の管理などが想定されていますが、航空機への利用は一歩先に進むというカタチになりそうです。参考までに、ブロックチェーンが活用されるであろう19業種について解説したビデオがあります。

 

19 Industries The Blockchain Will Disrupt

とはいえ、すんなり進むかというとデータ化、システム化されていないプロセスが航空業界は非常に多いようで、まずはデジタル化することと、デジタル化を許容する法整備からスタートするようです。

 

 

ブロックチェーンと航空業界

エア・フランス・KLMの取り組みは整備記録に限定されたものですが、マイクロソフトなどはそもそも航空産業やトラベルという領域は、ブロックチェーンがもっとも機能する業態のひとつと考えているようです。搭乗する飛行機、宿泊するホテル、税金、個人情報、クレジットカードなど多くの情報が、ボーダーコントロールなどの国の機関、航空会社、宿泊施設、旅行会社など多くの関係者がバラバラに管理していて、統合されたデータ管理はより効率的な旅を実現する可能性があるとアクセンチュアやマイクロソフトなどが語っています。

現在も、ある都市間のダイレクトフライトであれば、キオスク端末で発券可能なものの、少し乗り継ぎが発生すると、クラークが確認していかないとならないという状態ですが、ブロックチェーンで旅行者自身が情報のオーナーとなり情報を関係各所に共有することで、チケットの発券、ロイヤルティープログラムの適用、セキュリティチェック、目的地到着後の移動手段準備などのプロセスが簡単にシンプルにできるようになるそうです。

 

ブロックチェーン、スマートコントラクトの拡大

あるひとつの目的を達成するまでのバリューチェーンにおいて、プレイヤーの数、システムの数が多い領域は、ブロックチェーン、スマートコントラクトの早期の活用が進みそうです。

広告の複雑なバチューチェーンととてつもなく多いプレイヤーを示したカオスマップ、このようなマップが作られるような複雑なプロセスにおいてブロックチェーン、スマートコントラクトが競争環境を一変させそうですね。

ブロックチェーンの利点が明確に出る条件としては、各社のレポートなどをみると以下の5点がありそうです。

・複数の情報確認やコントロールが発生する

・関わる組織が多い

・組織ごとに分断されたデータをまとめなければ機能しない

・データの信頼性が重要

・データ監査など過去データをレビューするタイミングがある

毎回パスポートを国、航空会社、ホテルなどで見せる必要があり、それぞれでフォームに情報を記載するステップがあり、データの信頼性は当然重要。さらに感染症が発生した場合には、飛行機の座席など後追いで確認(監査)する情報が多いという旅行業界はブロックチェーンと相性が良さそうです。